おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

読んだ本いろいろ 4

2015年8月17日  2023年9月13日 
なんとなく思い立って、心理学関係の本を続けざまに読んでみた。



「平気でうそをつく人たち」虚偽と邪悪の心理学 M・スコット・ペック
内容とタイトルが微妙に合ってない気もするが、良書。
ここでいう「平気でうそをつく人」というのは、自己の利益のため(問題や責任から逃げるため・自分を『自身が考える範囲内での』良い人に見せるため)には手段を選ばない人、ということ。
そういう人は普段まるきり普通、むしろ地域活動などに積極的だったりする、常識的ないい人として生活しているが、ひとたび「自己のあるべき姿」が損なわれるまたはその危険があると判断すれば、対象に向けて執拗な攻撃を開始する。何が引き金になるかはその人次第なので、
「なぜこんな小さなことで、あんなに良い人がこんなことをしでかしたのか」
と周囲が驚くことになる。
およそ「邪悪」なふるまいは客観的事実を学んだり調べたりしない「怠惰」と自分のことしか考えない「ナルシシズム」から起こるとし、それが集団ともなると、個々の思考停止または誤った判断によって、より大きな邪悪を生むことになるという。ナチスのユダヤ人虐殺しかり、広島長崎の原爆投下しかり。
しかしその「邪悪」を完全に排除したり破滅させたりするのではなく、あくまで愛を以て、悪の正体を正面から見つめ、だが巻き込まれることなく、その時々で常に科学的・道徳的に正しい判断を下していくことが、世界をより良くしていく端緒になる---というのが作者の結論。
む、むずかしいぞ。

「結局、自分のことしか考えない人たち」自己愛人間とどうつきあえばいいのか サンディ・ホチキス
こちらはもう少し限定した感じ。
「自己愛」の人は「恥」の感情に耐えられない、というのが興味深い。本質的には弱いのだ。
赤ん坊の頃は皆自分が世界の中心であり、親も他者も自分の一部とみなしているが、成長とともに母親から分離し自立する。このときに適切な「恥」の処理を学ぶのだという。すなわち自分と親は別の存在であり、必ずしも自分の思う通りに世界は動かない、等身大の自分を認識し受け入れることだ。
傷は優しく負わせなければならない---子供がより強く成長するには、多少の傷や痛みを負い、それを癒やし回復するという一連の流れの繰り返しが必要。このへんがうまくいかないと、自己評価が歪み、恥=痛みに耐えられない自己愛的人間が生まれる、と。

うーん、子供が小さい時に読みたかったなあ。こういう観点で子育てをすればかなり気持ち的に楽だったかもしれん。育児ってシンプルだけど、だからこそ深くて難しい。

「良心をもたない人たち」25人に一人という恐怖 マーサ・スタウト
こちらは原題が「隣のソシオパス」(The Sociopath Next Door)。ソシオパス(社会病質)、またはサイコパス(精神病質)は人格障害の一種。一切の良心を持たず、他人と共感することがなく、罪悪感もない。自分の目的を達するためならどんな酷いこともためらいなく行うことができる。かといって全員が重大な犯罪を犯すとは限らない。見た目にはいたって普通、口が達者で魅力的であることも多いという。一切の逡巡無く物事を進められるので、立場によっては相当のカリスマ性を持つことも。確かに生きるか死ぬかの戦闘行為などにおいては、罪悪感のないサイコパスは「優秀な戦士」になる可能性が高いだろう。
だが、それならばなぜサイコパスは25人に一人、なのだろう。弱肉強食の世界で生き抜く力が強ければ、サイコパスばかり生き残って増えそうなものではないか?
結局のところ、自分という個だけを守るサイコパスは、群れを守れない。より多くの遺伝子を残すという目的においては、良心を持ち他者と協力・共感ができる人間の方に軍配が上がるのだ。
面白いのは、アメリカではサイコパスが増えているが、アジア圏ではその割合は低い、という話。個人主義を価値の中心におき、実力でのしあがる「自分本位」の態度を容認する米国の社会は、サイコパス的な生き方をむしろ薦めているかのようにも思える。対するアジアでは、万物とのあいだの相互関係を重んじ、他者に対する義務を、認識面をとおしてその個人に厳しく理解させるため、社会的にサイコパスの芽を摘むことが可能になるのではないか。
この本が著されたのは10年前だが、個人主義の限界はこの頃すでに盛んに言われていたのかと感慨深い。そういえばスカーペッタシリーズもここしばらくそんな感じだものなあ。まさに「個人の能力でのしあがり」「すべてを持っている」登場人物たちは、決してサイコパスではなく、並以上に感情豊かな人々だが、何故かあまり幸せそうではない。アメリカはまだまだ、そういった社会から脱するのは難しいかもしれない。

というわけで三冊読んだがどれもかなり面白かった。こういう本って時々ハマるわ。
ちなみに一般的には、このような方々とリアルに遭遇したら、まずは逃げるが勝ち。どれも気づきにくい場合が多いが、最初の勘を信じろというのも共通している。良心を持つ遺伝子を守るため精進せねば。
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