2010年12月28日火曜日

エンド・ロール

俺のせいじゃない。 何度も、何度もそう言い聞かせてきた。俺には何の責任もないと。知らなかったから仕方ないと。すべてはあの女が悪いのだと。 

 マスクを通した息が白く凍って、薄汚れた革のコートにまとわりつく。
 気温は午後から徐々に下がり始め、日が落ちた今は刺すようにつめたい空気が満ちている。冷気が衣服のわずかな隙間から入り込み、皮膚の柔らかい部分を容赦なく貫く。
 喉の奥からは相変わらず嫌な音がする。が、ゆっくり休めるような場所は見当たらない。さっき入った店では、即座につまみ出された。大きなファッションビルの中なら、閉店まではいけるかもと思っていたが、甘かった。俺はもういろんなことに麻痺しきっているのだろう。自動ドアを抜けて暖かい空気に触れた途端、周りの人間が息をのむ音が聞こえ、一分もしないうちに警備員がすっ飛んできた。無理もない。仕事を辞め寮から追い出されたのは秋口、ゆうに三ヶ月は風呂に入っていないことになる。

 クリスマスイルミネーションを外された並木は寒々しい姿だが、通りを彩る着飾った若者たちの流れは相変わらずきらきらしく目を射る。
 俺は何故こんなところを歩いているのだろう? 何年も来たことはなかったのに。そうだ、いつもこの時期・・・クリスマス前から年末年始は特に店が混むので、休みなど取れたためしはなかった。
 きつい香水の匂いが鼻をついた。とたんに咳の発作が襲った。胸の奥からこみ上げる激しい咳に、おとろえた腹筋がひくひくと痙攣する。人の波が見事に俺を避けて左右に分かれた。俺は体を折り曲げながら、表通りを外れた脇道に入った。
 煤けた薄暗い外灯に照らされた、真ん中に植え込みのある遊歩道には、等間隔にベンチが置いてあった。白いペンキがところどころ剥げかけた古い木のベンチに倒れこむように座る。ジーンズやコートを通し、尻から背中から冷たさがしみてくる。咳は止まらない。俺はポケットを探り、クシャクシャになったのど飴の袋を取り出した。街頭で配っていた試供品だ。最後の一つを口に放り込むと、徐々に咳は治まったが、代わりに胸の痛みがひどくなった。不気味に甲高く濁った息の音は、アル中だった父が死んだ時にそっくりだ。肺炎にかかっているのかもしれない。震える手でもう片方のポケットを探ったが、50円玉ひとつと10円玉が三つ。ペットボトルの水すら買えない。

「ねー、超カワイイでしょー?」

 甲高い声に耳を疑い、思わず苦しさも忘れ顔を上げた。若い女の二人連れの後ろ姿は表通りに消えていったが、その声だけは何度も何度も繰り返し、俺の頭の中で鳴り響いた。
 超カワイイでしょー? ねー、超カワイイでしょー?

 聞こえるはずのない声が頭の中でこだまする。無駄とわかっていながら俺は両手で耳を塞いだ。
 俺のせいじゃない。
 俺のせいじゃない。
 俺のせいじゃない。
 誰か、俺のせいじゃない、と言ってくれ。

 咳がこみあげてきた。ごほん、とやった瞬間、胸と喉に激痛が走った。俺は体を折り曲げてうめいた。ベンチの下では、枯れて白茶けた雑草にタバコの吸殻が絡み、虫の死骸が朽ちかけていた。羽らしきものが薄く崩れて、微かな風に揺れる。
 斜め後ろ、目の端に小さな水飲み場が見えた。咳をするたびに襲う激痛に耐えながら立ち上がり、蛇口をひねる。力加減に失敗して勢いよく水柱が上がった。水は氷のように冷たく、口に含むと金臭かったが、無理に飲み込んだ。痛みがいくらか和らぐ気がした。咳は止まり少し落ち着いたが、冷えすぎた。 
 辺りはもう真っ暗だ。今夜は何処で過ごそうか、とりあえず地下道に降りるべきかと考えながらベンチに戻ろうとすると、足が何かを蹴った。マッチだ。Star New One、と書いてあるだけで何の店かはわからない。幸い湿気てはいないようで、擦るとすぐ火がついた。落ちていた空き缶の口にのど飴の包み紙を詰めて小さな火を上に乗せた。思いの外あたたかい。俺は両手をかざした。

 路地の奥にあるイタリアンレストランからガーリックの香りが漂う。笑い声が聞こえる。数メートルと離れていない場所に、ここに座っている俺とはまったく関係のない世界がある。かつては俺も所属していた世界が。

「かんぱーい!愛ちゃん、お誕生日おめでとう!」
 シャンパンのボトルのふたがぽんと鳴る。笑い声とさざめき、グラスが打ち合う軽やかな音。クリスマスソング。愛の笑顔。美しい、だがすこし寂しげな、切れ長の目。
「好きな人がいたの。とても好きな人が。でもうまくいかなくて・・・私、すごいブスだったから」
 何を言っているのかわからなかった。愛はこの界隈では有名な高級店のナンバーワンホステスだ。本当なら俺みたいな二流ホストが気軽に声をかけられる存在じゃない。
 そう言うと愛はうっすらと笑い、わかってるくせにと呟いた。整形は、この世界では珍しくはない。だが愛の完璧なまでの美しさと輝きが、人工的に作られたものだとはとても思えなかった。それに愛の魅力は外見だけではない。
「ありがとう」
 俺は愛に何を贈ったのか、もう忘れてしまった。お決まりのブランド物バッグか、アクセサリーの類か。だが愛がお返しに、とくれたものははっきり憶えている。優しく俺の手に触れた、つめたくなめらかな白い指。

 オルゴール。

 燃え尽きたマッチが缶の底にことんと落ちた。
 あのオルゴールは何処に行ってしまったのか。寮を出たとき、俺の部屋は空っぽ同然だった。愛が突然街から姿を消して以来、俺は店を休みがちになり、何やかやと借金を重ね、持っていたものはほとんど換金してしまった。だがあのオルゴールだけは手放した記憶がないのに。

 俺は燃やすものを探し、もう一度マッチを擦った。

 けばけばしいミラーボールの輝き。濃すぎる化粧と香水の匂い。惜しげもなく開けられる高級シャンパンの甘い香り。
「ねー、超カワイイでしょー?」
 あの女は店に来るたび子どもの写真を見せた。ストラップのジャラジャラついた派手なピンクの携帯の画面には、毎回違うアングルで、幼い二人の子どもの笑顔が映っていた。仕事も育児も頑張ってんだね、エライねとお世辞をいうとひどく嬉しそうだった。大して美人ではなかったが、笑うとどことなく愛に似ていた。

 俺はそろそろ帰らなきゃ、という女を何度となく引き止めた。時には他のホストと一緒に夜中のドライブへ連れ出したりもした。こんなことをするのは君だけだよ、君は特別だよと囁いた。そのうち女は、自分から帰るとはいわなくなった。子どもの話もしなくなった。誰かに聞かれると目を泳がせ、知り合いに預けているからと笑った。
 女はキャバクラ勤めだったが、乳幼児二人を抱え決して余裕のある生活ではなかった。だがそんなことは俺の知ったことではない。店に少しでも多く来るよう、少しでも長くいるよう、あの手この手で煽り続けた。お前本当に惚れてるんじゃないか?と周りにからかわれるほど。春から夏にかけての数か月間、俺は入店以来最高の成績を上げた。

 いろんなことがどうでもよかった。愛の来ない店での仕事は、俺にはまったく意味をなさなかった。稼いだカネはすぐ使ってしまった。

 火が消えた。

 春から夏にかけての数カ月……尋常ではない暑さだった、あの数カ月間。

 あの女の、幼い二人の子どもは、マンションの部屋に放置され死んだ。女が逮捕され、警察が店に事情を聞きに来たその夜、俺は店を辞めた。

 俺は再びマッチを擦った。

 窓の外からジングルベル、すぐ隣の店のBGMだ。便利だね、と笑う母とこたつに入りツリーを作る。
 広告を樅の木の形に切り、クレヨンやマジックで色を塗る。母は折り紙で鈴やトナカイを器用に折る。三角帽子も、ポップコーンの入った紙皿も、全部広告で手作りだ。
「サンタさん、きづいてくれるかな。おうち、とおりすぎちゃわないかな?」
「大丈夫、こんなに一所懸命作ったんだもの。きっと来てくれるよ」 
 しみだらけの壁、へこんだ古い畳、テレビも何もない狭い部屋は、あたたかく安心できる場所だった。
 母がいたから。母が、いつも笑ってそこにいたから。
 笑顔。そうか、母の笑顔はそのまま、愛の笑顔だ。そうだ、こんなに似ていたんだ。何で気がつかなかったのか。そのままじゃないか。
 窓の外からジングルベル。


 火が消えた。

 暗く寒く人気のない遊歩道のベンチの上に俺はいた。体中どこもかしこも寒く冷たく凍るようだ。そうだ、前にもこんなことがあった。あの部屋の前で、膝を抱えてずっと待ち続けた、母の帰るのを。春も夏も秋も冬も、ずっと。呑んだくれの父の暴力を嫌って逃げ出した母が、もう二度と帰らないと……俺を迎えに来てくれることは絶対にないのだと、諦めたのはいつのことだったのか。

 俺は憑かれたように、次々とマッチを擦った。燃やすものはもうない。細い棒の先の火がついては消える。

 空調の効いた店の中であの女が入れたドンペリを開けている時、あの女が俺に肩を抱かれ、けたたましく笑っている時、食い散らかした残飯をダストシュートに投げ入れている時、同じ街にありながら、それとはまったく関係の無い世界で、あの二人は死んでいった。そうだ、「死んだ」んじゃない、「死んでいった」のだ。ゆっくり、じわじわと、それは小さな子どもにとっては気が遠くなるほど長い時間だったろう。母親を待って待って、待ち続けて、最後の最後まで帰ってくると信じていただろう。俺と同じように。

