おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

常夏 二

2020年11月10日  2022年6月9日 

 


「ねえねえ右近ちゃん」

「なあに侍従ちゃん」

「聞いた?内大臣のところの」

「こんにちはああああー!」

「(声デカっ)な、何ごと?!」

「侍従ちゃん、後輩来たみたい」

「は?!あっ小侍従ちゃんか!雲居雁ちゃんの乳母子の。ヤダわかんなかったわ……えらく垢ぬけたわね」

「うん、大人っぽくなった」

「えっそんなあ、照れますう。きっとアレですね、内大臣家がとっても華やかで大人風味なせいかもです。ホントお二人の言う通りでした、素敵な職場です!」

「よかったわね。雲居雁ちゃんは元気?」

「お元気ですよ!夕霧中将さまともお手紙やり取りされてますし、穏やかに過ごしてらっしゃいます」

「いい加減認めてあげればいいのにね。あたら花の盛りを家に閉じ込めたままなんて気の毒。弘徽殿の女御さまはけっこう里下がりされるの?」

「はい!あまり長い期間ではないですけどちょくちょく。ほんっとうに素晴らしい方ですよねー弘徽殿の女御さま!私もちょっとでも近づきたいっていうかー、せめてお傍にいても恥ずかしく思われないようにっていうかー、気合入りますね。この方と腹違いとはいえ姉妹かと思うと、雲居雁の姫君も私の中で爆裂ランクアップで、仕え甲斐があるってものです!」

「ああなるほど。やっぱりそうなるわよね。そうよ、中宮こそ逃したけど、帝のご寵愛ランキング常にダントツ一位を維持し続けてる方だもの」

「いいねいいね!で、今日はどうしたの?」

「それがですね……」

 はーっと溜息をつく小侍従。

「もしかして、アレ?ほら、最近見つかった内大臣の隠し子ちゃん?確か近江の君とかいう」

「あー今まさにアタシが右近ちゃんに言おうとしてたこと!」

「さすが!当たりです!もう、何ていうか凄いことになってて。語ってっていいですか?」

「(二人揃って)もっちろん!」


 ありがとうございます。

 色々と酷い噂も出回ってるみたいですけど、半分は全くのデマで、あと半分は本当でしかもある意味もっと凄いです。想像を絶する方なんですよ……。

 まずご容貌ですが、確かに内大臣さまそっくりなんです。もう誰が見ても親子ってわかります。髪も艶々で豊かですし、額はちょっと狭めですがそこそこ美人といっていい部類だと思います。パッと見感じも悪くない。ただ口を開くと……全てが台無しに。


すっごい早口っていうのは聞いたけど」

「それとお育ち?言葉遣いがヤバイらしい。ま、アタシも人のこと言えないけどさ!」


 いいえ、侍従さんはTPOバッチリ切り分けていらっしゃいますもん。全然普通だと思います。ウッカリ口が滑っちゃったとか羽目外し過ぎちゃったとか、そういうレベルではないんですよ……本当に。

 内大臣もどうしたものかとほとほと困られて、ちょうど里下がりされてた女御さまにご相談に来られました。

「まったく余計なことをしでかしてしまった、軽々しく引き取るなどと。今更世間の目が厳しいからと送り返すのもかえって火に油を注ぐよね。かといってこのまま放置して、ちゃんとお世話する気あんの?何のために引き取ったのさって笑いものになるのも癪だ。いっそ弘徽殿にやって、笑われキャラとして宮仕えさせるかな。見た目は言う程悪くないんだし。どう思う?」

 疲れた顔で半笑いしながらつらつら仰るんですよ。

「そうだ、そうしよう。至らないところは、古女房などにビシビシ躾けさせればよい。ああ、若手の女房達にいちいち笑われるようなことはさせないようにね。それではあまりに浅薄っぽいからさ」

「お父さま……近江の君がたとえどんなお方であろうと、わたくしの姉妹にございます。どうしてそんな酷いことが出来ましょうか。そもそも兄の中将が良い風に話を盛りすぎたというだけではありませんの?こんな大騒ぎになって居心地もお悪いでしょうし、かえって気後れされることもありましょう」

 どうですか、この神か仏か天使か!ってご発言!

