2010年10月5日火曜日

オフィスにて(二)

右近兄の武勇伝の前に、ちょっと時を進めてみる。 さて、
平安OLから見た「上・中・下」の品とは!

「おっはよ♪侍従ちゃん」

「おはよう、右近ちゃん。やっと雨上がったねえ」

「ほーんと。長かったよねえ」

「ほんとよねえ」

 しばらく縫い物などする二人。

「ねえ右近ちゃん」

「なあに侍従ちゃん」

「この間、右近ちゃんのお兄さん、ヒカル王子と一緒に宿直(とのい)だったって言ってたよね。どうだったって?」

「あーーーー、そうねー・・・何だか無駄にテンション高くってさ、帰ったらその話ばっかし。いいかげんウザかったよもー」

「ででで、どういう話したの?聞きたい聞きたーい」

「上中下、の話だって」

「は?」

「あたしたちみたいな中くらいの階層にいる女は狙い目よ、って結論に達したらしい」

「な、何それー! 何か失礼じゃない? 大体上・中・下、ってそれ何っ?」

「侍従ちゃんたら……」

 右近ははー、とためいきをついた。

上の品の女、というのはつまり生まれのいい女のことよ
あたしたちが仕えてる女御さまのクラス。先代とか、そのきょうだいの娘とか、とにかく由緒正しきお家柄の中でも最上級の真正セレブ」

「いわゆる宮腹(みやばら)、ってやつね♪」

「わかってんじゃん。どこでどう切るかは難しいけど、そうねー、たとえ外腹の娘でも、小さい頃からそういう格式あるお家で、誰の目にも触れずにしっかりお嬢教育された人なんかは『上』っていってもいいのかな」

「ふーん。で、『下』は?」

こういう大会社(宮仕え)にとうてい採用されっこない、外のお人ってことでしょ。ま、私はよく知らないけど?」

「それでいうとさ『中』って幅広くなーい? 
社長(帝)のきょうだいの嫁入り先の従兄弟の子ども、なんてほとんど他人じゃん? ていえるような家でも、お金と権力さえあれば娘をばーんと入社(入内)させられるよねー。
おんなじ社長の女でも、こういうのも『中』なんだよね、それでいったら」

「なかなか言うね侍従ちゃん。そう、女としてのグレードを決めるのは、まず家柄や血筋であり、見かけや才能や性格は二の次。もちろん男にとっても同じこと」

「え? だって『中』の女がいい、ってことになったんでしょ。あたしたちの時代ってことじゃーん♪ イエーイ」

「ばっか、何おノンキなこといってんの。あたしたちなめられてんのよ、気軽く相手してもらえるってさ。心の底では『上』が一番、理想! だけどリアルはこんなもん人生妥協も必要だYO! なーんて思ってんのよ。侍従ちゃん、騙されちゃダメだからねっ」

「う、右近ちゃん……何かあったの?」

「何もないわよっ」

「あなたたち、またっ!」

 典の局にまた叱られて、二人は渋々仕事に戻るのであった。


<「雨夜の品定め」後半につづく>

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