2016年3月8日火曜日

2月に読んだ本

※いつものことながら、今回は特にネタバレ注意!


「殺人鬼ゾディアック 犯罪史上最悪の猟奇事件、その隠された真実 ゲーリー・L・スチュワート、スーザン・ムスタファ 高月園子訳

もしも自分の親が稀代の凶悪犯だったら?
とうてい想像がつかない。たとえその親の顔を一切見たことがなく、育てられた覚えもなくても、同じDNA配列を持つという紛れも無い事実を、どう考えて生きていけばいいのだろうか。

ゾディアック=ヴァンの最初の結婚はまだ14歳のジュディ、何度引き離されても逃げ出し遠い地で一緒に暮らしていたが、次第に二人の仲は冷え、子供が生まれてからはさらに酷い状態に。ついに子は父によって捨てられる。年上の「大人の男性」と一緒に恋の逃避行…と言えばロマンチックだが、そもそも27歳の男性がたった14歳の少女に手を出すことが異常だし、その執着っぷりも尋常ではない。本当に彼女のことを愛し大事に思っているならこんな振る舞いは絶対にしない。「アイスクリーム・ロマンス」とはよくいったものだ。始めは甘くて美味しそうだが、時間が経てば醜く溶けて無くなってしまう。
ヴァンが何故人を殺すようになったのかは、あまりよくわかっていない。厳格な牧師の父と浮気症な母の間に生まれ、一方では強く抑圧され、また一方では放埒な性をみせつけられる。アンバランスで歪んだ家庭で、十分な愛を受けること無く育った男は、内に激しい怒りを抱えるようになる。特に、自分の元から逃げ出した最初の妻に似た若い女に。

一方、捨てられた子はある夫婦に引き取られ、我が子として慈しんで育てられた。信心深く善良な義両親の愛をたっぷりと受けたゲーリーは、自身のアイデンティティを探すうち、本当の父が誰かという事実を知り動揺するが、根幹は揺らがない。苦しみを克服し、ついには実の父の墓前に至り、自分の人生に神の存在を実感する。義父への手紙が圧巻。
むやみに甘やかすのではない、ただ厳しく抑えつけるのではない、本当に子供のことを真剣に考え導いてくれるような親に育てられた子供はかくも強い。
ヴァンも、真の愛を与えられればゲーリーのような人間に成長するチャンスはあった、と考えると切ない。子供をきちんと愛して育てるというのは本当に大事なことなのだ。


「沈黙の町で」奥田英朗

いつもの新聞連載小説。奥田作品はいくつか読んだことがあるが、だいたいラストが大団円ではなかった気がする。これもそのひとつ。モヤモヤがそのまんまで終了。
学校の運営って相当難しい。何しろ抱える人数が多い、しかも全員子供。公立であればなおさら、本当に色々な家庭の子がいるわけで、一切何事もなく過ごすことは皆無に近いだろうと思う。悪意がなくとも、ちょっとした行き違いで疑われたり批判に晒されたり、いやホントに先生なんてなるもんじゃない。
保護者の方は、やはり自分の子供を守ることが第一義だから、学校の「全体を守る」という論理とは当然衝突する。ここに出てくる親たちは、ものすごくモンスターというわけでもなく、無関心というわけでもない、何もなければごく普通の、常識ある大人たちだ。だからこそ一気に解決しない、すっきりしない状況が延々と続くことになるのだろう。

ただ本作品内において、いち親としては、学校より保護者たちの言動に疑問がわく。どんな理由があれ自分の子がいじめをしたことに対しては首根っこひっつかまえてでも真相を喋らせねばならないし、相手に謝罪にもいくべきだと思う。いじめられる方にも問題は多々あったが、だからといって転落したのを放っておいて知らん顔で帰宅していいはずはない。故意でなかったならなおさら、すぐに大人に報告しに走るべきだった。その「逃げ」の罪を、親は体を張ってでも理解させるべきだった。子供にろくに話を聞かないままで、なんで信じられるのか、守らなきゃとか言っちゃってんのか。学校側だって、配慮しすぎて一周回って話がおかしくなってることになぜ気づかん。ぬるい! ぬるすぎる!

と怒りだしたくなるほどに、「モヤモヤ感」たっぷりの本であった。

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