2016年10月6日木曜日

九月に読んだ本 2

「空棺の烏」阿部智里
 
「八咫烏」シリーズ第四弾。作者、凄い勢いで書いてる、そして凄い勢いで進化している。今回はいわゆる訓練学校(寄宿制)での、少年たちの成長物語・・・なので、登場人物の九割が男。先輩後輩の序列が明確で、政治的な派閥も絡み、思惑や陰謀が渦巻く寮生活。ホグワーツのクィディッチ試合を思わせる立ち回り、インディ・ジョーンズばりの冒険活劇。これはもう、きっと作者の趣味・嗜好炸裂の作品とみた。雪哉のみならず、一人一人の男性キャラをここまで生き生きと、楽し気に書かれると、デビュー作が女子中心の話だったことが大変不思議。自分への挑戦だったのか、それとも、若宮や他の男性キャラを引き立たせるための裏技だったのか。伏線はりまくりの、どんでん返し好きな作者ならばきっと両方アリ、なのだろう。
それにしても雪哉くんの腹黒さにはしびれる。そしてやはり、浜木綿さんがもうひとつ活躍が足りない気がする。悪い女性を描くのはかなり上手なので、悪そうorクールにみえて実は・・・てな感じのツンデレ系女性ならいけるのではないだろうか。ていうか次作すでに出てるし、今後大いに期待♪
 
「満鉄調査部」小林英夫
 
この本、かなり薄い。いつもなら二時間あれば読めるボリュームなのだが、中身が濃くてなかなか進めなかった。無駄なことは何もなく、史実や資料に基づいた客観的事実が整然と述べられている。こういう文章、若い頃はただ無味乾燥で退屈と感じたものだが、今は端的な情報ほど背後にあるものや意味を理解しやすいように思う。
鉄道を中心に、ひとつの国をほぼ一から作り上げるという大事業、当時多方面から人材を募っているが、呼ばれた方も相当にワクワクしたのではないかと思う。いわば事務方のトップエリートたちが、くる日もくる日も生真面目に調査を積み重ね、集めた膨大で精度の高い情報と、実用に足るよう整理しまとめあげた考察の数々が満州国、ひいては本国日本を支え、戦中においては軍にも大いに活用された。終戦とともに満州国も調査部も消滅したが、彼らの活動や経験は、戦後日本の復興に少なからぬ影響を与えているという。
高度成長を支えたかつての「日本型経済システム」も、今はグローバル化という声のもとに崩れてしまっている。素人考えとして、すべてを元に戻すことは不可能としても、こういう、ある意味囲った中での経済を何とかする、ていう方式のほうが、やはり日本と日本人には合っているんじゃなかろうか。まあ、そもそも世界的にも、「グローバル」て無理なんじゃ? という雰囲気にはすでになってる気もするが。 

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