 弘徽殿の女御さまはただ見た目がお美しい、お上品ってだけじゃなく、根っから心がキレイでお優しくて、口を開けばまるで梅の花が咲き初めた朝……!って感じの清々しさなんですよう。父君に対しても決して強く言い負かすようなことはせず、柔らかく微笑みつつ言葉をお選びになるんです。もう、もう尊すぎて鼻血出るかと思いましたあ!


「お、落ち着いて小侍従ちゃん、声デカイ」

「まあ良かったわねホントに。主をここまで推せる職場は良い職場よ」


 す、すみませんつい……それで、内大臣さまもシュンってなって

「そうだね……近江の君は悪くない。そもそも中将の考えが甘かったのだ、調査も不十分だったし。まったくもう」

 今度はご子息に八つ当たりされてました。

 それから女御さまのお部屋を出て、そのまま近江の君のいらっしゃる北の対にぶらぶら歩いて行かれたんですね。ええ、一応お部屋はあるんです……お付きの女房さんも一人います。五節の君っていうんですけど、明るくて気の利く良い子です。まだ若いので調子に乗りすぎちゃうのが玉に疵なんですけど、どういうわけか馬が合ったみたいで、近江の君と。

 そのお部屋っていうのがですね、思いっきり簾をまくりあげちゃってて。この頃すごく暑いですからわかるんですけど、でも平安貴族女子の嗜みとして最低限ってものがあるじゃないですか。廂の間が丸見え状態ってのはちょっといくらなんでも。しかも……

「小賽小賽しょうさーい!!!来い!来い来い来い!!!」

 手揉みしながらコレ。その声がまたとてつもなく大きい。先触れの家来さんの声もかき消されちゃうくらい。内大臣さまも溜息まじりで、妻戸の隙間から奥の襖を覗きこんだら、二人で双六の真っ最中。五節の君もテンション爆上げで、

「お返しよお返し!!!」

 なんて賽子の筒をひねくりまわしながら、

「いーくーよーーー?!オリャ!!!」

 ウワーギャーヤッバーイ今度こそーなんてもう大騒ぎで。

 五節の君ちゃんってそういう子じゃないんですよ本来。ちゃんとすべき時にはちゃんとしてます。なのに、素直でノリのいいところがアダになったか、すっかり染まっちゃって……というかあの破天荒さに心酔しちゃってる感もありまして、もうどうにもこうにも。うるさすぎて、二人が内大臣さまの存在に気がつくまで随分時間がかかりました。

「近江の君(震え声)……ここにこうしてお住まいでいらっしゃるのは、落ち着かないとか、馴染めないとかは、ない?私は多忙につき中々さいさいは来れなくて申し訳な」

「いえいえいえ!全っ然!なーーーーんにも心配ありまっせーん!超チョー楽しく暮らしてまーす!長いことお父様ってどんな方かなーって色々想像してたんですよーやっとお顔見られてヤッターって思って、でもこういうお邸だからいっつもいっつもお会いできるってわけじゃないからー、それがちょい残念っていうかじれったいっていうかーアレですよ、双六でいい目が出ない時みたい感じ―?」


「うわっ小侍従ちゃんてばすごすぎ……本人知らないけどよく伝わるこの雰囲気」

「ヤバイね!これはいくらアタシでも無いわー内大臣さま相手に!」


 これでもまだ再現し切れてません……もっとバーーーってまくしたてる感じで、とにかく速いんです。四倍速、いえ六倍速くらいで考えて下さい。全部はとてもじゃないけど聞き取れません。内大臣さまもタジっタジで、

「そ、そう?私自身は身近で仕える女房はあまりいないから、貴女を傍に置いていつも見張っ……いや拝見していようかと以前は思っていたんだけど、中々そうもいかなくてね。普通の宮仕えなら、大勢の中に自然と紛れて大して目立たなくなるからある意味安心なんだよ。でも誰それの娘、何某の子ってわかっちゃうような身分だと、知らず知らず親兄弟の面目を潰しちゃうこともあったりする。まして、」