 そうだ、俺は諦めてはいなかった。母が帰ってくると、心の何処かで信じていた。どんなに俺が引き留めても、愛に似たあの女がどんなに最低な女でも、子どもは見捨てないだろうと、信じていた。信じたかった。だから試した。どんな状況でも母親は母親なのだと思いたかった。そんなに可愛い子どもなら、何故お前はこんなところに来ているんだ? 可愛い、なんて嘘だろ? 携帯にジャラジャラつけたストラップのように、簡単に取り外しのきく、お手軽なアクセサリーでしかないんだろ?挑発しながら、煽りながら、俺は諦めることが出来なかったのだ。

 母のことも愛のことも、いまだに諦めきれない俺が、ひたすら母を待ち続けた子ども二人を殺した。

 俺は泣いた。咳がまた出始めた。ごぼ、と音がして痰が大量に出た。吐き出すと赤いものが混じっている。喉が焼けつく。胸が痛い、痛い、痛い。こじらせた風邪のせいばかりではない。俺は固くつめたい木のベンチに横ざまに倒れこんだ。苦しい。苦しい。俺はもう死ぬのかもしれないが、こんなに苦しいのは嫌だ。もう許してくれ、早く楽にしてくれ。俺は最後のマッチを擦った。

 ……い、おーい。

 誰か呼んでいる。ここは温かくて気持ちがいい、眠くて仕方ない。呼ぶな、もう俺を呼ぶな。

 俺の手を誰かが掴んだ。小さな手だ。こわばった俺の手をやさしく開き、何かを載せた。小さな手は離れて、子どもの笑い声が遠ざかっていった。

 懐かしい曲が流れている。題名はなんだったろう? 何か飛んでいる、あの虫は……そうか、俺はそういう世界に来たんだな。

 安堵の溜息をついて、手のひらに載せられたものを探った。これは……


「オルゴール、ですか」
 担当の若い看護師が目を丸くした。申し送り表を記入している年配の看護師が俯きながら言った。
「そうなのよ。どうしても離そうとしなくってね、仕方ないからそのままで処置したわ。消毒液までかけてさ」
「へえ……余程大事なものだったんですねえ。あんなにひどい状態だったのに」
 ナースコールのボタンが赤く点滅した。
「ほら、噂をすれば。いってらっしゃい」
 若い看護師は口を尖らせて立ち上がった。
「きっとまたどうでもいい用事なんですよ。 あの彼女来てましたよね?今日も」
「心配なのよ。何しろ死にかけてたんだから」
「だからって……お母さんまでつききりだし。結構イケメンなのに、マザコン?」
「妬かないの。 さっさと行きなさい」
「はーい、いってまいります」

 ナースステーションを出ると、横から幼い子どもが飛び出した。
「こらっ、走らないの。怪我するわよ? もうすぐ退院だからって油断しない」
「かんごしさんごめんなさーい。ほら」
 幼い姉が、もっと幼い弟の頭を押さえながらぴょこんとお辞儀をした。
「戻る時も走らないのよ」
 笑い声に釘を刺し、彼の病室に向かう。患者と顔立ちのよく似た母親は、まだうまく話の出来ない息子を愛おしげに眺めながら、この子、まだ夢だと思い込んでいるんですよ、と笑っていた。美しい恋人はいつも物静かに彼を見守っている。
 幸せだよね。前に何があったかは知らないけど、あの人、本当に幸せ。
 暖かな春の日が、開けた窓から差しこむ。どこからか舞い込んだ蝶がひらひらと暢気に飛び回る。
 看護師は軽く伸びを一つして、病室のドアをノックした。

<了>

2010年クリスマス競作「メリークリスマス!クリスマス競作やりましょう!」参加しました(大遅刻)。

2010年12月27日月曜日

12月に観た映画 その二

「フローズン・リバー」監督コートニー・ハント2008年

タイトルそのままの、身も心も凍るような寒さ。暖かい家の中で観ているのに本当に寒かった。「ガラスの仮面」の「二人の王女」で、姫川亜弓扮するオリゲルドが観客に感じさせた寒さ、を思い出した(ふざけていない。大真面目)。
寒さ=貧しさ、であるのだろうなあと実感。
ここでも強いのは例によって母である。単純に母親、というよりは「母性」というべきか。男でも女でも、守るべきものを持つ者は強い。

冒頭、シミと皺だらけの疲れた中年女の顔がアップで映される。その張りのない肌の上を、つーっと涙がこぼれ落ちる。思わずノリPの例の会見を思い出してしまったが、あれとは比べ物にならない女優魂だ。身支度をきちんと整え折り目正しく「お詫び」をしたノリPより、フィクションであるこちらの方がストレートかつ峻烈に、苦悩・悔恨・深い疲労感を伝えている不思議。主演女優がアカデミー賞にノミネートされたのも納得いく。この冒頭だけで、主人公がどういう状況にあるのか感覚的にはっきり理解できるのだ。

蟻地獄のような貧困の実態と、犯罪に走る心理を克明に描いてはいるが、決して「社会派」といわれるような映画ではないところがまた好ましい。「絶対悪」のような存在はなく、ただ個々の欲や願望や、下手すると向上心、自立心、家族への愛情、もろもろの感情や思惑が絡んで、悪い方に向かってしまうやるせなさ。淡々と描いているゆえによく響いてくる。子どもがまた揃いもそろって可愛くていい子で、こんな子たちを守るためならそれは鬼にも蛇にもなるよなあと思ってしまう。

先行きは不透明で、相変わらず寒いが、ラストはハッピーな予感に満ちている。冒頭で独り泣いていた主人公は、同志を得たから。
結局のところ、アメリカは極端な個人主義に疲れているのだろうなあ、と思う。

2010年12月21日火曜日

12月に観た映画

超忙しくてブログ更新する暇もないわーと言いつつ、子どもにせがまれて映画を観に行ってしまった。次女を後ろに乗っけて、二駅先のシネコンまで自転車かっとばしたもののさすがに帰りの坂道は降りて歩いた。次女は身長の割には軽いのだが、それでももう無理無理むりむりかたつむり(←懐かしい)。来年は自転車買ってやらねば。

で何を観たかというと・・・

http://www.tv-tokyo.co.jp/bleach/

・・・えーと・・・これはいわゆる腐女子御用達というのかしらん。いやむしろそれはNARUTOの方か? 個人的に、ストーリーはNARUTOより面白かったように思うが、戦闘シーンがやたら多くて疲れた(そこは仕方ないと長女談)。この手の映画は話そのものより各キャラクターにいかに自分の仕事をさせるかというのがキモなので、多少の矛盾はご愛嬌というものであろう。だが腐女子でない単なる漫画オタクのオバチャンはやはりブツブツと突っ込みたくなってしまうのである。

****ここからネタバレ****

えっと、結局この「ちょっとカッコイイ」悪役(名前失念)、大して悪いことしてなくないかい?

強いて言えば、関係ない人間を死なせかけたり、死神を咎人に引っ張り込んだりして地獄のルールを破り秩序を乱したことか? それがそんなに重罪なら、地獄に入ることを禁じられていた死神たちだって、結局入り込んでいろいろやっちゃったんだからマズイじゃないか。後で同等の処罰があったのか?

まあ、自分の望みがかなえば世界が壊れようがなんだろうがどうでもいい!というあたりが一番罪深いのかな。そういうメンタリティで事件を起こす人はこのところ多いし。

とはいえ、地獄に落とされた理由が妹を殺した相手をなぶり殺しにしたから、というのは情状酌量の余地がないか?
世の中にはもっとひどいのが沢山いるぞ。
個人的には最後に、妹が出てくるというエピソードが欲しかった。あったけど削ったのかな?あの多すぎる戦闘シーンを一つでもなくせば軽く入ったろうに。

つか妹の話が真っ赤な嘘だった、てことにしないと、こいつが極悪人とは到底言えない気がする。
なんかいろんな意味でぬるい!ぬるすぎる!
・・・とお怒りの貴方にオススメの映画がコレ↓昔映画館で観たのだが、ブルーレイ君がいつのまにか録画しといてくれたので再度鑑賞。


「コックと泥棒、その妻と愛人」ピーター・グリーナウェイ監督

いきなりラストに言及するのも何だが、この映画のラストシーン、私が今まで観た中でダントツに素晴らしい。感動的だとかスカっとするとかいうのではなく、悪趣味もここまで極めるとこんなに美しいものになるのかという驚き、当時20代だった私にはかなりガツンときた。
映像は超絶に美しいが、エログロ暴力描写が半端なく、お子様の入る余地は皆無(トラウマ確実)。そこがまた逆に惹きつけられるところで、しばらくグリーナウェイと聞けば観に行った。だが最初の衝撃を超える作品には出会えなかった。「建築家の腹」がいい線だったが、観る順番が逆だったと思われる。

今回再鑑賞して、自分の中で衝撃だったのは、以前観た時には完全無欠な悪役だと捉えていたアルバートが、それほどでもないかも、と感じたこと。だがあれ以上酷いことをさせると映画の世界そのものが壊れるだろう。

やっぱりフィクションは現実をなかなか超えられないんだなあ。まあ、この監督は「現実」というものに重きを置いてはいないんだろうけど。

はー、疲れたので現実逃避。というときにはコレ。


劇場版 銀魂 新訳紅桜篇【完全生産限定版】


何と予約して買ってしまった。しかも長女の成績が上がったので、結局私のオゴリということに。まぁいいけどさ、空知さん好きだし。結構爆笑したし。

しかし声優さんたちの語りがダラ長すぎ。グダグダ感を狙っているのはわかるがもうちょっと何とかならんかったんかいっ。
ハタ王子の吹き替え版はナイスアイディア。あのウザさが癖になる(笑)。

テレビの「銀魂」も新シーズン始まるらしい。楽しみ。

2010年12月3日金曜日

帚木 (八)

