十月に観た映画と本
何かの映画評で見て気になっていたので借りた。
【60字梗概】
粉ミルクが汚水で作られ乳児を死なせている事実を知りながら利益優先で販売を続ける多国籍企業を社員が告発し失職、憂き目にあう。
「エリン・ブロコヴィッチ」のような勧善懲悪の社会派映画かなと思ったら肩透かしを食らう。世の中そうはうまくいかなくて、一般市民としての善意と家族の後押しで告発をしたものの、家族に危害が及びそうになり挫折。仕事も失い、七年間も家族と離れて暮らす羽目になる。個人よりはやはり金と権力を持つ側の方が圧倒的に強いので、現実的にはこんなものだろう。スカッとはしないし少々物悲しいが、当事者とその家族が現在はそこそこ幸せそうなのが救い。
遠藤周作原作。これは映画館で観たかった!あの、最初から最後まで極めて日本的な世界、昔から映像化を希望していたというスコセッシがどう料理したのか興味を惹かれた。
【60字梗概】
17世紀、棄教した恩師の真相を知るべく来日した二人の神父。一人は民とともに死に、もう一人は神の真意に殉じ踏み絵を踏む。
弾圧する側の日本を絶対悪とせず、むしろ高い知性と統率力を持ち、情熱で暴走する神父たちよりよほど「まとも」に見えるよう描いた所はさすがスコセッシである。欧米諸国が植民地にしたいところに人を送り込んで人心掌握し、その後攻め込んで占領するという手口はこのころにはもう広く知れ渡っていたんだろうか? 知らぬは世間知らずで純粋な神父たちだけ。島原の乱直後、ご禁制の宗教に縋り、神の救いを信じている貧しい民は唯一の拠り所である彼らを庇い、守るために無残に死んでいく。正直、遠い国からわざわざ来て善良な日本人を「たぶらかし」大勢死に追いやって何してくれてんのこいつら、と思った。現代でも、マルチやカルト宗教・極端な自然派なんかがいろんな理由で苦しみ悩む人を甘言で釣るのと似ている。そのさきはさらなる地獄しかないのに。度を越した無知と純粋は確実に人を殺す。信仰者としては明らかに劣等生であったキチジローが実は一番神に近いところにいた、というのが皮肉でいい。窪塚さんを選んだというのは慧眼。(経歴はご存知なのだろうが)色々とハマりすぎです。
映画館の暗がりでみたらまた違うのかもしれないが、画面がやや明るすぎと感じたのは原作の持つイメージの成せる技か。
「八咫烏シリーズ」最新刊。たまたま次女とともに本屋に行ったら、残り一冊のサイン本が!これは買うしかない、受験生だけどまあいいよね!ということで次女の後に私も読んだ。
前回の「玉依姫」を山内側から描いた話。戦いの描写がよりリアルでハード。親友を失った雪哉が闇堕ちしそうになるところは中々圧巻。結局奈月彦の記憶は戻らないのだが、山内の崩壊はくい止められるのかどうか??
作者の専門が東洋史ということで、出所確かなエピソードがふんだんにちりばめられていて、歴史好きにはたまらない。言霊というか言葉の力が世界を形作り支えているというのもイイ。番外編がいくつか出てるようなのでたぶん買う。
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