「ビル・エヴァンス タイム・リメンバード」

 
「ビル・エヴァンス タイム・リメンバード」
Bill Evans/Time Remembered Bruce Spiegel(2015米)

 アメリカの天才ジャズピアニスト、ビル・エヴァンスの生涯を追ったドキュメンタリー映画。4月末頃から日本国内で公開されていたが、実はついこの間までやってたことを知らず、慌てて吉祥寺まで観に行った。うちではここ一年くらいずっと寝る前のBGMなのだ。ただ昔からのファンなのは夫の方で、私は聴いてただけ。
どういう生涯だったのかは大体知ってはいたが、こうして音楽と共に追っていくと中々にしんどいものがあった。シンプルにして繊細、拘り抜いたタッチと響きとで一音一音ミスなく完璧に彼の音楽を実現させていくのには、一体どれ程凄まじい集中力を必要としただろうか。常に薄氷の上に乗っているような状態に長く耐えられる人間はそういない。あまりに落差が激しすぎる人生は天才故なのか、神から贈られた才能の代償なのか。
薬に溺れた末期のビルを称した
「毎日が生きるか死ぬかのロシアンルーレット」
というセリフ。最後の恋人をして、
「私は救われた気分で幸福だった。だってビルの苦しみが終わったんだもの」
と言わしめたその死。
普通の映画であれば、
いくらなんでも盛り過ぎやろ脚本……
となるような不幸の連続、途轍もない悲惨と対を成すかのように、残された音楽はどれもこれも比類なく美しい。

全編ずーっと音楽が流れていたのだが、エンドロールはまったくの無音。黒い背景にインタビューに応えた家族や友人、ミュージシャン、スタッフの名前が、短く映っては消えていく。会場内、誰も口を開く人はいない。普通の映画なら、エンドロールになるや席を立つ人、隣の人と会話する人等必ずいるが、この時は本当に皆が無言で動かなかった。
 終わった後あれほど場内が静かだった映画は他に知らない。

【おまけ】
 その後久しぶりに新宿に出て、雨の中Disk Union巡り。東南口の昔高島屋があった辺り、もはやDisk Union村と言っても過言ではないそこは、ジャンルに限らずおじ(い)さんおば(あ)さんホイホイ。夫は勿論ビルの亡くなる直前のCD含む三枚を購入。私も「昭和館」(濃ゆい)にてうっかりゴダイゴを見つけてしまい二枚購入。ほぼ全部回って歩き疲れました。
で帰ってまずビルを聴いたのですが、あの映画を観てからのこのCDは刺激が強すぎた。明らかに壊れている……音は美しく研ぎ澄まされているのに、生きながら死んでいる感。つらい。
それに比べてゴダイゴの明るさときたら。アルバムタイトルがDead Endだったんですが、
「全然行き詰まってない」。まあ、でもとても良かったです。ミッキー吉野さんのピアノ最高。音楽は色々。

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