そろそろ読書の秋、だけど雨ばかり。
「タタール人の砂漠」ブッツァーティ(1940伊、2013訳 脇功)
Il deserto dei Tartari / Buzzati,Dino
カフカの再来、と称されるだけあって不思議な話だった。私の印象としては、カフカよりその視点は詩的で穏やかだが、ある意味途轍もなく容赦ないし厳しい。「なにかが起こるのをじっと待つ」ことに憑りつかれた男の話は、もちろん思った通りにはいかない人生の寓話なんだろうけど、「どうせ死ぬなら華々しく意味のある死に方をしたい」って意外に普遍的な考えなんだなあと変なところに感心してしまった。書かれたのがまさに世界大戦前夜?だからこそなのかもしれないが。大抵の人間は「特に意味もなく」「華々しくもなく」人生を終える。思ってもいないタイミングで突然断ち切られてしまう命もたくさんある。そう考えると、青春を「期待」に満ちて終え、最後の最後にやってきた「実現」を見聞きすることなく終わったジョヴァンニは実のところ相当幸せな部類なのではないか。最後まで「何か素晴らしいものがやってくる」と信じていたのだから。
物語の中で風景だけが、最初から最後まで何も変わらないまま残る。なんだかんだ砦は、何もない寂寞とした世界(外の世界も含め)唯一の安全地帯ということだったのではないかなあ。淡々とした語り口だが最後まで面白かった。映画化もされてるらしいので観てみたいな。

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