「ひかるのきみ」完結!大女子会ファイナル!(2)
――こんにちは。典局、またの名を源典侍。大変ご無沙汰しております。
侍「うひゃーーーー!お久しぶりでっす!」
王「あらまあ、珍しいですわねタブレットでのご登場とは」
少「私、お会いするの初めてかも……少納言です、こんにちは」
――そうね、少納言さんは初めましてだわ。皆さんお揃いでよかった。結局一度も女子会に参加できなかったから、最後くらいと思ってね。宇治十帖はあまり入れなくてごめんなさいね。殆どあなた方に振っちゃって。
王「いえいえとんでもない。とっても楽しかったですわ」
右「そうね、真木柱ちゃんとか玉鬘ちゃんとか冷泉院さまとか、懐かしいメンバーばっかりだったし」
少「また二条院に関われたのは本当に幸せでした……(ほろり)」
侍「アタシ、匂宮くんといっぱい話せてチョー楽しかったでっすー♪マジイケメン!ヒカル王子には負けるけど!」
――ほほほ、そう言っていただけると本当に嬉しいわ。お疲れ様。でね、他の皆さんも是非一言ずつご挨拶したいっていうものだから、ご招待してるの。全員揃うかどうかわからないけど、いい?
右「他の皆さん?」
侍「ああっ!!!ドバーーーっと出て来たあ!!!」
――あら、ほぼ全員かしらね。じゃあお一人一言ずつどうぞ♪
「大輔命婦です、覚えていらっしゃるかしら?挨拶もなしに常陸宮の姫君のお世話押しつけちゃって、ホントごめんなさいね。お詫びに愛のハンドパワー送ります♪(両手)」
侍「ふわわわーーー!キタキタキターーー!受け取りましたあ!」
右「相変わらずね……(侍従ちゃんチョロすぎる)」
「こんにちは、元藤壺三人娘の一人、中務でーす!」
「同じく弁でーす!王命婦さん、その節はお世話になりました!」
王「いえいえこちらこそ。塗籠事件でのチームワークは私の中でもピカイチの武勇伝よ。藤壺の絆は永遠ね」
「ええっと、これでよろしいのかしら……映ってますか?靫負の命婦です。なにぶん年寄りですから新しいものはわからなくて。『桐壺』からの長い長い物語、ずっと見ておりましたよ。皆さま大変お疲れ様でございました」
侍「ありがとうございまーす!」
右「凄い、本当に初めからのメンバーがいらしてるのね」
「六条御息所の女房、中将のおもとです。お疲れ様です。ひかるのきみ屈指のホラー巻を担当できまして光栄でした。ありがとうございました」
少「あの語りは本当にゾクっとしましたわ。此方こそありがとうございます」
「葵上付きの女房、左大臣家の中納言です。同じくホラー、および夕霧さまが産まれた喜び、葵上が亡くなられた悲しみ、盛りだくさんでございました。感無量ですわ」
右「『葵』巻から一気に密度が濃くなりましたもんね。お疲れ様です!」
「おっまたっせしましたあああ!弘徽殿の中納言ちゃんでーーーーっす!覚えてるかな?朧月夜の君の側近女房でーーす!とにかくすっごい楽しかった♪です!あ・り・が・とねっ!」
侍「テンション高すぎの声デカすぎイ!!」
右「中納言さん多いから、こんくらい特徴あった方がいいのかも(耳痛い……)」
「せっちゃんこと宣旨です。明石の姫の乳母やってました。もうおしまいだなんて……早すぎですわ(うるうる)もっともっと皆さんとお話したかったです!」
侍「わーせっちゃんだ♪ひゃほー!」
王「シングルマザーからの華麗なる逆転人生、じっくり見せていただいて胸のすく思いだったわ」
少「せっちゃんさん、ありがとうございました!」
「雲居雁の君の乳母子にして側近女房の、小侍従です。あの時は相談に乗っていただいて本当にありがとうございました!お蔭様で、末永くあのご夫婦にお仕えすることができました。幸せでした!」
右「シクシク蹲ってた時はどうしようかと思ったわ。よかったよかった」
侍「キュンキュンエピソードありがとー♪あと近江の君の超高速実況もありがとー♪」
「宰相です。玉鬘の君の女房やってました。鬚黒さまにしてやられたのは今も痛恨……でも内裏で男踏歌を観覧出来たのはラッキーでした!今も忘れられません」
右「私も鬚黒は許してない」
侍「呼び捨てキターーー!」
「木工の君と呼ばれておりました、鬚黒大将邸の女房です。鬚黒さまはまあ色々と……何かすみません。ただ玉鬘さんは最高の女主でしたね。継子に対しても分け隔てなく、本当によく出来たお方でした」
王「当時は大変だったわね、本当にお疲れ様です」