いえいえいえ!!!そりゃあんまり仰々しく考えての宮仕えはキッツイですよ!うん!アタシなんて何でもやりますよ何でも。『大御大壺(おおみおおつぼ)』の係でもなんでも!」


「ちょ、大御大壺ってつまり……」

「現代でいうと超豪華簡易トイレ!隠語とはいえいいのかそんな単語出してイイのか、作者さんたら!」


 そうなんですよ。内大臣さまも吹き出されて、

「いや、さすがにそれは……相応しくない役割だろうね。近江の君、たまさかにしか逢えないこんな親にでも孝行する気があるなら、その早口をすこしでもゆっくりにして聞かせてくれないかなあ。さすればこちらの寿命も多少は延びるかも?なんてね」

 冗談めかしてやんわり仰いましたが、近江の君も少しは気にしてたのか、若干トーンダウンしましたね。若干、ですけど。

「この早舌どうも生まれつきみたいなんですよ。亡き母には幼い頃からそれどうにかして!ってしょっちゅうお小言食らってました。何でもアタシが産まれる時の産屋に、チョー早口で有名な妙法寺の別当の大徳?って人が詰めてたらしいです。まったく要らんものあやかっちゃって!っていっつも嘆いてました。お父さまの仰る通り何とかして直したいんですけどねー中々!」

「その、距離近すぎの大徳とやらがケシカランね。そやつの前世で犯した罪の報いだろうなきっと。法華経を悪く言うと口に災いが出るというからね。それはともかく、女御が里下がりされている折にはお伺いして、女房たちの行儀作法でも見習ったら?これといって優れたところのない人でも、大勢の中に立ち交じって同じ立場に立てば、何とか格好がついてくるもの。そういう気持ちでお目通りになっては如何かな?」

「マジですか!超チョー嬉しい、いや嬉しいことでございます、ですわ!ただただ、何としてでも此方の皆様方にお認め戴く事ばかり、寝ても醒めても、長年ずっとこればっか願ってました!お許しさえあればお仕えしますします!何なら水を汲んで頭に載せて運ぶとか、アタシ超チョー得意なんで!!!」

「いやそれは……自分で薪を拾わずとも、普通に参上なさればよいでしょ」

「?」

「水を汲んだり薪を拾ったりというのは坊主の修行なんだよ。例の、あやかったという大徳ならともかく、貴女がそんなことする必要ないから」

「はーい、わっかりましたー!じゃあ、いつ女御さまのもとに参上するといたしましょう?明日ですか明後日ですかそれとも」

「吉日ならいつでもいいんじゃない?いや何も大袈裟にすることはないか。お望みとあらば今日でも構わない、うん」 

 内大臣さま、ここでもう限界だったんでしょう。そそくさと北の対を出て行かれました。その後を四位五位の家来がうやうやしく付き従っていくのを見送って、

「なんとまあ自分の邸の中でもああして家来がイチイチお供するんだねー。お父さまって超エライ人なんだあ。イケメンだし優しいし、こんな立派な人の子供だっていうのに、アタシが生まれ育ったのは超田舎のちっちゃいボロ屋だもんなー」

「そうですね、内大臣さまってあまりにご立派過ぎて、此方が恥ずかしくなるくらいの方ですもんね。同じことなら、身分相応でもっと大事にしてくれる親に尋ね出されたらよかったですわね」

「五節ちゃん、まーたそうやってアタシの言うことをまぜっかえす!もう気安い口きかないでくれる?なんてったってアタシはこの内大臣家を背負って立つ身の上なんだからさっ!」

「ハイハイ」

「ハイはいっかーい!」

 となかんとか盛り上がってていつも楽しそうです。


「そ、そうか……こりゃ大変だわね」

「何か他人とは思えない……けど、いくらなんでもアタシここまで酷くない、と思いたい」


 侍従さん、重ねて言いますがレベルが、いえステージからして別なんです。お育ちからしてもそうですが、言葉遣いも立ち居振る舞いも何もかも、一般的な貴族女性とは全く違います。

