「黒牢城」

  大河勢そろい踏みのメンバーを見て、これは是非とも観ねばなるまいと思い観た。封切り間もないので観客多め、年齢層やや高め。

「黒牢城」黒沢清(2026)

 黒沢清さんてお名前は聞いたことあるけど映画は観てないな、と思ったら「学校の怪談」の人だったのね。初の時代劇(!)らしいが、なかなかに渋く重厚な絵面と展開で最後まで連れてかれた。ちょうど今の大河「豊臣兄弟!」で荒木村重の裏切りエピソードを観たばかりなのでタイムリーもいいところ。とはいえトータス松本さん演じる村重と、本木雅弘さん演じるそれとは全然まったく違ってた。ギャップが大きすぎていっそ清々しいほど。それほどまでに荒木村重という人物自体がミステリーってことなんだろう。今大河で死せる竹中半兵衛をとんでもなく美麗に演じた菅田将暉さんが、ここで黒田官兵衛として転生してるのも楽しい。此方も圧倒的な存在感。

 ただ、この映画自体は決してミステリーの枠ではない。あくまでひとつの要素であって主体じゃないのだ。ポスターにあるように「心を読め」、各登場人物がどういう過去があり、何を思って行動しているか、それが逆に「ミステリー」要素により徐々に解き明かされる。まずカメラの視点が屋根の上、天井よりやや下、くらいの高さが多く、人物バーンとアップ!はここぞという時のみ(効く)。離れたところから突き放して観てる感。それ故に、何か起こるたびに繰り返される人の右往左往が、真剣みとおかしみの両方を醸し出す。物理の動きで内面をも表現するのが演技というものだろうけど、それが演出によってより効果的に観る者に届く。勿論演者の力量に対する絶大な信頼あってこその技。そしてロケ地がまたこれ本物揃い……よくもよくもここまで「この場面にはここしかない」場所をお選びになったものだ。キャスティングもロケ地選びも拘り半端ない。

 演じた俳優さんたち、主演の本木さんはじめいずれ劣らぬツワモノ揃いの陣営だが、やはり特に凄かったのは吉高由里子さん演じる千代保。男ばかりの中でほぼ紅一点ともいうべき役柄の割に、前半はしごく控えめにふんわりした存在(ただし不穏な雰囲気を纏いつつ)だったのが、終盤にかけて一気に畳みかけてくる。持仏堂のシーンは圧巻。心をぶっ刺し揺さぶるような長いセリフ回しが、たった一言に収束する様は素晴らしかった。単なる慈悲とか同情心とかではない、非情かつ凄惨な世の中に在るからこそ辿り着いた究極の死生観。たった一言が死への恐怖を超えて人の心を救う。さすがは言の葉を操る紫式部様である(実際吉高さんの中でバリバリ生きてるんじゃないかしらん、まひろは)。ラストの締めも完璧。面白かった。黒沢監督、また時代劇撮ってほしいな。

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