「史料が語るノモンハン敗戦の真実」
「史料が語るノモンハン敗戦の真実」阿羅健一 勉誠出版(2019)
膨大な資料を読み込んで、この複雑怪奇な「事件」を背景から何から証言をまじえつつ淡々と書き連ねていくスタイル。特に読みにくくはないが、一ページの情報量が多すぎて溺れそうになる。最初は名前と部署を把握するだけで精いっぱい。「史料が語る」と付いているだけあって、著者の主張は抑え気味で、明確に区別しているのはよいなと思った。
この事件というか戦争、どっちが勝ったか負けたかはともかく、事実として死者は向こうの方が多く、最も苦難と感じた戦いとも評されているところから、言われていたほど日本の惨敗というわけでもないらしい。
ただ日本の戦力が全体として劣っていたことは確かだし、中央と関東軍での関係性も悪く、意思疎通も指揮系統の正確性もイマイチ…というところも本当。ただ皆何というか、真面目に色々議論してまめにやり取りして、物凄く働いてるんだよねえ。誰かがカリスマ的にまとめて皆逆らえなかったとかそういうことはなくて、むしろ高圧的に物を言ったり通したりするのを避けて、それでグダグダになった節がある。半藤さんの本で完全に悪者にされてた辻参謀も、優秀だし言葉に説得力もあるし影響力は強そうだけど、所詮大将というわけでもなし、組織の中の一員に過ぎない、というのがよくわかった。
何であそこまで悪しざまに言ってたのかますますわからなくなった。というわけで次は「ノモンハン秘史」に突入するわ。
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