若菜下 十五
こんにちは、少納言でございます。
お休み中ずっと寝こけておりました。お蔭さまですっかり復活です!もうしばらく様子を見て、紫上の体調が安定いたしましたら、久しぶりに女子会でもやりたいですね、ええ。
令和の皆さまにおかれましては、コロナ対応まことにお疲れさまでございます。四都府県が緊急事態宣言下、七県がまん延防止等重点措置下にある令和三年のGW、女子会どころか外食もおちおち出来ませんものね……通勤通学、お買い物や用足しもさぞかし神経をお使いのことでしょう。大変な状況が続きますが、どうぞ出来るだけ前向きに、少しでも楽しみを見つけつつ、この国難を乗り切ってくださいませ。
ではご一緒に、
疫病退散!!!
開運招福!!!
女三の宮さまの御不調は未だ続いているとの由、二条院に詰めっきりのヒカルさまもやはり気がかりではいらっしゃるようです。そろそろ六条院にも顔を出さないとな、と仰っておられました。
紫上は、まだまだ本調子とはいえないまでも一時期よりはかなり良くなられました。暑い時期ですので、今日は久しぶりにお髪を洗いました。もちろん寝ながらですが、思いのほかさっぱりされたようで表情も明るうございます。
長患いをしてらしたというのに、乾かすため広げた髪は豊かで一筋の乱れもなく、ゆらゆらと清らかです。青く透けるように白いお顔に映えて、たとえようもなく可憐にございます。ただ、脱皮した虫の殻のようにか弱く、儚い佇まいではいらっしゃいますが。
そもそもこの二条院、長く打ち棄てられたままでしたので荒れてガランとしておりました。ところが紫上が持ち直されるにつれ、光が満ち満ちていくような心地がして、今日は妙に狭く感じられます。まあ、お仕えする人が多いのもあるんですけどね。
昨日今日とぐっと調子が上向かれた紫上に合わせるように、院内も明るく活気づき、手入れの行き届いた庭の遣水や前栽が実に爽やかです。春先に病みつかれて、今はもう夏の終わり……長いこと、季節もわからぬ日々を過ごしてまいりましたものです。
お庭の池は涼し気に、蓮の花が一面に咲いています。青々とした葉の上には露がキラキラと輝いています。
「紫上、見てごらん。自分ひとりだけ涼しそうにしてるじゃないか」
ヒカルさまが仰ると、なんと!紫上が起き上がられて庭をご覧になられました!
いつもなら何という事もないこんな仕草さえ、本当に嬉しいことでした。ヒカルさまは驚かれつつ、
「そうやって庭を見ているだけの貴女の姿が夢のようだよ……もう終わりだ、私も生きてはいられないと幾度思ったことか」
涙を浮かべてそう仰るので紫上も感じ入られたか、歌を詠まれます。
「蓮の露が消え残る僅かな間だけでも生きられましょうか
たまさかにかかった露のような儚い命ですから」
ヒカルさまも返されました。
「お約束しておきましょう、来世で蓮の葉の上に置かれた露のように
いささかも心を隔てないことを」
お二人でこのようなやり取りをされるのも久しぶりのことです。
「ああ、やっぱりどこにも行きたくないな……ずっとこうしていたい」
ヒカルさまは呟かれますが、さすがにそうもいきません。
紫上が蘇生されてからも随分日数が経ちましたし、回復傾向にあることも帝や朱雀院のお耳には入っております。女三の宮さまの具合がよろしくないことを知りつつあまりグズグズしますのは、おかしな邪推を呼びかねず、引いては紫上のご心労を増やすことになります。
「天気も貴女の調子も良い時に、引き籠る道理はないよね。よし、行って来るか」
ようやくヒカルさまは重い腰を上げられ、六条院へと向かわれました。
やれやれ、これで少し息をつけますね。あっ、内緒ですよ!
二条院より、少納言にございました。
参考HP「源氏物語の世界」他
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