さて、長かった夜が明けるとともに雨もあがり快晴。
さすがにこもりっきりも体裁が悪くなってきたヒカル王子、久々に正妻の家(左大臣家)を訪問する。

妻の葵さんは、相変わらず高ビーな態度で全然打ち解けてくれない。
仕方ないから若いメイドさんたち(女房)をからかいつつその辺でゴロゴロしていると、舅がいそいそとやってくる。
社長(帝)の息子である自慢の婿ぎみ、あまりざっくばらんには出来ないし、その上娘とはなんとなくうまくいってないっぽいし、粗相があってはならん・・・・・・と余計なところまで気を遣いまくる舅。
くつろいだ格好のヒカルを人目にさらすまいと衝立を置き、風の通り道をふさいでしまった。

「風来ないじゃん、このあちーのに。気きかないオヤジだな」

と、こっちもワガママで高ビーな若いヒカルは聞こえないように言いつつふてくされ、周りのメイドさんたちはそれを見てくすくす笑う。

だが正妻の葵さんだけはノーリアクション。超キレイで物腰も優雅、教養もあるのに、ヒカルとはメイドさんを通してしか口をきかない。
ヒカルにしても、元々政略結婚、自分で選んだわけではないし、そっちがその気ならこっちもと意地になったりする。
なんだかんだでまだ子どもなのである。

夕暮れ。

「あらいやだ、今夜は天一神さんが、会社からこちらの辺りまでいらっしゃるから、方塞がりだわ」
とメイドさんたちが騒ぎ出す。

「ヒカル王子さま、お泊りの場所を変えたほうがよろしいですわ」

すっかりくつろいでいたヒカルはぶんむくれて
「マジ?面倒臭いなあ、その方向じゃ俺の家もダメってことじゃん。このままゴロゴロしてようと思ったのに」
と動こうとしない。

だがメイドさんたちは老いも若きもみんなして
「ダメですの! 場所変えなきゃですの!」
とまくしたてる。

「そうだ、中川のあたりにいいお屋敷がありますわよ。紀伊守と仰る方で、お庭に川の水を引き入れて涼しい木陰をつくってらっしゃいますの」

「おお、いいね。車のまま入れるかな」 (車とは当然、牛車である)

いきなり申しつけられた当の紀伊守はさあ大変である、

「はあ、あの、それはもちろんいらしていただくのは光栄なのですが、今、同僚の伊予守のところで忌み事がありまして、そこからも大挙して人が押し寄せてきてるんです。とても落ち着ける感じじゃありませんよ、はあ」

などと小さい声でぶつぶつ言う。

だがヒカル王子は逆にいろめきたつ。
「いーじゃん、それ♪ (女の子が)大勢いて楽しげで。そこいら辺に衝立(几帳)でも置いててくれれば、それでいいよ」

「そ、そうですか・・・(んなわけにいきますかいな戦々恐々)」

ヒカル王子はwktkしつつ、舅に知られるとまた大げさなことになるので、こっそりお忍びで屋敷を出る。

突然超のつくVIPを迎えることになった紀伊守の家では準備におおわらわ、庭に面した東側の部屋を大急ぎで掃除して、衝立(几帳)やら何やらで周りの部屋との境界を作るが、急場しのぎの感は否めない。

世知にたけたメイドさんたちの口コミ通り、庭は遣り水も涼しげに、田舎風の柴の垣、前栽もよく手入れされている。 風通しもよく、虫の声がそこはかとなく聞こえ、蛍が飛び交い、趣のあるいい感じだ。

ヒカルのお供をしてきた人たちも一緒に、オープンバルコニー(渡殿)の下から湧き出る泉を見ながら酒を飲む。
家の主である紀伊守は酒や肴の用意にてんてこ舞い。
ヒカルはゆったりくつろぎながら、あのとき話に出た「中の品」というのはこういうところに住む女性を言うのかなあなどと思っている。

……



「う、右近ちゃん!」

「なあに侍従ちゃん」

「ま、まさか王子……」

「ほんとメーワクよねえ、急な方違えってさあ」

そ、そんなことじゃなくて!

「ほほほ♪」

「まさか!」

「やあね、侍従ちゃん。落ち着きなさいよ。まああんな話の後ですものね、お若い王子さまは影響もされやすいというものよ」

「いやーんありえないー!アタシの王子さまがどんどんヨゴレの途にっ」

「大げさねえ。ちょいワル、くらいでしょせいぜい」

「えーん!」

<つづくっ>

参考HP「源氏物語の世界

2010年11月22日月曜日

11月に読んだ本 その一

忙しい日々がもうすぐ終わる。てなわけで篠田節子さん二連発♪


「ロズウェルなんか知らない」


あああ、これ面白かった。まずタイトルがイケてる。まったく物語の中に出てこないけど、ロズウェルというのが何で有名なのか知っている人間はニヤリとしてしまう。
登場人物は非常に多いのだが、ひとりひとりのキャラが立っていてわかりやすく楽しい。誰ひとり、善悪に偏り過ぎていないところもまたいい。

この丁寧で生真面目な文体でこのユーモア感覚。ますます惚れ込んでしまった。
私は作家で読むことが多いので、これでまた読む予定の本が増えることが嬉しい。



というわけでデビュー作いってみましたよ。


「絹の変容」 

第3回小説すばる新人賞受賞作。

うーんこれがデビュー作なんて・・・と唸る凄さ。

同じパンデミックものの「災厄の夏」に比べると当然食い足りない部分もあるのだが、むしろこちらの方が緊迫感があるように感じるのは何故だろうか。
選ばれる人間が持つ新人作家の輝き、というものが絹の輝きにだぶるからだろうか。

そしてまたタイトルがうまい。
物事の本質を的確にとらえる能力が高いのだろうなあ。


「女神記」桐野夏生


桐野版古事記、といった趣。子どもを産むこと、その能力を有すること自体が女性を縛る呪いのようなものととらえているのが面白い。
男はそういうものには縛られてはいないけれど、呪いの中にすっぽりはまってしまっているので、打ち破る力もない。呪いの存在に気づいてもいないのだから当たり前だが、見事になーんにも役に立たない(笑)。
呪いをかけるのもかけられるのも、それを解き放つのも女。結局世界は女によって回っている、これは桐野さんワールドのお約束であろう。

桐野版・伊邪那美さまはちょっと素敵♪

2010年11月4日木曜日

10月に読んだ本 その二

あああもう11月になってしまった。
忘れないうちに。

「イトウの恋」中島京子

中島さんの本を読むのはこれで三冊目。彼女の書く話に共通しているのは、身近にある謎を、ほんのすこしずつ解いていくうちに、いつのまにか思ってもみなかった大きな物語の流れの中にいる・・・という仕掛け。
大きな物語といっても、この世に存在する無数の物語のうちのたった一つに過ぎないのだけど、それを丹念に拾い上げ、磨き、積み上げていく、その過程に並々ならぬ愛を感じる。
ものを書くことが好きでたまらない、と何かの記事の中で言っていた中島さん。
遠い異国から来た美しく賢い女性に抱くイトウの恋心は、そのまま中島さんの物語への恋、といってもいいかもしれない。

そして確信。中島さんは絶対職人好き、いや職人萌え、だと思う。



「新参者」東野圭吾

中学生の娘が学校の図書室から借りてきたのを奪って読んだ。
人形町はちょっと前に行ったので、何となくイメージがわかって楽しかった。
ただ主人公の刑事、どうしても阿部ちゃんを思い浮かべてしまい困った(いや別に困らなくてもいいのだが)。ドラマ化されたものを観ていたわけではない。予告編みたいなのをチラ見したにすぎないのだが、阿部ちゃんの印象恐るべし。つうか、ハマってたんだろう多分。

基本は人情物。中島さんが、割と情緒的なことをドライに書いているのに比べ、こちらは起こったことをドライに連ねているようで、その実かなりウェット。重松さんの「流星ワゴン」にも通じるロマンティシズム。男女の違いかな?

2010年11月1日月曜日

便乗企画♪ きまぐれロボット

「あなた、これはどういうことかしら?」
 妻は眉を片方上げながら私の顔を睨みつけた。その拍子に、使っていたシャープペンシルの芯がぽきっと折れた。急いでノックしたが、芯は出てこない。
「どういうことって、そこに書いてあるとおり」
「書いてあるとおりのことなんか聞いてませんよ。これは本当に必要で、本当に無駄がない仕事なの?!」
 だから今説明しようとしてるのに。私はうんざりしながら、芯のなくなったシャーペンを持ったまま、机の上にばらまかれたA4のコピー用紙をまとめて妻に差し出した。顧客とやりとりしたメールをプリントアウトしたものだ。
「それはもう見たわよ。結局は相手の我儘ということよね?」
「いやそれは違」
「あなたまさかお客様は神様だとか、本気で思ってるわけじゃないでしょうね?あのね、利潤を追求するということは・・・」

 また始まった。
 こうなると小一時間は終わらない。私は神妙な顔で頷くふりをして、シャーペンをカチカチいわせながら、もう一度顧客からの最後のメールを読み返した。

---貴殿の製品に不具合はなく、むしろ忠実に当方の依頼に応えていただいたと考えております。しかしながら想定外の事象が発生し、これ以上当方にてこの製品を所持し使用し続けることは不可能という判断に至りました。大変恐縮ではございますが、通販ロボットクーリングオフの規定に従い、契約を解除させていただきます。---

 何がいけなかったのだろう、あのロボットは完ぺきなデキだった。日常のストレスから離れ、無人島で気楽に暮らす金持ちのためのお手伝いロボット。

「あなた、聞いてるの?! 大体あなたはね、真剣味が足りないのよ。この家の経済状況をより良くしていく、夫婦なら共通の目的であるはずでしょ?」
「そうだけど……向こうの希望に忠実に作ったのに、それが気に入らなかった、て言うんだからもう仕方ないじゃないか」
「仕方ない? は! あなたはいつもそうよね」
 妻のこめかみが青白くなる。怒りが頂点に近くなるとこうなるのだ。初めの頃はその色の美しさにうっとりしていたものだったが、この頃はもう見るのも嫌だ。 
「悪いけどあなたのこの仕事からは、その目的を真剣に達成しようという気持ちはうかがえないわ」
 それは違う、と私は思わず人差し指を妻に向けて抗議しようとした。妻は目をむいた。