 でも、決して性格がねじ曲がってるとかじゃないんです。むしろどこまでも真っ直ぐで裏表なんて全っ然ない、気のいい女子なんですよ……それはちょっと話してみればわかるんですけど、何しろあの大音量のマシンガントークが無理すぎて。


「ああわかるー、別に内容は問題じゃないんだよね。声ひとつで、何てことない話でも食いつき違うもん。早すぎるよりはやっぱりゆっくり抑え気味に、全部をいっぺんに言い切らない方が、そいでそいで?って先を聴きたくなるってものよ」

「たしかに。どんなに奥深い高度な話してても、声が甲高かったり訛ってたりするとそもそも聞く気が半減しちゃうわよね。大事だわ話し方って」


 本当それです。近江の君も、きっと乳母とか大雑把で品も無かったんでしょうね。何しろ動作が大きすぎてバタバタ落ち着きがないから、尚更良いようには聞こえないんですよ。

「ところでさ五節ちゃん。お父さまが女御さまにお逢いなさいって仰ってたよね?今日でもいいよって。後回しになんてしてたら何なのやる気あんの?って思われちゃうからさあ、今夜にでも行ってみちゃう?たとえお父さまがアタシを世界一大事~に思ってくださってても、姉妹の皆さまに冷たくされたらこのお邸にいられないもんね!」

「え?今日?また気が早いことで……ならばまずお手紙を出さないと」

「お手紙?なるほどそっか!ガッテン承知!」

 ということで超特急で書いたらしいんですが……そのお手紙がまた。写しを持ってきましたのでどうぞ。紙はだいたい同じものになってます。一応ほそーく小さく畳んで、撫子の花に結んでました。


「青い薄様ね……紙はまともじゃん」

「侍従ちゃんまずそこなの?(笑)わかるけどハードル低すぎない?どれどれ……一応、草書?誰の書風なんだろう……何かカクンカクンしてるし、斜めってるしやたら間空き過ぎだしで読みにくいわねえ」


 <表>

「『葦垣の間近』き程の場所に居合わせながら、今まで『影踏むばかり』の印さえありませんのは、『忽那の関を据ゑ』られたのでしょうか。つまり来るなということ?『知らねども 武蔵野と言えば』畏れ多いことですが。あなかしこあなかしこ」

 <裏>

「ああ、そうそう。暮れ方にも参上しようと存じますが、『厭ふにはゆる』、嫌がられてたらどうしようって感じ。ヤダヤダヤダ、乱文乱筆は『水無川』にってことで!」

「草若い常陸の浦のいかが﨑

何とかしてお目にかかりたい田子の浦波

 『大川』水の」


「……」

「……」


※人知れぬ思ひやなぞと葦垣の間近けれども逢ふよしのなき(古今集恋一-五〇六 読人知らず)

※立ち寄らば影踏むばかり近けれど誰か勿来の関を据ゑけむ(後撰集恋二-六八二 小八条御息所)

※逢ひ見では面伏せにや思ふらむ勿来の関に生ひよ帚木(源氏釈所引-出典未詳)

※知らねども武蔵野と言へばかこたれぬよしやそこそは紫のゆゑ(古今六帖五-三五〇七)

※あやしくも厭ふにはゆる心かないかにしてかは思ひやむべき(後撰集恋二-六〇八 読人しらず)

※悪しき手をなほ善きさまに水無瀬川底の水屑の数ならずとも(源氏釈所引-出典未詳)

※み吉野の大川野辺の藤浪のなみに思はばわが恋ひめやは(古今集恋四-六九九 読人しらず)


「えと……何て言ったらいいのか。引用多いね……」

「あのさあのさ!アタシ、何か目がおかしくなったのかな!いや頭なのかな!一ミリも意味がわかんないんだけど!!!」


 大丈夫ですお二人とも。意味わかんなくて正解だと思います。余りに凄いんで、今女房さんたちの間で回覧されてるくらいですから。

 ちなみに手紙持ってきたのは北の対の樋洗童(ひすましわらわ:便器などを掃除する下女)だったんですよ。何でそんな役割の子に持たすかっていうのもまたツッコミどころなんですけど、まだ新人さんなのに物慣れた態度の綺麗な子で、正直よっぽどコッチの方が……いえ、なんでもないです。とにかくその子が女御さまエリアの台盤所に寄って、

