「月と日の后」

 やっと「源氏物語アカデミー」のレポを書き終わったのでこちらも。



「月と日の后」冲方丁(2021)

 紫式部が仕えた藤原彰子の生涯を描いた作品。「歴史街道」に連載していたという。

 アカデミーの予習として読んだ「藤原彰子」(朧谷寿)も、参考文献の一つとして巻末に並んでいてちょっと嬉しい。というか、それを読んでいたからこそすらすら読めた、のかもしれない。とにかく登場人物が多い!それこそ源氏物語バリに多い!(当たり前か)そのせいか、時々「あらすじ」っぽい感じの箇所が散見されて、わかりやすいのはわかりやすいんだけど少々物足りない気も。これってガッツリ詳細に描いたら三冊くらいいくんだろな。え、これ大河いけるやん充分。

 レポの方で「平安時代火事多すぎ治安悪すぎ」と予習本の感想を書いたが、内裏や貴族の邸での火事は殆ど原因不明の不審火、つまり放火ではないか?という説がある。冲方氏の解釈としてその理由に

「怨み」

 を第一に置いたのはまさしく平安時代らしくて良い。同じ国母(帝の母)となった詮子と彰子の境遇が「怨み」の有無によってくっきり道が分かれていくというのも筋が通っている。ちょっと前に流行った「マネジメント」でも渋沢栄一の「論語と算盤」でも、「誠実」「公正」であることが最も大事、とあったもんね。

 それにつけても藤原彰子というお方の素晴らしさよ。何となくだけど、「源氏物語」に出て来た女君たちの良いところ取りというイメージ。一番近いのはもちろん紫上。六条院での仕切りようはまさに「和を以て貴しとなす」だもんね。最大のライバルであった明石の君とも生母と養母としてお互いを認め合う良い関係を築き、あの女三の宮さえもお付きの女房ともども手なずけ、楽器を弾かせても字を書かせても香合わせでも、源氏が「いつのまに?!」と驚く程のハイクオリティ。養女のみならず次々生まれた孫たちの養育も一手に引き受け、様々な儀式の差配も行ったというのも彰子に重なるところ多い。

 「ひかるのきみ」を書いていた時、紫上というキャラが描いてるうちにどんどん理想に近づき、作者の思惑を遙かに超えていったんじゃないかと感じたが、きっと彰子に仕えたことも大きく影響してたんだろう。物事の本質を掴むのが抜群に上手い紫式部のこと、彰子の人となりを誰よりも深く洞察していたんじゃないかしら。

「枕草子」で中宮定子の姿を永遠に残した清少納言と同じく、彰子の素晴らしさをその作品の中に、フィクションならではの自由度で散りばめた紫式部もまた、「推し愛」の強い、熱い心を持つ女だったにちがいない。

 再来年の大河、道長と紫式部はソウルメイトと銘打ってるけど、そこまで???単なる上司と部下じゃないのかねえ。そりゃ勿論お互いにリスペクトも信頼もあっただろうけど、どう考えても彰子との関係の方が絆は強いと思う。恋愛感情が全く一ミリもなかったとはいわないが、そういうのを主軸にはしてほしくない……そこら辺よろしく頼みます、何卒。

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