「あなた、人を指さすなんて失礼よ!」

 今まで見たことのないほど傲慢な顔だった。美しかったはずの妻はいまや鬼か修羅だ。

 ふざけるな。お前はいつも俺を指差して糾弾し続けているじゃないか。
 
 私の中で何かがぷちんとはじけた。

「お金はね……あ、何をするの…・ヴ・・・」

 ヴーーーーーーーーーーとブザーが鳴り、妻の上半身はだらりと前に傾いた。横から見るとちょうど綺麗なUの字を描いている。計算通りだ。私はリモコンのリセットボタンを押すのに使ったシャーペンを机の上に置き、彼女の背中にある主電源スイッチを押してブザーを止めた。
 静まり返った部屋の中で、私は大きな溜息をついた。

 見たことのないほど傲慢、だって? そうじゃない。今までだってずっと同じ顔をしていた。この……美しく賢いしっかり者の妻……ロボットは。何もかわっちゃいない。変わったのは、私の気持ちだ。あの顧客と同じ、完ぺきに望みをかなえたはずなのに満足できない。永久機関を作るのが不可能なように、永久に変わらない気持ちというものはないのだろう。

 私は妻の形をしたロボットの背中からメモリを引きぬき、パソコンのスロットに挿した。

 今度はどういう女にしようか。前の前の妻は、ひたすら大人しく従順な性格をインストールした。数日で飽きた。だから今度は、テレビで国の役人相手にものおじせずハキハキと弁を振るっていた美人の国会議員をモデルにした。こういう女に怒られるのもいいかもしれないと思ったからだ。だが、こいつは人の仕事にさしたる根拠もなくケチをつけ、ただ責めたり貶めたりして自分を優位に立たせたいだけの、他人の話を聞かない・理解しようともしない(できない)、愚かで性悪な女にすぎなかった。

 静かな部屋にカタカタとキーボードの音が響く。次はどんな女にしようか。大人しすぎるのも怖すぎるのも嫌になったから、お笑い芸人のような女にしようか。一日で飽きるかもしれないが……まあ、また組み直せばいいんだし。まったく、人間とは気まぐれなものだ。

 私は溜息をつきながら、PC画面に向かった。プログラミングに熱中しているうち、目が乾いてきた。引き出しから目薬を出し、目に……おっと、こぼしてしまった。キーボードの端に小さなシミが出来る。私は舌打ちをして、洗剤つきの濡れティッシュでふく。これでしか取れないからだ。ロボット用特製機械油はすみやかに目に行き渡り、不快感は解消された。

 まったく、こんな小さなミスや感覚までシステムに組み込まなければならないとは、人間とは面倒なものだ。

<了>

*この物語は、トゥーサ・ヴァッキーノ氏のブログ「星新一をぶっとばせ!」に便乗して書いてみたショートショートの真似事です。


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2010年10月26日火曜日

「帚木」 (七) ~雨夜の品定め 最終話~

雨夜の品定め、恋バナのトリを飾るのは意外や、右近兄・藤田係長(式部丞)でありました。
この面子の中では身分的にも男子力的にも一番下っ端。

「藤田係長、今までダンマリなアンタこそなんかあるんじゃないの?ちょこっと言ってみなよ」

と皆はやしたて煽る。

「自分っすか? いやいやいや……自分みたいな底辺ブサ男に、お聞かせするようなイイ話なんかあるわけないっすよ。勘弁してくださいっす」

と言うのを、頭の中将は穏やかながらびしっと「いいから早く」と責める。
藤田・右近兄は慌てて、困ったっすねえと頭を振りながら、ようよう話し出した。

「まだ学生だった頃っすかねえ。超頭はいいんすけど気い遣う女、てのとなんでかつきあったんすよ。さっきの左馬さんの話にも似たようなパターンあったっすね、そういや。

仕事の話はもちろん何でもツーカー、実生活に必要な心遣いもカンペキ、漢学の才はなまじっかのインテリ博士が裸足で逃げ出すほど、とにかく万事につけてこっちが口出す隙間ナシ!てな女でした。

出会いすか? えーと……自分、バカだったんで、いや今もバカですけど……ある博士に学問を習いに通ってたんすよね。その家には娘ばっかし何人もいると聞いてたもんすから、ちょこちょこ理由を見つけてはチョッカイかけてたんすけど、それを聞きつけた親が盃を手に出てきて

『私が両つの途を歌うのを聞け』

と迫るんす。つまりこれ、「親公認の正しい交際をしろ」てことっすから、正直ちょっと引いたんすけど(笑)さすがに自分の先生すからね、親心を完全スルーなんてわけにもいかなくて。
つかず離れずって感じでつきあってるうちに、何だか知らないすけど向こうさん、えらく自分を気に入って盛り立ててくれて、ピロートークつうんすか?そんなのでもいちいち実になる、仕事に役立つアレコレやなんか教えてくれたんす。

ちょっとしたメールを書くにも、顔文字やらナンやら女の子の使いそうなもんは使わず、難しい漢字や熟語や故事成語なんかもきっちり使いこなして、そりゃもう超超カンペキな文章なんすよ。すげぇなコイツと素直に尊敬したっすね。彼女を先生に、漢詩文(=外国語の作文)なんかも教えてもらったんすけど、まあ自分、ぶっちゃけ出来良くなくて、今もその辺はイマイチっす。

今でもその恩は忘れてないっすけど、いざ妻として長年連れそうことを考えると、自分は学がないっすから、向こうもなにかと粗がみえるようになるだろうなあ、こいつホントバカ!とか思われるんだろうなあとか。それは自分もさすがに恥ずかしいっていうか、惨めじゃないかと。

ヒカル王子様や中将様のように優秀でイケメンなセレブでしたら、逆にここまで何もかもパーフェクト!な奥様でなくてもいいっすよね?

自分はフツーの男っすから、デキる女には憧れるんすけど……うーん超残念すけど、すみませんついてけません(涙)て指をくわえるしかないっす。結局は自分の気持ちがもつか、ご縁があるかないかとか、みたいな感じすかね? ホント男って単純なもんっす」

と奥歯にものの挟まったようなもの言いをして思わせぶりに黙っているので、

「面白そうな彼女じゃん。で、結局どうなった?」

と周りがさらに煽る。でしょ?やっぱ続き聞きたいすよねーと鼻をこすりながら再度語り始めるのだった。

「そんなこんなで、だいぶ長い間行かないでいたんすけど、ふと、どうしてるかなーと思って立ち寄ってみましたら、いつものようにリビングにも出てこず、衝立までたてて超よそよそしいんす。
やっぱ怒ってるのかなー、なんだかなー、来るんじゃなかった自分バカみたい、もしかしてこれが潮時ってやつ?とも思ったんす。
なにしろ頭の良い女すから、普段からギャーギャー泣きわめいて怒り狂うなんてことはなく、世の中そういうもんよねーていつも冷静っていうかー、悟ってる、ていうかー、とにかく恨み言のひとつも聞いたことがなかったんす。

その彼女が、そん時は超焦ってる感じで早口でまくしたてたんす、

『ここ何ヶ月か風邪こじらしちゃってて……なかなか治らないから、熱冷ましのお薬飲んでるの。これがすっごい臭うのよね。だから面と向かって会うのはご遠慮申し上げます。直にでなければ、こまごました事は承りますわよ』

て、何か慇懃無礼っていうか、有無を言わさない感じで。答えに困ったんで、ただ『了解』って言ってサクっと帰ろうとしたんすけど、向こうもあんまりそっけなさ過ぎって思ったんすかね、
『この匂いが消えたころにまた来て頂戴ねー』

って大声で言ったんすよ。
それスルーしてさっさと帰るのも何かね、しばらくはそこに居なきゃいけないかなーとも思ったんすけど、そうも言ってられなくなったんす。何しろ……かぐわしく漂ってくる匂い……・どんだけ?!ありえねー!てくらい凄くて、とにかく逃げ出したくなって
『夕暮れの蜘蛛の振る舞いで

私が訪れることをご存知だったはずなのに

蒜(ひる;にんにく)の匂いの中で

昼間も過ごせというのは

なんということでしょうか



臭すぎっす、意味フメーっす(涙目)』


といい終わるのも待てず、とっとと飛び出していったんすけど、それを追うように


『毎日逢っているような

夫婦の間柄であれば

昼間、蒜(にんにく)の匂いがしたからといって

どうということもありませんでしょ



ホント間が悪いわー、こんなときに来るなんて。ちょっとKY過ぎよねー』


速攻で返歌が来たんす……」



他人事のようにトボけた感じで話し終わる右近兄。
ヒカル王子、頭の中将、他の皆も一斉に

「うっそ、つくってない?」「どう考えてもネタ」「ありえねー」

とさんざんに言って大笑い。
「ホントにいるのそんな女? ドン引きー。このにんにく女に比べたら、鬼と向かいあっとくほうがマシだよな。うえ、何かにんにくの匂い思い出しちゃった。気持ちわる」
(*平安時代の貴族はお香に凝っていたので匂いに大変敏感)
頭の中将は魔除けの爪弾きをして、「とてもリアルな話とは思えないので判定、不能~」と右近兄をくさす。

「もうちょっとマシな話はないのか?」

と責めたてられても、

「これ以上珍しい話、ないっすね自分的には」

と澄まし顔の藤田係長。
そこに再び出たがり・話したがりの左馬課長代理がずずいと身を乗り出し、誰も頼んでないのにまとめに入るのであった。


「男女ともに未熟者は、かじっただけのことをさもよく知っているかのように見せようとしがちですが、困ったことですなあ。

女が三史五経のような難しい学問をまるっと理解してるっちゅうのもいけ好かないことですけど、だからといって世の中の公私のもろもろを、私何も知りませーんできませーん、ちゅうわけにも参りませんわな。
特に勉強してなくても、ちょっとでも才のある人なら自然、誰かの耳にも目にもとまることも、すくなからずあるはずですな。

