「観応の擾乱」亀田俊和 (2017)
積ん読で置いてたが、漫画「逃げ上手の若君」を読み、俄然これは読まねば!となって開いた。しかし、案の定登場人物が入り乱れ過ぎてメモもおっつかない。一緒になって鎌倉幕府を打倒したはずの足利尊氏・直義兄弟がいかにして仲たがいし、全国守護を巻き込んでの「擾乱」になったか、という話なのだが、これもしフィクションで作るとしたら複雑すぎて無理……。ここで亀田氏が書かれていることのすべては、あちこちに残された膨大な古文書、書状、日記や覚書のたぐいを精査してまとめあげたものであり(ものすごい作業量!歴史学者凄い)、まちがいなく実際に起こった(という根拠がある)ことではあるのだ。まさに事実は小説より奇なり。密度が濃いい!
その濃さにはのっけから圧倒されるけれど、文章は凄く読みやすい、そして超親切。どこそこで出て来た何をした誰々、と簡略に説明をつけてくださってて、これがまた長すぎず短すぎずで絶妙なのよね。とはいえ全然まったく追い切れてないので、今後も何回も見直す本になりそう。後書きにも何だか感動した、歴史本なのに。お人柄が出てる。
歴史本を読むといつも思うが、どの時代の人もメチャクチャ移動するし、文章書くしやり取りするし残すし、超活動的……まあメッチャ色々やった本人もしくは間近で見てたマメな人が書き残した記録が歴史なわけだから、必然的にそういう印象になるんだろうけど。記録媒体としての紙の役割は相当大きいのかなと思った。高価で偽造の難しい和紙に花押押して、命令なり所領安堵なり諸々の証明としたわけだもんね。
この当時区分けされていた「国」が、今の都道府県とさほど違いがないことにも感心してしまう。日本において歴史は分断されたものではなく、現在まで一続きなんだなと実感できる。
ということで元福井県人としては、長く越前守護をしてた斯波高経に注目してみたんだけど、割とフラフラ尊氏と直義の間を行ったり来たりしてる。その割に大してお咎めも受けず重職に就いてたり。この斯波氏、足利一門でも相当格の高い一族というし、何でこいつらの内紛に振り回されんといかんのだ、俺は俺の都合のいい方につくで!みたいな感じだったのかな。何といっても越前は和紙の一大産地だし別に困らんし!だったとか?(適当)。地元の寺社も南朝につくか幕府につくかで大分割れていたという。この辺の本も読みたいな。
ところで「逃げ上手の若者」は滅びかけた北条氏の末裔・北条時行が幕府に抵抗する話だけど、よくぞここに目をつけたなーと思ったら、メッチャ時行の研究してる人がいた。ファンサイトまである……鈴木由美さんの「中先代の乱」今読んでます。(逃げ上手に解説書いてくれないかな)
いつもの如く、意味不明のひらがな単語が既に怖い。内容も、とにかく読ませる力がすごい。ぐんぐん進む。一応シリーズ物ではあるが、前作を知らなくても全然大丈夫。ネタバレにならないように概要を一言だけ書く:
「その状態が当たり前になると、おかしいかおかしくないかの判断がつかなくなる」
実際よくありそう。何かが急にガラっと変わればオイオイってなるけど、じわじわいつのまにかこうなった、ってパターンだと、特に適応力の高い子供にはわからなくなる。「おかしい」って思っても、周りが普通にしてたら防衛本能で無理にでも合わせてしまうこともあるだろう。一人で「常ならぬもの」に向き合うのは怖いもんね。
この作品はコロナ以前に書かれているけれど、家族以外とのつきあい控える今のご時世で、少しずつ溜まっていく澱のようなドロドロした何か(ここでは砂だけど)を象徴しているようで、予言の書か?!とぞぞっとする。外の世界を見聞きしたり、外から人がやってきたりすることってやっぱり必要なことなんだよね。狭い世界で閉じこもりきりじゃ、そりゃおかしくなる。おかしいものとはある程度闘わないとダメなんだろう。
とりあえず誰も来ないからといって部屋が散らかり放題なのをなんとかしたい。ああ。(←闘えよ)
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