「同じく元・鬚黒大将邸の女房、中将の御許です。私は式部卿宮邸に移りましたが、返す返すあちらのお祖母様が強烈でしたわ……真木柱の姫も最終的にはお幸せになられてよかったです!」
少「あの状況で真木柱の姫がひねくれず真っ直ぐお育ちになられたのは、やはり女房さんたちのお力が大きいと思います。お疲れ様でした!」
「小少将です。落葉の宮さまに仕えておりました。ご降嫁したというのに柏木さまには先立たれ、夕霧さまと再婚なさるまでほんっとうに色々ありましたが、終わりよければすべてよし、ですね。レギュラーメンバーの皆さま、長いことお疲れ様でした」
王「ありがとね!あの時はどうなることかと思ったけど、収まる所に収まって良かった」
「六条院で紫上に仕えておりました中将です。紫上がお亡くなりになられた後の六条院とヒカルさまのこと、語らせていただきました。昨日のことのようですのに、もう宇治十帖も終わったのですね……早いですわ」
少「あの節は本当にお世話になりました。とても話せるような状態ではありませんでしたので……嫌だ、まだ涙が」
右「あの時は全滅だったもんね私たち……」
「玉鬘の君のご息女・大君付きの女房、中将の御許です。大君さまの入内に伴い冷泉院御所におりましたが、今また玉鬘邸に戻りました。その節は色々と愚痴を聞いていただいてありがとうございます!」
右「いえいえ、私は特に何も。玉鬘邸は概ね収まる所に収まって、ハッピーエンドといっていい『竹河』巻だったわね(しみじみ)」
「小野の尼です。語りも少なくて、浮舟さんも完全に心を開くところまでいかなくて、何だか消化不良ですが……一言ご挨拶をと思って来てみました。大変お世話様でございました(ふかぶか)」
少「とんでもない、浮舟さんが回復したのもひとえに尼君の献身的な看病のお蔭ですから。お疲れ様でした」
「小宰相です。すみません、薫さまのいちファンとしてどうしても語っておきたいんですが、いいですか?あの……私思うんですが、薫さまって実は作者さんの理想を形にした人じゃないでしょうか?派手さはないが心惹かれる清潔感のある容姿、立ち居振る舞い。教養は一通り押さえていて、仕事も出来る。仏教への造詣も深い。恋愛は不器用だけど無理じいは決してしない……どうでしょう?」
右「なるほど。言われてみれば。いそうでいないタイプかもね」
王「だからこそ、この人物像じゃ絶対にうまくいかないって悟っちゃったのかしら」
「そうなんです!そうなんですよ!だから、あそこで終わるしかないんです。唐突に見えますが、私としてはああ……って察したんですよね」
侍「さっすが薫くん推し!ファンの鑑ね!いいなあ……薫くんは少なくとも物語の中では死んでないもんね……うえーーーん!!みんなしんじゃったあああ!!」
王「まあまあ侍従ちゃん落ち着いて。私たちもしんでるから。って、何の慰めにもならないか」
―――そうね、生きとし生けるものすべて別れは必然。始まったものは必ず終わる。人の手で作る物語なら尚更。だけど紫式部さんは、自分自身で作った虚構の中に永遠を見たのよね。物語と自分の生きる現実が完全に重なって、過去から未来へと果てしなく続いていく何かを見た。だからこそあのラストになった。ハッピーエンドでもバッドエンドでもないあのラストは、物語世界が現実に届いたってことよ。今これを読んでいるあなたのいる世界と同じく、物語は続いていく。誰が死んでも新たな誰かが生まれて、繋がっていく。永遠に―――
という作者からのメッセージね。
侍「エッ、あの打ち切りエンドみたいなぶったぎりが?!」
右「侍従ちゃんたら……でも、現実ってそんなもんじゃない?ウダウダダラダラグダグダしながら、アッチ行ったりコッチ行ったりしてさ、そんなキレイにスッキリ終わり!とはならないわよ。あら、なんか薫くんそのままだわね」
王「それにしてもこんなに大勢の女房さんたちが関わってたとはねえ。壮観。チラっとだけ出て来た人も入れたら凄い数になるわよ。やっぱり平安を生きた女房さんたちの物語よね、これは」
少「私、今かなり感動していますわ。私たちみんなの物語なんですね。ある日紫式部さんの筆先から生まれた文字の列が周りの人たちを虜にして、平安時代どころか令和まで繋がって、これからもずっと多くの人を魅了していくんですよ……本当に凄いことです」
侍「よーし、じゃあ皆円陣組むよ!手出して!画面組の典局さん、女房さんたちは、それっぽい格好して!いっきまっすよーーーーー?