そういう、漢字をすらすら書けるような人が、何てことない女同士の手紙も、わざわざ半分以上漢字で書きつけるって、嫌味だねぇ。こんなに出来るアテクシ!て感じで。
(*平安時代、女性は主にかなを書き、漢字は男性が業務用もしくは学問に使用、というのが普通であった。漢字は外国語に近かったのだ)

そんなつもりないわーっていっても、なんつうか現代で言うとやたら横文字ばっかり使って、なんでこんなことまで英語? 日本語で言えや!それ自慢?自慢ですか?てな感じの女って、底辺の成り上がりだけじゃなくセレブの中にも意外に多いんですよね。

歌詠みヲタクが、和歌の世界にどっぷりつかって、趣ある古歌を初句から取り入れつつ、TPOも考えないで誰彼構わず・のべつまくなし詠みかける(=そこにいる誰もが知らない古いレアな歌をカラオケに入れる)っていうのも、超迷惑な話ですな。
貰ったら返さないといけませんし、歌ヘタだし面倒臭いし苦手だし、な人だったらヤメテーって感じでしょうし。

社長(帝)も出席する超重要なイベント(節会)、たとえば五月にあるあれ、あのイベント(端午の節会)の時は、朝いつもより早めに出勤しなきゃいけないし、どうしよどうしよ菖蒲もあやめも何も考える暇なーい!て程、慌しいですよね。そんなときに『珍しい根』にかこつけた歌を詠みかけてくる。

九月の宴会のために、まずは難しい漢詩の趣向を、と頭ぐるぐるになってるようなときに、『菊の露』にかこつけて詠みかけてくる。

と、いうような、はあ?今それをわざわざ言う?そりゃデキはいいですよ?後で聞けば面白くも味わい深くもあるでしょうよ。けどね、全然相手の都合もなにもお構いなしで詠む、ほんと気がきかないというかKYって言うか。

万事につけて、何故そうするのか、今それ必要?後でいいんじゃ、などTPOを考えて振舞うことができないようでは、気取ったり風流ぶったりせんほうが無難ですな。
総じて女というものは、知っていても知らん顔で流し、言いたいことがあっても一つ二つは抜かして言うくらいでいた方がいいのではないですかねぇ」
左馬課長代理がくどくどと語り続ける間、ヒカル王子は、ただ一人の面影を心の中に思い続ける。

「ああ……やっぱりあの人こそ(藤壺の宮)……過不足ない、完全無欠にパーフェクトな女性だなあ…」

父である社長(帝)の寵愛も厚い彼女、手が届かない・許されないからこそ余計に胸キュンする王子。

話の方向はあっちやこっち、いつ終わるともなく続き、挙句の果てにはシモネタ系、落ちるところまで落ちつつ、「雨夜の品定め」の長い夜はやっとのことで明けたのであった。

<雨夜の品定め終了>

「ふあーあ、よく寝た」

「侍従ちゃん、ヨダレ」

「あ」

拭きふき

「それにしても、右近ちゃん」

「なあに侍従ちゃん」

「男って、くっっっっだらないこと喋ってんのねえ。一晩中ずっとこれかよ!って感じ」

「あら侍従ちゃん、あたしたちだって似たよなもんじゃない。誰と誰が別れたくっついたとかいう噂話と、上司とか仕事とかの愚痴、イケメン男子の話、今イケてる化粧法とか香水とかファッションとか、今度のイベントとか……あら、けっこうあるじゃん」

「でしょ。女は割と話題が広いわよ。浅いけどさ」

「この場合しゃあないんじゃない?あのメンツで漢詩の話はありえないっしょ。女の話だって、下に合わせないと、場がシラケるってもんじゃない。王子や中将様の奥様なんて、絶対うちの兄や左馬親父には手の届かない高級な女性なんだからさ」

「なーるほど」

「ま、だからこそ男の本音が見えるってもんよ。上も下もなくね。結局、女は程よくバカがいいってこともさっ」

「っていうかさー……言っていい?右近ちゃん」

「何」

「にんにくの人さ、あれワザとじゃない?」

「あ、侍従ちゃんもそう思った?だよねー。実はさ、うちの兄貴にはもったいないくらい、って思ってたのってその人なのよー。私も以前職場が同じでさ、たまたま知ってたんだけどー、あったまいいしさー、何でも出来るし気もきくし、何故にこんな人があのバカ兄とつきあうことになったかなーと思ってたんだけど、やっぱりねえ、案の定捨てられてやんの。元々、他にいたんだよね。知らぬはバカ兄ばかりなり」

はー、とため息をつく右近。

「ちなみにさ、左馬オヤジの話も、アヤシクない?めっちゃ忙しいときに全然関係ない歌詠みかけるって、どう考えてもイヤガラセでしょ」

「侍従ちゃん、今日はやけに冴えてるじゃない♪」

「んふふ♪」

男ってバカだよねー、そーだよねー、といいながら墨をすったりしている二人であった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「雨夜の品定め」実は超モテ系と非モテ系の対談
当然ヒカル王子にはまったく役立たなかった……かというとそうでもなかった。
超モテ系が絶対に思いつかない非モテ系ならではの発想は、 超絶モテ男であるヒカルにも影響を与えずにはおかなかったのである。

それはまたのちのお話♪

<つづく>
参考HP「源氏物語の世界

2010年10月25日月曜日

10月に読んだ本 その一

図書館で大量に借りてきた本の数々。涼しくなったので読書もはかどるというもの。けっこう忙しい日々なのだがそういうときに限って読みたくなるのだ。


「流星ワゴン」重松清

不慮の死を遂げた親子が乗るワゴン車に、生きていたくなくなった人たちが吸い寄せられる。ターニングポイントはどこにあったかをそこで見せられるのだが、いちど決まった未来は簡単には変えられない・・・・・
変則なタイムスリップもの?未来が基本的には変えられないというのは宮部みゆきの「蒲生邸事件」と同じ。「バックトゥザフューチャー」のように都合よく何もかも解決はしないところが哀しいが、そこは重松さんなのでどこか明るく、けして陰々滅々とはならない。美しくロマンティックな世界なのだが、そこにハマるかどうかは読む人の状況によるかなあ、という感じ。
ひとつだけひっかかったのは主人公の妻かな。同じ女でもこれはまったく共感できん。



「名もなき毒」宮部みゆき

「誰か」の続編。だが読んでいなくても十分楽しめる。テンポも良くて一気読みしてしまった。
心ならずも逆玉の男になってしまった、心優しい主人公が今回もいい味を出している。
惜しむらくは原田さんの毒が強すぎて、他の「毒」がかすんでしまったこと。

「正しく生きようと努力し、ある程度達成している人」の存在自体が、思うようにいかなくて焦れる人の怒りの炎を増幅してしまう、というのは結構ショッキングだった。美しいもの、正しいものが毒を放出する触媒に成り得るというのは怖い話だ。



「光の帝国~常野物語~」恩田陸

中学生の娘が借りてきた。
実は長編は「夜のピクニック」くらいしか読んだことがなかったが、やっぱり面白かった。いろんな事情で離散してしまったある能力をもつ一族?が、次第に引き寄せられ同じ場所に収束していく様は、読んでいて楽しい。
ただ一族を「迫害」するのが旧日本軍、てところが個人的には違和感。脱走兵ということでやってきた若者が実はスパイ、言うことを聞かないと許嫁の村を焼くぞと脅されていた・・・というのは荒唐無稽すぎる。そんなところに人や兵器をさく余裕は当時の日本にはないだろうし、村ひとつ焼いたらさすがにバレるだろう。ていうか、普通の人間が隠し事しても常野の人にはバレちゃうのでは? などと野暮なツッコミはせず(笑)素直に楽しみましょう、うん。

2010年10月22日金曜日

10月に観た映画 その三


「シャーロック・ホームズ」ガイ・リッチー監督

ホームズ役のロバート・ダウニーJr.が観ているうちに阿部寛に見えてきて笑えた。真面目な顔で突拍子も無い行動に出るあたりが「トリック」の教授に重なるのかも。
さらに、鳥打帽被ってない、身なりを構わずうだつのあがらなさそうなこのホームズは金田一耕助を思わせる。もしかしてもしかしなくても、横溝氏は狙ってたか?まあ、フケは落としてないけど。
ストーリーは「ダ・ヴィンチ・コード」とオウムの事件をまぜくった感じだろうか。オカルトにだまされるな、大抵のことは科学的に説明がつく! という信念のもとに動くホームズとワトソンの二人の活躍は清々しい。

つくづく思うが、欧米は常々こういうカルトに悩まされ続けているのだろう。続編作る気満々なラストあたりで、その闘いは現在進行形なのだと実感。
まあまあ面白かったが、CGは極力やめようよ・・・と思った。なくても面白いもの作れるだろう、この監督なら。

2010年10月21日木曜日

箒木(六) ~雨夜の品定め~

さて、お次の語り手はイケメン・モテ男、頭の中将

家柄こそヒカル王子には及ばないが、容姿端麗・頭脳明晰・センスも良くお洒落で女性にも人気、今をときめく左大臣家の総領息子として生まれ何の苦労も屈折も知らずに育った真正のお坊ちゃまくんである。

馬鹿な男の話をしよう

と、超のつくナルシーな言葉も似合ってしまう美しい横顔。

内緒で見初めた女の子がいてね。(当然)向こうもまんざらでもなく、つきあうことになった。


最初は(カルーイ浮気のつもりで)きっと長続きしないだろうな~と思ってたんだけど、つきあう内にああ超可愛いなぁこの子、合間合間に会ってるだけなのに一向に気持ちが離れていかない、これは本物かも!なんてね。
完全にマジ恋モードに突入したもんだから、向こうもすっかり私を頼りにしてきたんだけど、そうはいっても本妻いるからねー、何でも彼女を優先てわけにもいかない。
あーこりゃいろいろとムクレられることもあるだろうな~と予想してた。
なのに彼女は全然気にしないふうで、行く回数が少なくても「フーン私はその程度の女なんだねー」などとスネることもなく、ただ朝な夕なに私のことを思ってます、て感じ。
あまりにいじらしいその姿に思わず、このままずっと頼りにしてていいんだよと言っちゃったりもしたんだ。