「こちらを差し上げてください」

 って礼儀正しく渡してきたんで、ああ北の対の子だって顔を知ってた下仕えが受け取ったんですね。それで大輔の君という女房さんが持って行って、女御さまの御前で開いてご覧に入れたと。

 女御さまは何回か表、裏と読み返しておられたんですけど、さすがに途中でギブアップされましたね。苦笑いされつつ、隣でチラチラ覗いてた中納言の君(仙堂御所の中納言さんとは別人ですよ勿論)に、

「草仮名の文字は読みにくいからかしら……歌の意味が上と下の句でつながってないみたい」

 と仰って下げ渡されました。

「これは……随分と今めいた……お手紙にございますね」

「お返事は同じように由ある風に書かないと、この程度なのかと思われてしまいましょう。そのまま合わせてお書きなさい」

 えっ私が?という顔をした中納言の君ですが、そこは手練れの女房です。周りでクスクス笑う女房たちをよそに、サラサラっと素早く書き上げました。

「えーと……風流な引き歌ばかり使ってございますので、難かしゅうございますね……いかにも代筆が丸わかりというのも何ですから、畏れながら女御さまのご筆跡に寄せました。読みます。

 間近においでですのにその甲斐(貝)もないことは恨めしく。

 常陸なる駿河の海の須磨の浦に

 波立ち出でよ筥崎の松(待つ)」

「まあ、困るわ。本当に私が書いたものと思われて、触れ廻られたらどうしよう」

 女御さまは聞くなり涙目になっておられましたが、

「大丈夫です。こんなの、聞く人が聞けばすぐわかりますから!」

 中納言の君はきっぱり断言して、そのまますぐ紙に包んで使いに出しました。北の対ではことのほか大喜びだったようです。


「うわあ……女御さまが嫌がるのわかる。ていうか中納言の君って人天才かな?なかなかあんな風には書けないよね、あの手紙から」

「で、結局いらしたの?近江の君は」

 

 もちろん。

「えーお返事超おッシャレー!さっすが女御さまだね!しかも待ってるってよ!よーし、気合入れちゃうぞー!」

 て感じで、それはそれはおめかししていらっしゃいました。メチャクチャ甘ったるい薫物の香がそこら中に充満して、奥の、雲居雁の姫君のお部屋にいてもすぐいらしたことがわかったくらいです。アレは一回や二回の焚き染めじゃないですね……そうそう、お化粧もバッチリしてました。髪もキレイに梳いて紅もつけて、一応身なりは整えてらっしゃいましたね。ただ少々、いやかなり……派手、でしたけど。

 ご対面の様子は……まあ、お察しください。


右「ああ……」

侍「も、もうお腹いっぱいかも。凄すぎて」

小「ですよね……更に悪い事に、こうして真似したり誰かに伝えたりしてると、知らず知らず口調が移って来ちゃうんですよ。だから皆で喋りたくてしょうがなくても、必死で回数制限してるんですね。言いたいのに言えない!ってキツイんですホント。なのでちょっと離れたこちらで吐き出させていただきました。すみません。私、そろそろ戻らなくちゃ。聞いていただいてありがとうございます!」

 若干早口でまくしたてた小侍従、ぺこりと頭を下げ、そそくさと去っていく。


「キョーレツね……常陸宮の姫君以来の逸材かも。いやそれ以上かも」

「いやしかし弘徽殿の女御さまもそうだけど、雲居雁ちゃん、玉鬘ちゃん全員血が繋がってんのよね。信じられないわ。何ていうか、血筋だけじゃ無理なものもあるのねやっぱり」

「でもさー、近江ちゃんは貴族の邸で暮らすことが場違いなだけであって、普通に街中でいたら愛嬌もあるし物怖じしないし、いい感じの女子じゃないの?」

「うん、連れてきたのが間違い。何でも王子の真似っこすりゃいいってもんじゃない」

「何にしまだまだ嵐の真っただ中ね……どこもかしこも」

参考HP「源氏物語の世界」他

<篝火 につづく

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