2017年4月5日水曜日

三月に観た映画

久々にDVD3本一気観。
ちょっと練習&リハビリの意味で
・選んだ理由と観た後の感想(100字まで)
・梗概(60字)
を書いてみる。

<<<!!ネタバレ・長文注意!!>>>



「葛城事件」(2016) 

ネットで見かけて興味を惹かれた。率直にいって重く、暗く、救いようがないが、一度観始めると引き込まれて止まらなくなる。結構長めの映画なのに最後まで一気に連れて行かれた。

【60字梗概】
長男は自殺、次男は無差別殺人で死刑、妻は精神を病んだ。家族が離散し空っぽになった家で男は自殺を図るが失敗、一人生きていく。


赤の他人を手当たり次第に殺す、ということがなぜできるのか?
その原因と考えられる要素を、実際起きた複数の事件からこれでもかと詰め込んだのがこの映画。なるほどこんな家庭環境ならこうなるわな…と思える。殺人シーンは映画とわかっていても辛すぎるし、許しがたい。家庭に問題があるなら家庭をぶち壊せばいいのに、何で無関係な外に向かうんだろう?

諸悪の根源と思われる父親の清はすべてが俺様基準、無神経かつ品のないイヤな奴だ。たまにいる困った親父を複数あつめて凝縮した感じ。親から受け継いだ金物屋を自営し、家も建て家族も一応養っていて社会的な落ち度は特にないというところがまたたちが悪い。家の中にこういう手合いがいるとかなり厄介だ。
だが私が一番問題と考えたのは母親。あまりにも弱すぎてイライラする。働いたことのない専業主婦が子供二人抱えて逃げ出すのは難しかったのだろうが、思考停止する前にもう少しなんとかならなかったのかと…
「最初っからあなたのこと大っ嫌い。なのになんでここまで来ちゃったんだろ…」土壇場でやっと気づいて行動できたのに、すぐ見つかるような中途半端な逃げ方しかできない。結局、長男も次男も最悪の形で失ってしまった。
次にダメなのが長男。とにかく父に逆らわず波風立てず、自分の感情を押し殺してきた。大学進学、就職し結婚、家も出て独立と一見順風満帆だが、自分の妻子が元の家族によって嫌な思いをしても文句ひとつ言えない。まだ若く子供も小さいのにリストラという憂き目にあっても、上司に怒るなりすがりつくなりして事態を打開しようともせず諾々と従い、かといって無職になったことを誰にも言えず、新たな働き先を必死に探すこともせず、ただ公園で無為に時間を潰す。一方で家出した母と弟の居所を速攻で父に教える。アパートに押しかけた父の暴言と暴力により二人は家に戻ることになるが、ここで長男は初めて自覚する。この家族はもう自分を守ってくれない。すでに終わっている。新たな活路を拓く最後のターニングポイントは、たった今自分が潰した。逃避する以外に問題解決の手段をもたない長男が、そんな現実に直面して耐えられるわけがない。
その「出来の良い」長男の自死を、次男は「みっともない」と冷笑し、長男に勝てる千載一遇のチャンスが巡ってきたと考える。長年、抑圧と甘やかしを同時に受け続け、歪んで肥大化した子供の自我のまま大人になった彼の「一発逆転」とは、無関係な他人を無差別に殺す最悪な事件を起こし死刑判決を受けるという、形を変えた自殺だった。

と、ここまで書いて思った。そもそも家族をぶち壊せるような気概(?)を持っているのなら、とっくに逃げ出すか対峙して別の道を行っている。自分の家族という枠組からどうしても抜けられない(と思い込んでいる)がために、逃げる=自殺、対峙=枠組の外を攻撃、となるのか。
持論だが、子育てで一番やってはいけないのは「抑圧」だと思っている。その子に全く合わない枠を嵌め、ろくな対話もせず抑えつけて育てれば、枠の中で腐るか暴発して外に被害を与えるかだ。ただ、失敗した人のたどった道は、失敗しなかった人と遠く離れているわけではなく、きわめて近接していて、下手すると延長線上にあったりするので油断がならない。一見「普通」の生活の中に、ふとした言動の中に、破たんへの道が通じていて、気を抜くと誰でもいつのまにかそこに迷い込む可能性はある。育児は中々に気力体力と技術の要る仕事なのだ。

