うっかり見逃すところだった。危ない危ない。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」クエンティン・タランティーノ
”Once Upon a Time... in Hollywood” Quentin Tarantino(2019米)
久しぶりのタランティーノ。予告編を劇場で観て、これは是非とも映画館で観たい、観るべきと思っていた。いや本当に観てよかった!もう一回観たい!
今回も梗概は不要。昔からの映画好きであれば文句なく楽しめるし、あまり昔のは知らないわという人でも、ディカプリオとブラピの演技には唸らされると思う。いやすごい俳優だ、二人とも。
ひとつだけ言っておくと、シャロン・テートがチャールズ・マンソン率いるカルト教団メンバーに惨殺された事件だけは軽くググっておいた方がいいかも。かなり胸糞悪いのでサラーっとでいい。私もこの事件の詳細はうろ覚えだったけど、最後にうわあってなった(語彙力無)。この事件が映画界に、アメリカにもたらしたものは何だったのか、タランティーノの思いが痛い程伝わって来る。というか物理的に痛い、ここまでやるんかい!(しかも全て伏線回収の形)という徹底した容赦のない暴力アリです。バイオレンスが苦手な向きには辛いかもしれない。正直私はスっとしたけどね!←
そして何より特筆すべきは、タランティーノをして「この映画の”鼓動を打つ心臓”のような存在」と言わしめたマーゴット・ロビー演じるシャロン。ほんっとうに可愛い。見た目も中身も超絶可愛い。一人で部屋にいる時も、街を歩く時も、パーティーで知り合いを見つけた時も。特に、映画館のシーンが尊すぎる。自分の出ているシーンに観客がどっと笑った時の嬉しそうな顔!優しくて素直で、人の善意を全力で信じている。本物の天使だ。
ちょいネタバレっぽくなるけど、現実世界でこの天使を無残に殺したヒッピーたちが、前半から相当酷く描かれている理由がよくわかる。自然と共に暮らすといいながら、老人をだまくらかして敷地ごと乗っ取り、日がな一日テレビを観て過す。自由に生きるといいながらその実文明社会にどっぷり依存し、狭いエリアで狭い人間関係に強く囚われた輩だ。本当にろくでもない。「教祖」に洗脳され、言いなりになって常軌を逸した残虐を働くこいつらのような集団は、かつて日本にもいた。カルトは怖い。「世間の常識にとらわれない自由な自分」を追い求める人の行きつく先って結局これなんじゃないの?
タランティーノが自分自身を育てたものを一杯に詰め込んで混ぜくって、一気に放出した感のある、贅沢でキラキラしい一作でございました。面白かった!
※ネタバレになるのでこっそり。
どうしようもなく残虐で理不尽な事件に相対した時、人はどう理解していいのかわからなくなる。余程の理由があったのではとか何とか。だけどその殺し方がそういう酌量すべき線を大きく超えちゃった場合は、理由なんて考えるのは無駄だと思うのだ。むしろ聞くな、何をやったかだけ綿密に言わせろ、列挙して可視化しろ、今からお前はこの罪を償わねばならんのだと自覚させろ。あまりにも酷いやり口で人を害した犯罪は、どういう理由があろうと認めない、許さないでいい。一切容赦するな。
タランティーノが映画の中で描いたことは、そういう輩への復讐以上のもの。叩き潰し八つ裂きにし焼き払うべしと。フィクションだから可能なこの振舞いで、何の落ち度もない善良な人々が守られる結果となった。映画はやはり夢の世界だ。
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