彼女には親もなく、本当に心細い様子で、何かにつけてただ私だけが頼りと思っていてるのがまた可愛いの可愛くないのってもう。とにかく大人しくてほわわん、としているものだから、すっかり安心しきってほったらかしちゃったりもしたんだけど、細く長く続いてたんだよね。


だけど、こういうことって何故かバレちゃうんだよね。私の行いをよく思ってない辺りから……本妻だよ、大きい声では言えないけどね。怖いんだよね……キッツイ言葉を人づてに言われたらしい。随分後になってから知ったんだけど。


そんな酷いことがあったとは夢にも思わず、心では通じ合ってる♪ なんて能天気にメールすら出さないでいたから、彼女もさぞかし心細かったんだろうね。その頃には子どもも産まれていたからなおさら、思い余って撫子の花を折り添えた手紙を寄越してきた

うっすらと涙ぐむ頭の中将。

(てか、子どもまでいたんかい!)
と周囲は心中密かに激ツッコミ。
「それで、その手紙には何と?」

さすがのヒカルも興味深々、平静を装いながら質問。

いや、特に何も……ていうか全然知らなかったからね。はぁ? どうしちゃったの? て感じ。

『山のあばら家の垣根は荒れても


折に触れ


哀れと思い出してください


せめて小さな撫子の涙を』

何だか寂しい感じの歌だったから心配になって、久しぶりに会いに行ったんだ。
彼女は、いつものように無邪気なんだけどどこか翳があって、何か悩んでいるような雰囲気だった。
露でしっとり濡れたあばら屋で、競いあうかのような虫の音に囲まれていると、まるで物語の中の世界にいるようだったよ。


『咲き乱れる花の色は


いずれも分かちがたいが


やはり常夏に咲く花が


一番だと思う』

娘の撫子はさておき、まず母親、彼女のほうの機嫌を取るべきだろうと思ってね。
ほら、『塵をだに』って言うじゃないですか……ちょっと、ダニじゃないですってもー。ヒカル、説明して

「凡河内躬恒の『塵をだに据ゑじとぞ思ふ咲きしより妹とわが寝る常夏の花』ですよ」

ありがと♪ まあ、ぶっちゃけ『僕たちこんなにラブラブ♪』て歌にかこつけて、『いろいろあっても君が一番さ♪』て言ったわけだ。

で、彼女のお返し。

『塵を払う袖も


涙に濡れている常夏に


嵐の吹きつける秋までが来ました』

かぼそい声でそんなこと言いながらも、本気でムクレてるようにも見えない。
涙をぽろっと落としたりしても、嫌だわ、久々だからって泣いたりして恥ずかしい……て感じで何気なく紛らわして誤魔化し、何も変わりない、元気でやってますわなんて笑ってみせる。
今考えれば相当に無理してそうしていたんだろうに、私は何も気づかず、愚かにもすっかり安心してしまい……また飛び飛びに逢っているうちに、彼女は跡形もなく消えうせてしまった。

まだ生きているのなら……一体何処でどうしているのやら。

ストーカー?!て思うほどまとわりついてくるウザイ女だったら、こんなことにはならなかった。
マメに通ってやらないと不平ダラダラの女だったならむしろ、正式に妻の一人として長く面倒をみてやるようにもなったかもね。


あの撫子(娘)も可愛い盛りだったから、何とか探し出そうと思ったんだけど……今にいたるもわからない。


これこそ、左馬さんの言う「悪感情を腹の中に溜め込んでいつか爆発する女」の例じゃないかな?


表向き平気そうにしてその実、わんさか内に抱えてる。愛してるという気持ちもはっきり伝えないから、イマイチ男に通じない。なんかやるせないよね。片思い状態じゃん。
今は私もだんだんと忘れかけてはいるけど、あの女のほうは思い続け、折々にひとかたならぬ胸焦がれる夕べもあるんじゃないかなあ。
やっぱり永続きのしない、ライトな縁ってやつだったのかもね。


さっき話に出てきた「嫉妬深い女」も、思い出とするぶんには忘れ難いけど、さて妻とするにはウザ過ぎるし、悪くすると、完全に嫌いになっちゃうかも。
いくら琴の音が素晴らしくても、浮気女は困りものだし、ふわふわして頼りない女は可愛いけど、何を考えているのか常に疑わざるをえないとなると……もう、どれをどうとも決められないよね。
世の中そんなもんだ。
何がいいのやら悪いのやら。
何処をとっても良いことばかりで、難点の一切ない女なんていないんだよね。
かといって吉祥天女のような折り目ただしいパーフェクトな女ならいいかというと、これまた堅苦しそうで、人間らしさが感じられない。面白くないよねぇそんなのも

「そうですなぁ」

「本当に。多少欠点があるからこそ面白いものなんですな」
どっ、と笑う男ども。

……

「ねえ右近ちゃん」

「なあに侍従ちゃん」

「なんか、ゲンメツー。頭の中将さんて、ヒカル王子の次に好きだったんだけどー、えっらい自己チューなヤツじゃん! 浮気しまくって本妻さんや彼女を悲しませた癖に、何大騒ぎしてんのー? なんて自分だけ余裕かましちゃってさ。超いけずって感じー」

「ふっ、今ごろわかったの侍従ちゃん。お子ちゃまね」

「かわいそうだよねえ、この常夏のヒト(もらい泣き)。子どもまでいるのにこんな扱いされて。好きな男に辛さをけどらせない、けなげな気持ちをなぜわからん、中将!」

「あ、呼びつけ」

「いいのよっ!男の身勝手炸裂の中将に、天誅うー!」

「侍従ちゃん、王子もね」

「え?」

「なんでもない。さ、最後はうちのバカ兄の話」

「……ぐー」

「寝るなっ!て、その反応であるていど正解だけどね。あまりにくっだらなくて笑えるから、話のネタに聞いときなよ。あとの話の伏線でも何でもないからさ、あとくされないよ」

「ふーい」



<「雨夜の品定め」最終話につづく>


参考HP「源氏物語の世界

2010年10月19日火曜日

10月に観た映画 その二

最近観たい映画がなくて・・・というか劇場に観に行く暇が微妙にない。専業主婦なのになぜだー。
というわけで、レンタルDVD。

「沈まぬ太陽」若松節朗監督

長い映画。公開時は休憩時間まであったほど。しかし原作の長さ、重厚さから考えるとこれでも足りないくらい。特に後半はバタついて、原作読んでないと何のことやらわけわかめ状態になるかも。特に渡辺謙演じる主人公の敵役である行天(三浦友和)の腹黒さがいまひとつだったのが残念。キャスティングは間違っていないと思うが、いかんせん時間が短すぎた。

だが御巣鷹山のあの事故、無数の白い棺が並ぶ体育館内の光景、墜落前の機内の状況、事故後の遺族の生活……をストレートに映像化したのは初めてのことであり、監督やスタッフはもちろん演じる俳優ひとりひとりが相当の緊張感を持って自分の仕事を行っているのが感じられる。
あの事故は当時学生だった私にも衝撃だったが、人の子の親になった今はさらにそのつらさが骨身に沁みる。息子夫婦と孫をいっぺんに喪い、妻とも死に別れお遍路に出る老人はフィクションだそうだが、語る言葉は遺族の心をも打ったといわれる。主人公は手紙にこう書く「自分はひどい目にあった、つらかったと思い悩んだり怒ったりしていたが、あなたの味わった苦しみや悲しみに到底追いつくことはできない。今までの自分を恥ずかしく思う」。
感動したとか涙が出たとか、浅薄な感想を述べることを許さない、両者の心持ちだと思う。

過去記事:「沈まぬ太陽」山崎豊子を読んだ

2010年10月18日月曜日

閑話休題(一)

「雨夜の品定め」もいよいよ終盤ですが、ちょっと休憩♪ しまして、源氏物語に対して私が思っていることもろもろを書きつけておきます。

はりめぐらされた門の中、きわめて狭い世界で生きている貴族達。

宮廷づとめは結構ハードだったらしいし(夜勤あり)、
恋愛がなかなか思うようにいかないところも、
子どもが親の思う通りには育たないってことも、
優雅に見える暮らしが「外の人たち」によって支えられていることも、
今の都市生活者と非常によく似ている。
違うところはといえば、「観念」みたいなものがはっきりと生きていたということかも。
目に見えるリアルより、目には見えない「意味」のほうがより重要視されていた。

例えば陰陽五行説。
完全に信じている人はいなかったかもしれないが、例えば現代でいう血液型や星座の話よりは、一般に信憑性があった。
「結界」という言葉もバリバリに生きていたころ、「方向が悪い」といわれれば「方違え」に走り、「神の通り道になっているから」と「物忌」に籠もる。

だがそのさまざまな「結界」の隙間を縫っていろんなことが起こる。それはもう神様も物の怪もびっくりである。

例えば御簾。
単なるすだれである。

物理的にはぱっと払えば終わり、のはかない隔てなのに、向こうにいる相手から入る許可をもらうまで入れない。(ここですでに呪術っぽい。てか明らかに結界だろうコレは)
一見さんお断りはデフォ、
ムリヤリ入れば犯罪人扱い、
狙いがあからさまなのも無粋の極み「お育ちが悪いんやおへんか? おととい来ておくれやす」。

どうする?(涙目)
 
男は悩む。入ってもいーい? とストレートに聞くのも子どもっぽいし、あまり婉曲だと相手に通じないかもしれない。 あまりに口説くのがうますぎても「こいつチャラい」と思われるかも。
女も悩む。あまりあっさり受け容れると、世間体も悪いし、相手に軽い女と思われるかも。かといって意固地に断り続けて本気で諦められちゃっても困るのよねえ。
はてさて。

