「サピエンス日本上陸 3万年前の大航海」

久々のブルーバックス。ツイッターで流れていたこのトピックに興味を惹かれて。ただ、テレビ番組は見逃してしまったのよね。残念。読み終えた今すごく観たい気持ち。



「サピエンス日本上陸 3万年前の大航海」海部陽介
 まずは言う、面白かった!それはもう、掛け値なしに。
 こういう「昔の事象を現代で再現する」企画はよく聞くけれど、ここまでガチのものは中々ないと思う。専門家が相当の時間をかけ綿密に計画を練り上げ、国内外への広報・資金集めしながら多くの人の協力を得て実験を繰り返し、見事実現に漕ぎつける。立ち上げから航海実施まで実に六年という歳月をかけたこの壮大なプロジェクトが、みっちり詳細にまとまって一冊の本になり、更にじわじわと伝播していくであろう流れごと体験できた喜びが、全然無関係な私の中にも今満ちている。
 私はツイッターで偶然見かけてこの本に出会ったが、事前知識無しで読んだとしても全く問題ない。文章は端的でわかりやすく読みやすい。過剰にドラマティックな表現もなく、情に流れ過ぎず淡々と事実を積み上げていく中から、抑えようもなく溢れだす熱が心地よい。
 以下、プロジェクト発足までの前準備のその前、脳内思考も相当すごいのでちょっとまとめてみた。


スペインのアルタミラ洞窟や他の遺跡には凄い壁画や道具が残ってたりするのに、なんでアジアにはないの?!古代のアジアンには芸術能力が無いってこと?!(嫉妬)
↓ 
ホモ・サピエンスのアフリカ起源説によれば、30~10万年前にアフリカで出現して世界へ大拡散。現代の人類集団はこの時点で既に「人間らしさ」を備えていた

つまり世界各地のホモ・サピエンス集団はそれぞれ芸術を生む能力はあったが、その発現は地域や歴史の条件に左右された

アジアでも中国の青銅器や日本の縄文土器など後から現れる。タイミングが違うだけで元は同じ、何も嫉妬することはない!

そもそも芸術だけが人間らしさではない、では
「人間らしさとは何か」
という研究ができないものか

どうもインドネシアから日本列島へと至るアジアの広範囲で、人類最古段階での海への進出が成されていたらしい

日本列島各地で発見された一万以上の遺跡の年代はすべて3万8000年前以降に集中している。つまりこれ以前に海を越えてやってきた?

地続きではない日本列島になぜ行こうと思ったのか・どうやって困難な海を越えたのかを知りたい!

旧石器時代の航海を科学の力の及ぶ範囲で徹底的に再現してこの謎を解きたい、最も難易度の高いルートで!:台湾→沖縄・与那国島

2013年「三万年前の航海徹底再現プロジェクト」発足

 始まりは「嫉妬」からのプロジェクトである。この後ルートを確定し、草・竹・丸木三種の舟の実験航海など続くが、その模様はここでダラダラ書くより読んだ方がずっと面白いので端折る。

一番の疑問である
「なんで数々のリスクを冒してまで海を越えて新天地に行こうと思ったのか」
の答えが、ホモ・サピエンス特有の好奇心や探求心であり、
「やらなくてもいいことを懸命にやる挑戦者」
だから、という説にはちょっと感動した。洞窟の古代壁画にしたって現代のスポーツやアートや旅にしたって、生命維持とその継承には特に役に立たないことばかりを人類はやり続けていると。だから三万年前だろうが何だろうが劣っているとはいえない、人類は昔から同じで、何も変わっていないのじゃないかと。
 ただ絵を描きたい、ただ石を彫りたい、何かを作りたい、見知らぬ場所に行ってみたいという、一人一人の情熱とたゆまぬ工夫と実践とがこの世界を作って来て、今も作り続けている。その長大で緊密な点と線の繋がりを思うと気が遠くなる。おまけにきっかけの多くは単なる思いつきからはじまるのだ。人間って本当に面白い。

0 件のコメント:

コメントを投稿