みなさま、五十四帖の長きに渡り、たいっへんおつかれさまっしたーーーー!!!」
「したっ!!!」
侍「『ひかるのきみ』はこれで終わりますが、なんとなんと!再来年・令和六年の大河ドラマの主役が紫式部に決定!!!まだまだ続く「ヒカル」の世界!!!」
右「『光る君へ』でしょ侍従ちゃんたら」
侍「あーそうだった!!!なんでもいいけど、アタシたちは終わらないっ!!!この先も、美味しい物食べて飲んでー、噂話で盛り上がってー、お出かけしてー」
―――たまには仕事もね。
侍「そーでしたー!!!(テヘ)」
王「本当に終わらないわね(笑)」
侍「えーとえーと、何言おうとしたかわすれた!!!」
少「(小声)永遠ですよ……永遠」
侍「そーだったーーー!!!皆さん、今度こそ行きますよーーーー?!
源 氏 物 語 は、永遠に!!!不 滅 でーーーーーーすっ!!!
平 安 女 房 ズ も 永 遠 に、ファイッ!!!」
ファイッ!!!
ありがとうございました!!!
(大拍手)
<ブログ版あとがき>
はい、ついに「ひかるのきみ」全編終了いたしました!
いったいどのくらいの方が読んでいらしたか判然としませんが、この珍妙な翻案おさ子源氏に最後までお付き合いいただいた物好きな……いや心が広くお優しい読者の皆さま、まことにありがとうございました!!!
何度か言及しております通り、まさかここまで続くとは全く思っていませんでした。軽い気持ちで踏み込んだ沼にズブズブ嵌り、またその沼が果てもなく広く深く、あまりに心地いいがため気がついたらもう引き返せず、ひたすら前に前にと進むしかありませんでした。さすがは日本を代表する大長編小説、その魅力には誰も抗えない……ッ!
で、ですね。
ちょうど「夢浮橋」を書き終えてアップした数日後、なんとなんと!
再来年のNHK大河ドラマは「光る君」、紫式部が主人公だというじゃありませんか!
いやはやちょっと鳥肌ものでしたね。メチャクチャ驚きました。偶然とはいえ巡り合わせに歓喜です♪楽しみですね!