ということで丁々発止の和歌のやりとりだ。それはもう一種のバトルである。
ルールに則り、相手の持ち札を慮りつつカードを切り、時には反則すれすれの技も駆使、見事ゲットできるかどうかを競う(お互いに) 、非常に遠まわしなバトル。

さらに、現代と違うような違わないような部分に「身分格差」がある。
一般に身分が上になればなるほど、行動の自由度は狭まる。
深窓に育つ女性などは、ひとたび年頃になれば、御簾の奥深く入って、お側仕えの女性にしか姿をみせない。異性のきょうだいはもちろん父親さえ、おいそれとは顔を合わせなくなるのだ。
これは男性にとっては神秘でありロマンの対象となる。女性とお近づきになる道がタイトであればあるほど、そこをかいくぐって起こした出来事はささいなことでもドラマになりうるのである。

その意味でも、源氏物語はとてもよくできた話である。
男性が書いた部分があるのではないか、と言われているのもよくわかる。

だけど私は、絶対作者は女性だと思う。男性なら恥ずかしくて(またはどうでもいいと思って)書かないような描写がわんさかと出てくるからだ。
さて。
戯言はこの辺にしておこう。

次はイケメン頭の中将の恋バナ、こうご期待である。

2010年10月14日木曜日

箒木(五)~雨夜の品定め~

左馬課長代理の、かなり自己チューな恋愛譚はおかまいなしに続く。

「先ほどの『浮気相手』の女のことなんですがね。

これが人品卑しからず、気配りもバッチリ、和歌を詠ませても、文字を書かせても、琴を弾かせても、けっこうな腕前でして。ルックスもそこそこよかったもんですからかなり入れ込んで、再々会っておりました。もちろん元カノには内緒で。

元カノが亡くなってからは、どうしようかな、悪いかなとは思いつつ、それでも死んじゃったもんは仕方ないですからね、自然デートの回数も増えていったんですが……慣れてくると、それまで魅力だった派手で色っぽいところなんかが、何か裏があるんじゃないか、なんとなく信用ならない、なんて思われてきまして、ちょっと引き気味に会ってたんですよね。
そしたら案の定、二股かけられちゃってて。

九月でしたか、月の綺麗な夜に、退社しようと車に乗りましたら、顔見知りの社員が乗せてってくれといってきたんです。その晩私は○×部長の家に呼ばれていたもんですから、そこまででもいいかと聞きましたら
『えへへ、実は彼女んちに寄るんです。何か今夜はそういう気分なんですよねー』
なんて言うんですよ。

例の彼女の家というのが、たまたま通る道筋にあたっていまして、塀の崩れかけた所から池の水に月が照り映えるのが見えました。月さえ宿る場所をこのまま通り過ぎるには惜しい、といってヤツは降りていったんです。
いやもう勝手知ったるって感じでしたね。
この男、そわそわしつつも正面の門を入り、玄関先のすのこの上に腰掛けて、月を眺めたりなんかしてるんですよ。菊の花が一面に、色とりどりに咲き乱れ、紅葉は吹く風のなか競うように舞い踊っている、その様子はなかなか見ごたえのあるものでした。

男は懐から横笛を取り出して吹き鳴らし、その合間に『月影も良し』などと謡うと、きっちり調律したらしい和琴の音が見事に合わせてきました。まあまあいい感じでしたね。イマドキの華やかな琴の音色が、家の奥からひかえめに柔らかく聞こえてくる様子は、月の清らかさに似つかわしい気もしました。その男はいたくご満悦で、簾の向こうにいる女に

『庭の紅葉を踏み分けた跡こそ見えませんが、あなたのことだからきっともう他にいい人がいらっしゃるんでしょうね』

などとすねてみせた。菊を手折って、

『琴の音色も月も

宿るところなのに

つれない心を

留め置くことは

かなわなかったようですね


今までほっといて悪かったのやら悪くないのやら』

などと言って、

『もう一曲お願いできますか?熱烈な聴衆がいるのに弾き惜しみなどしないでくださいね』

などとからかうと、女は気取った声で、


『あなたのほうこそ

その笛も冷たい木枯らしの方がピッタリ合うんじゃない?

どうしたらあなたを

留め置くことができるのか

わたしにはとんと見当もつかないわ』

と、聞くにたえない睦をいいあう始末。


……
(♪乱入♪)

「ちょっと待ったあ!」

「今度は何よ、侍従ちゃん」

「どこが『聞くにたえない睦言』なのか、ワカリマセーン、先生!」

「やあねえ、侍従ちゃん。こんなこと適当に受け流すものよ。えーとね、なんつったらいいのか……『もう一曲お願いします』ってつまり、またお願いしまーす、ってことよ」

「何を?」

「ふっ、お子ちゃまねえ。侍従ちゃんたら」

ため息をつき肩をぽんぽんたたく

「とりあえず今日お泊まりしていいかな?ってこと。言わせんな恥ずかしい」

「おおお。で、女のほうは、断ってんの?それともオッケー?」

「多分、というか絶対OKだよね。でもすぐにどうぞどうぞって入れるのはシャクじゃん?結構長いことほっとかれてたみたいだし。じらしてんだよね。男にもっといろいろ言わそうとして。そこがオトナの駆け引きってもんよ」

「へぇへぇへぇ、メモメモ♪」

(♪乱入終了♪)
……

女は私が車の中でちっくしょーと歯噛みしてるのも知らずに、今度は楽器を変えて、本格的にかき鳴らし始めました。上手く弾いてはいるんですが、それが他の男のためと思うと、もうとてもいたたまれない感じがしましてね。

たまーに話すだけのOLでも、色っぽくて雰囲気あるコなら、もしかしていつかナントカできるかも!なーんて思いますでしょ。

たまーに通うだけの相手でも、一応きっちり妻とするのであれば、あまりにフラフラと色っぽすぎるのも困る、とちょっと嫌気がさしてしまったので、この夜を境にもう通うのをやめてしまいました。


この二つの例を考え合わせますに、若い時のことといえ、あまりに派手な女というのはちょっと心配って感じでしたね。ましてや今後は一層警戒しなければ、と思います。

萩の露のように触れなば落ちんといった風情、玉笹の上に乗った露のように手に入れたと思うと消えてしまうような、そんな女はそりゃあオシャレでイケてて魅力的でしょうけど、やめといたほうがいいですよ。今わからなくても七年ぐらいのうちに絶対わかりますって。私のようなしがない親父が言うのもなんですけど、男好きのする、過剰にオンナっぽい女にはお気をつけてくださいねー。絶対浮気して、こちらの評判をも地に落とすことになりますから」


したり顔で忠告する左馬課長代理。

頭の中将は例によって素直に頷き、

ヒカルの君は、そういうもんかねえ、と苦笑する。

「ま、どっちにしても、けっこうイタイ話だよね」

「いやいや本当にお恥ずかしい」

照れる親父(だが満足げ)を囲んで皆どっと笑う。


……
(♪乱入♪)

「ねえ右近ちゃん」

「なあに侍従ちゃん」

「このオヤジ、自分から別れたーみたいに言ってるけど、逆じゃないの? 最初からその月の宿るなんちゃらの男が本命でしょどう考えても」

「そうねー、向こうにとってはそれこそ単なる浮気相手って感じだよね。てかこのオヤジ、ずっとこの二人を車の中から見てたって、キモくない?」

「超キモい! ドン引きだよねー。なのに女っぽくて魅力的な女は皆尻軽みたいなしっつれいな言い方してるしまったく。今後は一層警戒しなきゃ、なんて心配しなくても、もう相手にされませんから!残念ー!」

「でもこの親父、絶対またこういう女に引っかかる、と思う人ー♪」

「はーい」「はーい」「はーい」

「この部署のOL全員一致で、けってーい……て、私たちだけしかいないじゃん」

「ところでヒカル王子さー、つまんなさそーだねー」

「そりゃそうでしょ。めっさモテ男なのに、なにが悲しくてあんな親父のしょーもない長話をふたつも聞かなきゃいかんのだ、って思ってるよきっと」

「わはは、そうよねえ。その気になりゃいくらでもとっかえひっかえできるのに、あえてしないってのが本当のモテってもんだ」

「大体ヒカル王子と何かの間違いでつきあうことになったら!」

「いやーん♪ヤバーイ」

「浮気なんて、するわけ、ないじゃないのおおお!」

「右近ちゃんに一票ー!」



巻き上がる御簾。

「貴方たち、にぎやかだけど仕事は?」

「い、今やってまーす」

「もうすぐ終わるところでーす」

「蕎麦屋の出前じゃないのよ」

「はーい」「はーい」


<つづく>

参考HP「源氏物語の世界

2010年10月12日火曜日

箒木(四) ~雨夜の品定め~

遠い目をして語り始める左馬課長代理。

「まだほんのぺーぺーのヒラ社員だった頃、つきあっていた女性がおりましてね。いえいえ決して美人では。当時はまだ結婚まで考えてなかったですから、若気の至りでついつい他に目移りも、ねっ?」

わかるでしょ、いひひと周囲に同意を求める左馬。完全にオヤジである。

「ところが浮気がバレたときの、彼女の嫉妬がすごいのなんのって……。

ほとほとやんなっちゃいましてね、もうちょっとおっとり構えられないもんかなあと。
とにかく疑り深いしシメツケは厳しいし、たまらなかったですね。
反面、こんな男に愛想もつかさず、一途に愛してくれているのは有難いとも思ったし、何だか可哀想な気もして、結局元の鞘に戻ったりしてたんですけどね。

どんな女だったか?

そうですね……恋人のためなら、不可能をムリヤリ可能にするというか・・・イケてない女と思われたくないがために苦手ジャンルでも超努力してこなす、て感じの勝気な女でした。

つきあいが深くなるうちに、多少こちらにも合わせてくれるようにはなりましたし、美人ではないことを気にして、化粧を工夫したり、身だしなみに注意したり、と可愛いところもありましたが、根本の性格というのはついに変わりませんでした。

当時私は思いました。
こんなに嫌われまいと始終気にしている女なんだから、ちょっとビシっといってやって、度の過ぎた嫉妬心とキツすぎる性格をどうにかできないもんかと。このままだとオマエとはやっていけない、別れると脅せば、考え直すんじゃね? 