長くなってしまったが、最後に田中麗奈さんふんする星野について。死刑反対の立場で、次男と獄中結婚をするのだが、この女がとにかくキモい。薄っぺらい正義感をふりかざす、自分大好きな自己中女で、個人的には清よりずっと胸糞悪い。最後にこの女の偽善が清によって明るみに出た時は清GJ! と爽快感さえ覚えた。
ともあれ、それぞれの役を演じた俳優さんは皆本当に素晴らしかった。胸糞展開に耐性があって、俳優の演技力を堪能したいという方にはおススメ。私は好きだこの映画。もう一回観たいがテレビじゃやんないだろうなあ。


「帰ってきたヒトラー」(2015)

本も映画も話題になっていたためずっと観たいと思っていた。かなりきっついブラックユーモアがきいていて、よくぞこのような作品をドイツで製作したなと感心しきり。最初は笑わせて、最後はゾッとさせる流れも心憎い。

【60字梗概】
死ぬ直前現代にタイムスリップしたヒトラーは物まね芸人として人気を博し、邪魔者を排除しながらいつか来た道へと驀進する。


俳優がとにかくそっくり! 無名の舞台俳優とのことだが、顔というより身のこなし、話し方などが似ているとかで選ばれたらしい。youtubeや劇中劇、虚実織り交ぜての映像は多彩で飽きない。ネットで人気の「総統シリーズ」動画のギャグがちゃんと盛り込まれていてニヤリ。
戦争を知る世代がほとんどいなくなってしまった現代ではヒトラーといえどもただの記号、忌まわしい記憶を呼び起こすはずの制服もただのコスプレ道具(非難を浴びたアイドルグループもいたけど)、という描写がリアルだと思ったら、実際にあの恰好でドイツの街に出たら意外に皆好意的でスタッフ一同驚いたそうな。いいことなのか、悪いことなのか…映画の中では、戦争経験者である認知症のお婆ちゃんがただ一人、騙されないわ!と声を張り上げる。
「皆、最初は笑っていたのよ…」
という言葉がじわじわ怖い。いやほんとによく作ったドイツ。あっぱれです。


「ハドソン川の奇跡」(2016)

安定のC・イーストウッドの最新作。主演トムハンクスと来たらもう観るしかない。多くの乗客の命を救った英雄として扱われたパイロットが、調査委員会でいちゃもんをつけられる展開はけっこうな胸糞加減だったが、最終的にはスカっとした。

【60字梗概】
離陸直後のトラブルで、ハドソン川着水を成功させた敏腕パイロットが、事故調査の実験結果の誤りを論破、判断の正当性を守る。

トラブル発生後の機内の緊迫感が半端ない。実際の事故は2009年だから、911の記憶もまだ新しかった。街中で墜落するという最悪の事態が、クリアに頭に浮かんだことだろう。ギリギリの極限状態の中で、素早く的確な判断をし、危険な川への着水を成功させたパイロット二人は圧巻のカッコよさ。さらに助け上げられた後も、乗員乗客全員の無事が確認されるまで制服を脱がず、じっと連絡を待つ機長の強いプロ意識にも感動。ちょうどあの雪崩事故の起こった時だったので、意識の違いに暗澹とした。人の命を預かるってこういうことだよねえ。
事故調査委員会の人々の「ほかに適切なやり方があったのでは?」という指摘も、最初は保険会社の陰謀か?!保険金支払いたくないからいちゃもんつけてるのか?!などと腹が立ったが、機長が実験の誤りについて論理的な説明をすると、あっさりと受け入れた(まあ、ぐうの音も出ない内容ではあったが)。とどのつまり事故調査の目的はあらゆる可能性を論じて問題点をクリアにし、再発を防止することであり、乗客全員を救ったからといって手放しで全部正しい、とするわけにはいかなかったのだ。こういう場面で変な情に流されないアメリカの合理性は、素直にすばらしいと思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