一・二月に読んだ本
「邪悪」上下 パトリシア・コーンウェル
物語としては眠っていたラスボス的な人物がまた登場、これまでのいろいろもそいつのせいで、今後もいろいろやってくること確定というところで終わり、次回に続く。すっきり解決♪では全くない。加えて今回の殺人についての謎もあまり解明されていないし非常にモヤモヤ感残る。んーこの辺のトリック最近なおざりじゃないの? と文句いいつつも、続刊出たら買っちゃうんだろうなあ。それにしてもこのところのスカーペッタがどんどん病んできているのが心配。スカーペッタはじめルーシーにしてもマリーノにしてもベントンにしても、皆もう少し楽に生きたらいいのに、と思ってしまう。まあそうならないからこそ続いているシリーズなんだろうけど。
なかなかハードなタイトルだが、中身はもっとハード。精神障碍者移送サービスをはじめ、自立・更生支援施設を立ち上げた著者が、綺麗ごと抜きの現実を突きつける。
このタイトルに込められているのは、問題を抱えた子供と暮らすことに疲れ果て、万策尽きて追いつめられた家族に寄りそう気持ちと、子供がどんなに酷い状態にあっても最終的に責任をとるのは親しかいない、という冷徹な正論。
私は子供の育て方を語れるほどいい親ではないが、ひとついえるのは、過干渉は最悪だということ。ネグレクトの場合、比較的外から問題が見えやすいことが多いが(食べていない、服装が薄汚れている等)、こちらはともすると単なる教育熱心な親と解釈され、子供が第三者に窮状を訴えても「あなたのことが心配だからうるさく言うのよ。いい親御さんじゃない」などと的外れに諭されて終了となりそう。逃げ場もなく、過剰に(暴力的に)抑圧された人格は歪み、成長を阻害する。これは別に親でなくとも、教師や上司など本人より上の、指導者的立場にある人は皆、子供を抑えつけ過ぎていないか・自分の望みや価値観を知らず知らず押し付け誘導しようとしていないか、常々気を配るべきだと思う。自戒もこめて。
清水潔
話題のX文庫。やはり表紙が目立ったことと中身も面白そうだったので購入。解説の方が「調査報道のバイブル」と評していたが言い得て妙。
冤罪が晴れるまでのいきさつが大半を占めるが、本題はまさに表題の通りでかなり怖い。幼女ばかり何人も誘拐しては殺している真犯人が、ほぼ特定されているにも関わらず、逮捕も拘留も観察もされないまま普通に生活している。つまり野放しということだ。
「邪悪」で取り上げていたデータフィクションに構図は似ている。こちらは誰かの陰謀とか故意ではないにせよ、「誤った科学的データ」を根拠に動いてしまい、重大な冤罪を生んだ。スタート地点がそもそも間違っているため、遡って正していこうにも影響を及ぼす範囲が広すぎてどうにも手の出しようがなくなっている。
これ、現実としてどうするのだろう? ここまで調査して、本に書いて、世間に知らしめて、その先は?具体的にどうしたらいいのかわからないのがもどかしい。
少なくとも、ただ穏便にとか波風立てずにとか、そういう上っ面だけを取り繕うのではなく、おかしいことはおかしいと毅然といえる人間になりたいものだ。
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