宮部さん二連発。
「きたきた捕物帖」宮部みゆき
久しぶりの宮部さん新シリーズ。ご本人曰く
「生涯書き続けたい捕物帖」
だそうな。タイトルの「きたきた」に引っ掛けてあるのは二人の「きた」で、一人は文庫売りの北一、もう一人は風呂屋の喜多次。急死した千吉親分の代わりに岡っ引きめいた仕事に関わることになった北一が、この喜多次(カッコいい!)や周囲の人々と協力しあいながら事件を解明、解決していくというお話。
安定の宮部さんクオリティ、するするするっと読み終えてしまった。登場人物それぞれの事情にまだ謎が多いままだが、これから徐々に語られていくのだろう。ある意味定番の展開ではあるもののそこは手練れの語り口、ぐいぐい引き込まれる。
それにしても、この話の始まりが町の顔役ともいえる人望厚い千吉親分の突然の死。さほど年寄りでもない、まだまだ生きて元気に活躍すると思われていた人を喪うことはかくも辛いことで、周囲に大きな影響を与えずにはおかないのだ。
ただ、亡き親分が培い、繋いでいたものは、まだ町のそこかしこに生きている。
後を継ぐなど烏滸がましいが、せめて恥じない行いをしよう―――。
半人前の若い北一にそう決心させるほどの大きな存在。
突然ポッカリ空いた巨大な穴を皆で塞ぎ、新たな絆で埋めていく。
江戸の町の一角の人情話が、まさか令和のリアルにこれほど肉薄するとは思わなかった。非常に身につまされるとともに、続きが楽しみだ。
「黒武御神火御殿(くろたけごじんかごてん) 三島屋変調百物語六之続」宮部みゆき
こちらは「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」の聞き手・おちかちゃんの跡目を継いだ従兄の富次郎の初陣。どれもかなりのヘビー級。最初にエロティックホラー「泣きぼくろ」を持ってきたのは上手いと思った。おちかちゃんが何といっても素晴らし過ぎたので、同じような内容・流れではいかにも分が悪い。かといって完全にぶった切るのも寂しいし勿体ない。ちょうどいい加減にけじめをつけつつ、若い未婚女性のおちかちゃんでは難しかった話題から入り、富次郎ならではの魅力をさり気なくアピール。ふむふむ中々心にくいね!
などと呑気に感心しつつ読み進んだら―――
全編ホラーだった!!!しかも結構な本気のホラー!!!
表題の「黒武御神火御殿」なんて、正直これで一本中編か長編書けちゃうじゃんという圧倒的密度とド迫力。誰かアニメ化か映画化せんかのう。基本的に家とその周辺だけで登場人物もさして多くもないし、行けるきがする。メチャクチャ怖いと思うわ……観たい。
そして、これは私の個人的な印象だけど、全編ポリコレ的なものへの挑戦といった匂いもする。時代は江戸、内容も本当か嘘かはわからない「お話」。リアルで声高に批判を叫ぶよりも、真に言いたいことを自由に言える気がするのよね。いや創作ですからね、創作!
何にせよ、夏の夜にふさわしい読み物でございました。
以下微妙にネタバレな一言コメントと怖さ度合(個人の感想です)。
「泣きぼくろ」お豆腐屋一族に降りかかる正体も因果も不明の異様な災難。★★★☆☆
「姑の墓」親の因果が子に報いの嫁姑版。怖すぎ。★★★★☆
「同行二人」カオナシとの珍道中(ほのぼの要素無)。怖さより悲しみ。★★☆☆☆
「黒武御神火御殿」雰囲気は「ミスト」「ミノタウロスの迷宮」。ヤバい。★★★★★
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