「雲隠」
「……ねえねえ右近ちゃん」
「なあに侍従ちゃん」
「あのさ、ちょっと何なのコレ?日記?おさ子が東京オリンピックにかまけて手抜きしたわけじゃなくて?ヒカル王子どうなったの?出家すんの?」
「そりゃするでしょ他にやることないし。次の巻以降は宇治十帖だから、その間にこの世も去るわね」
「エエエエエー!世を去るって何‼聞いてない!!」
「いやあね侍従ちゃん。時空を超越してるのはここだけの話よ?ちゃんと年取ってるじゃないの物語の方は皆」
「それは分かってるけどさあ……じゃあ、もうヒカル王子とはお別れ?!エエー!!!アレで?!嫌だーーアタシもやめるううう!!!」
「あら、ヒカル院の孫・三の宮改め『匂宮』、柏木くんと三宮ちゃんの若君『薫』の行く末見たくない?」
「王命婦さん!わーん!見たい、見たいけど悲しいいいい!」
「侍従さん、わかります。私も悲しいですけれど、このメンバーでお喋りも続けたいですわ」
「きゃー少納言さんも!何かお久しぶり!」
王「ここって本当に時空を超越してるのねえ。まあぶっちゃけ、私たちって全員しんでるわよね作品の中じゃ(笑)」
右「王命婦さんそれを言っちゃあ」
少「ウフフ、でも何でしょう。本業(?)がないとより気楽に色々お喋りできそうですわね」
右「いや今までも十分気楽で言いたい放題だったんじゃ」
侍「と・に・か・く!円陣組みましょ!さあさあ早く集まって!」
少「ハーイ♪」王「懐かしいわ、最初の頃やったわね」右「(覚えてない……)」
侍「三回行きますからねー、いいですか?まずはヒカル王子のキラキラ☆ストーリー四十一帖、終了お疲れっした!」
全員「したっ!」
侍「次は宇治十帖、十二巻くらいあるけど頑張りましょう!オー!」
全員「オー!」
侍「最後にやっぱりこれ!
てっぺん目指してーっ!
平 安 女 房 ズ、そして オ リ ン ピ ア ン」
全員「ファイ!!!」
右「ちょ、何オリンピアンって。おさ子がねじこんだわね」
王「まあいいじゃない。素晴らしいですもの、選手もスタッフも」
少「コロナが無ければ直接観られたんですよね……やはりこれも行っときましょう!」
全員「疫病退散!!! 開運招福!!!」
……
「ひかるのきみ」もお蔭様で遂にここまで辿り着きました。読んでいただいた皆さま、まことにありがとうございました!大変お疲れさまでございました。
「雲隠」巻の内容は、残っていないのか元々無いのかは不明ですが現存しません。あえて意図的に何も書かずヒカルの出家と死を暗示した、とも言われています。
紫上の死以降、徐々に物語の扉が閉まっていく感じは中々に切ないです。紫上とともに一度死んだようなヒカルが、内心で出家の覚悟を決めて皆の前に姿を現すシーン。老僧を驚かせる程に光り輝いていた。文としてはアッサリ短いですが、ヒカルの生涯最後の決めどころといっても過言ではないでしょう。漫画「あさきゆめみし」でもこの場面は大きく取り上げられていました。
この輝きを目にした後の「雲隠」という字面、どれほど効果的であったことか。もしこの仕掛けが紫上ではない、後世の誰かの手によるものだったとしても、物語というものの仕組みをよく理解し、何より源氏物語という超人気大作をこよなく愛した人には違いないだろうと思います。
一度閉じてまた開く物語の扉、次の宇治十帖は作家・紫式部のまさに真骨頂。女三の宮と柏木との間に産まれた不義の子・薫と、ヒカルに憧れてヒカルになりたい匂宮の二人を主軸に繰り広げられる骨太な人間ドラマです。どうぞお楽しみに。
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