以下、時系列の記録を置いておきます。
一部記憶が曖昧なところもありますが、大体こんな感じでした。
【発端】
2008年(平成20年)、ブログ「かわかみひめblog」の前身「母のひとりごと」にて源氏物語の紹介記事を書き始めた。(現在記事は削除)初めはあくまで「中身を殆ど知らない人・あさきゆめみしも読んでいない人」対象。原文すら碌にチェックしないまま右近ちゃん・侍従ちゃんという女房さん二人の掛け合いにより時代背景や平安の慣習などを説明する、という形式だった。しかし、自分のうろ覚え程度の知識では無理と早々に判明、渋谷栄一氏のサイト「源氏物語の世界」を発見し、大変参考にさせていただいた。この時は「若紫」の冒頭あたりまで書いた。
その後、ブログの形式を少し変えたことで一旦記事を非表示、「ひかるのきみ」も休止。
【再開】ブログ「もの書く日々」にて。
「桐壺~背景」
2010(平成22)年9月26日 ~ 28日
「帚木」
2010(平成22)年9月30日 ~ 2011年(平成23年)3月2日
「空蝉」
2012(平成24)年7月20日 ~ 2013年(平成25年)2月22日
「夕顔」
2015(平成27)年12月14日 ~ 25日
「若紫」
2016(平成28)年1月13日 ~ 23日
「末摘花」
2016(平成28)年8月12日 ~ 2018(平成30)年1月18日
「紅葉賀」
2018(平成30)年9月20日 ~ 2019(平成31)年2月22日
「花宴」
2019(平成31)年3月25日 ~ 4月12日
「桐壺」※フルバージョンです
2019(平成31)年4月22日 ~ 6月12日
「葵」
2019(令和1)年6月30日 ~ 9月19日
「賢木」
2019(令和1)年12月9日 ~ 2020(令和2)年3月19日
「花散里」
2020(令和2)年4月7日
「須磨」
2020(令和2)年4月20日 ~ 5月18日
「明石」
2020(令和2)年5月26日 ~ 6月5日
「澪標」
2020(令和2)年6月13日 ~ 29日
「蓬生」
2020(令和2)年7月5日 ~ 6日
「関屋」
2020(令和2)年7月8日 ~ 9日
「絵合」
2020(令和2)年7月19日 ~ 27日
「松風」
2020(令和2)年7月28日 ~ 8月3日
「薄雲」
2020(令和2)年8月4日 ~ 14日
「朝顔」
2020(令和2)年8月17日 ~ 20日
「乙女」
2020(令和2)年8月27日 ~ 9月8日
「玉鬘」
2020(令和2)年9月15日 ~ 25日
「初音」
2020(令和2)年10月2日 ~ 6日
「胡蝶」
2020(令和2)年10月10日 ~ 16日
「蛍」
2020(令和2)年10月20日 ~ 11月3日
「常夏」
2020(令和2)年11月6日 ~ 10日
「篝火」
2020(令和2)年11月11日
「野分」
2020(令和2)年11月14日 ~ 16日
「行幸」
2020(令和2)年11月17日 ~ 24日
「藤袴」
2020(令和2)年11月27日 ~ 30日
「真木柱」
2020(令和2)年12月5日 ~ 15日
「梅枝」
2020(令和2)年12月16日 ~ 20日
「藤裏葉」
2020(令和2)年12月23日 ~ 2021(令和3)1月5日
「若菜上」
2021(令和3)年1月21日 ~ 3月6日
「若菜下」
2021(令和3)年3月9日 ~ 5月19日
「柏木」
2021(令和3)年5月21日 ~ 29日
「横笛」
2021(令和3)年6月4日 ~ 7日
「鈴虫」
2021(令和3)年6月9日 ~ 15日
「夕霧」
2021(令和3)年6月17日 ~ 7月6日
「御法」
2021(令和3)年7月11日 ~ 14日
「幻」
2021(令和3)年7月16日 ~ 24日
「雲隠」
2021(令和3)年7月26日
「宇治十帖」
「匂兵部卿」
2021(令和3)年8月5日 ~ 19日
「紅梅」
2021(令和3)年8月24日 ~ 29日
「竹河」
2021(令和3)年9月6日 ~ 18日
「橋姫」
2021(令和3)年9月20日 ~ 10月5日
「椎本」
2021(令和3)年10月7日 ~ 25日
「総角」
2021(令和3)年10月26日 ~ 11月29日
「早蕨」
2021(令和3)年12月1日 ~ 6日
「宿木」
2021(令和3)年12月11日 ~ 2022(令和4)年1月12日
「東屋」
2022(令和4)年1月15日 ~ 29日
「浮舟」
2022(令和4)年2月4日 ~ 3月6日
「蜻蛉」
2022(令和4)年3月8日 ~ 24日
「手習」
2022(令和4)年4月3日 ~ 26日
「夢浮橋」
2022(令和4)年5月5日 ~ 7日
「平安女子会ファイナル!」
2022(令和4)年5月11日 ~ 15日
以上。
<今後のおしらせ>
1)これから「手習」「夢浮橋」の入った最終巻「ひかるのきみ 宇治十帖 伍」の本を作ります。あとがきも別に書きます。
2)「桐壺」~「幻」までの12巻、「宇治十帖」の4巻は既に出来ておりますので、近日中にアップいたします。縦書きで、記事アップ時より若干の加筆修正および「あとがき」が各巻についております。有料で申し訳ないですが、よろしければご覧ください。
参考HP「源氏物語の世界」他
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