「ダークタワー」
The Dark Tower Nikolaj Arcel(2017米)
スティーブンキング原作「ダークタワー」シリーズは全巻持ってるが、あの超長い話をどうまとめたのか知りたかった。
【60字梗概】
異世界に引き寄せられた少年は拳銃使いの戦士と共にダークタワーを壊そうとする黒衣の男と戦い勝利、その世界で生きていくことを決意。
スティーブンキングの小説はどれも極めて映像的な表現が多いのが特徴で、ドラマ化・映像化がしやすいと言われている。確かに、「シャイニング」にしても「キャリー」にしてもこの間の「IT」にしても、イメージが大きく崩されるということは殆どないように思う(シャイニングは作者には不評だが、ビジュアル的にはまんまだと思う)。この映画も同様。相当端折ってはいるけれども、異世界の風景やダークタワーの威容、ガンスリンガー・ローランドの表情や動き、悪役たちの不気味さ、どれも原作の世界観をしっかり踏襲していて楽しめた。
この映画の一番の見所は最後の戦闘シーンだが、実は前半の、「異世界の夢を観続けて現実と折り合いがつかなくなり、更に夢の通りの出来事が起きても誰にも信用されず狂人扱いされる少年」の描写がかなり秀逸。物語でよくある「そんなバカなことあるわけないでしょ(笑)」と一笑に付される、というお約束の軽い流れではなく、完全に精神状態に問題を来した者として扱われるところが非常にリアルで怖い。道を歩いてる人が恐ろしい敵で自分を追い回してると思い込む、ある種の精神疾患において特徴的な症状だ。どんなに荒唐無稽な筋書きでも、当人にとっては「真実」そのもの。映画の中で少年が感じる恐怖とまったく同じものなのだろう。
家から逃げ出した少年の身に起こったことすべて、もしかしたら少年の心の中だけで起きたことなのかもしれない、と考えると、この短い映画が、原作の壮大なテーマに非常に近しいレベルにまで到達しているような気もしてくる。これはあの長い原作を熟読しているキング愛半端ない人間にしかわからない。やるな、ニコライ監督。
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