そこで私は、わざとつれなくしてみせた。

彼女は例によって、私に女が出来たものと思いこみ、怒り狂って恨み言のあめあられです。
その時こういってやったんですよ。

『もう沢山だこんなこと! あーあ終わりだ終わり!好きなだけ俺のことをメタクソ言ってればいいさ。俺はもう知らん。
ま、そのジェラシー癖を直して、少々のことは受け流せるような女になるってんなら、望みはあるかもなっ。俺が人並に出世して一人前になったら、もう一回結婚を前提としてつきあってやらなくもないけど?』

などと、ここぞとばかりに調子こいてまくしたてたら、彼女ふふんと笑って、

『わかってないわね。
アンタが何もかもイマイチで半人前なのは問題じゃないのよ。一人前になるまで待ってくれというなら、ええ、待ちますとも、いっくらでもね。
だけどあっちにフラフラこっちにフラフラ、いったいいつになったら浮気癖が直るのか、一生直らないんじゃないかしらん、て不安を抱えたまま年を重ねていくのはホントにしんどいもんよ。
仰るとおり、潮時なのかもね、私たち』

と憎まれ口をたたくので、こっちもつい腹立たしくなって言い返しますと、彼女も黙って引っ込むタマではない、指を一本引っ張って噛み付いてきました。私は大げさに

『あーああ、指まで食いちぎられちゃって、こんなじゃもう会社にも行けやしない。ずうっと下っ端のまま、出世も出来ないかもなあ。もう世を捨てて坊さんにでもなるかなマジ』

脅しつけたうえ

『終わったな。じゃ』

と言い放ち、噛まれた指を折り曲げてすたこらと去りました。

<<男の捨て台詞ポエム>>

指折り数える愛の日々

お前の折った一本が

そのままお前の悪い点

恨むなよっ


<<女の恨みごとポエム>>

辛さを心に秘めながら

数えた指はひとつ折れ

これが別れる折なのね

さすがの彼女も最後には涙目でした。

そうは言っても、本気で別れるつもりはなかったんですよね。なのに、意地で音信不通のまま、相変わらずフラフラ遊びほうける日々でした。

そんなとき臨時出勤がありまして、これがまた霙の降る寒い夜でしてね。
退社後三々五々に散っていく同僚を横目に、さて自分の帰るところはと思うと、やはり元カノの家以外にはないんですよ。

会社の宿直室で泊まるというのも気乗りがしないし、だからといって今カノの家もちょっと面倒臭い・・・て感じで。
そうだ元カノは今頃どうしてるだろう、様子を見るだけでもと雪を払いながら何気に行ってみました。

なんとも決まりが悪かったんですが、いくらなんでもこんな寒い夜に追い出すようなことはしないだろう、数日来の怒りも解けるかも、と思い戸をたたくと、ムーディーな間接照明の下で、着替えの服も用意万端、部屋もぴしっとととのえてあり、明らかに私の訪問を待っていたようなふしがありました。
ふふんやっぱりね、と得意になったものの本人がおりません。残っているお手伝い連中に聞くと、

ご実家のほうに今夜は帰られています』

という。
顔も見せないうえに書置きも何もなし、ただそっけなく事務的な対応であったので、すっかり拍子抜けしました。

もしやあのとき悪口雑言を吐きまくったのも、自分を嫌わせて別れるためだったのかそうなのか? などと思ってへこみそうになったのですが、用意してあった着物が色合いも仕立ても素晴らしいものでしたから、いやいやきっと別れた後でも私のことを考えていてくれたのだ、と嬉しくなりました。
私のほうはこれで、まだ望みがある、まったく愛想をつかされたわけではないんだと思い、何とかよりを戻そうといろいろ言ってもみたんですが、向こうは完全に別れるでもなく姿をくらますでもなく、無視するでもない。

『わかるでしょ、このままだとまた同じことよ? あなたがすっかり浮気癖を改めて落ち着くのなら、また一緒に暮らしても良いけど』

なんて繰り返すだけで。

そうは言ってもねえ、そんなにすぐハイそうですねと収まるもんでもないじゃないですか。オマエの方こそ改めるべきとこないか?とも思って、

『もう浮気しない。ゼッタイ』

とはっきり約束することもせず、強情を張っていましたら、彼女は本気でウツに入ったのか、とうとう亡くなってしまいました。しまった、シャレになんない、と猛省しましたね。
生涯を添い遂げる女性なら、あの程度でちょうどよかったのになあ、と今でも思います。
ちょっとした趣味ごとや実生活のイベントでも、それなりに相談しがいがあったし、染め物や縫い物は昔話の龍田姫か織姫か、というくらいの腕でしたし、本当に何の不足もなかったんですよね、今考えると」

……

(OLたち乱入)

「はぁー? 何ソレ、ありえなーい。サイッテー」

「でっしょー。あのセクハラ親父、ホントよっく言うよねー。顔合わせるたんびに必要以上ににじり寄ってきてさ、今日はやけに綺麗だね、あ、香水変わった? デートでもすんの? 彼氏どんな人? とか、いちいちいちいちウザイのなんの。とても反省してるとは思えないよ、普段の言動みてるとさ」

「彼女かわいそうじゃん(泣)正当なのはこっちなのにさ。二股三股かけられたら怒るの当たり前だろっ。挙句の果て死んじゃうなんて……ひーん、もらい泣き」

どーせこんな日には行くところもなくてウチに来るだろうって、すっかり行動パターン読まれ切ってんのに、あの程度でよかったーなんて超失礼よね。そういうオマエがどんだけの男なんだっつうの」

「ゼッタイ、とっくに愛想つかされてたんだよ!こんな奴に未練なんてありえなーい、より戻すなんて気さらさらなかったと思う、彼女。ただ家も知られてしストーカー化されちゃ困るからテキトーに相手してたんだよ」

「浮気親父に、天誅うー!」

「ところで右近ちゃん」

「なあに侍従ちゃん」

「王子はこの話、どう言ってたの?」

「王子はね、黙って聞いてるだけだったって。中将様がいろいろ突っ込んでたって。こんなふうに」

……

「織姫並みの技量ということはさて置いて、織姫・彦星の永く添い遂げる間柄♪ てところだけはあやかりたかったもんだねえ。

なるほど、龍田姫並みの染色の腕前はたいしたものだったんだろうけど、花や紅葉も季節にふさわしい微妙な色かげんをちょっとでもはずすと、台なしになっちゃうもんだしね。
だからこそ難しいんだよねー」

……

「右近ちゃん」

「何」

「後半、意味わかんないんだけど」

「んー、中将様ってイケメンでオシャレで素敵なんだけど、ちょっと気取りやさんだよねー。あのね、つまりは女がもうちょっと柔軟になればよかったんじゃない?て言ってんのよ」

「はあーーーーーーー?」

「私が言ったんじゃないって。ふっ、だから言ったでしょ、オトコの本音なんてそんなもんよ所詮」

「王子様も?」

「多分ね。おきのどくだけど」

「ひーん(涙)」

……


「ところでですね、やっぱりヒラの頃につきあってた女がいるんですが……」


(OLたちと他の男どもの心の声)
 「まだ、あんのかよ!」
「長げーよ!」
「やっぱり全然反省してないじゃん!」

左馬”セクハラ親父”課長代理の話はまだまだ尽きないのであった。

<つづく>

参考HP「源氏物語の世界」

2010年10月11日月曜日

10月に見た映画 その一

ひっさびさにレンタルDVD。しかも新作。つまりミーハー。

「シャッター・アイランド」マーティン・スコセッシ監督

えーとこれはネタバレになると全然駄目なのでいろいろ書くことは控える。控えるがしかし、なんというかいろいろ思い出したなー。雰囲気まんまツイン・ピークス。シャイニングもちと入ってるかも。とにかく監督がスコセッシなので、一筋縄ではいかないぞオーラがむんむんと立ち込めていて、目が離せない。家で観てたのにトイレに立てなかった(泣)。
ちなみに私、れお様はまったくタイプではない。世間ではイケメン俳優ということになっているが、今までただの一度もそう思ったことがないんである。ファニーフェイスだよなあどう考えても。なんかこう、強くて悪い男を演じていても、「こんなガキ臭い顔して何やってんの」と思ってしまうのだ。私の中では長年トムクルーズと同じ箱の中に入っていた(トム君は、トップガンのビーチバレーからイメージ不変)。
で今回はどうだったかというと、やっぱりカコいいとは全然思えなかったのだが、時折見せる表情にジャック・ニコルソンに通じる狂気が感じられてびっくりした。なんだ?もしかしてれお君、そのうち化けるかも?
なんてったってあのスコセッシ様に見込まれているれお君である。あと数年もしたらマーロン・ブランドやジャック・ニコルソンもびっくりのカコイイ親父俳優(褒め言葉である)になるのかもしれない。

映画の良し悪しはともかくとして、そこにちょっと感動した私であった。
ちなみに私の中でのスコセッシ映画イチオシはこれ、「エイジ・オブ・イノセンス」。
いわゆる「男受けのいい女(ウィノナ・ライダーが演じている。キャストもナイスだ(笑)」の嫌ったらしさをこれだけセキララに描いた映画は他に知らない。あったら教えてほしい。

2010年10月6日水曜日

「帚木」 その三

男性たちによる雨夜の品定めはいまだ続いておりますが、
なんとなくこの辺の会話はOL二人のほうがしっくり来るのでは?と思いましたので、現役平安ガール右近ちゃんと侍従ちゃんに、割り込んでいただくことにします。

今後も突然乱入アリってことで、ひとつよろしくお願いいたします(ぺこり)。

「ねえねえ、右近ちゃん」

「なあに侍従ちゃん」

「ぶっちゃけ、結婚って考えたことある?

「いきなしストレートにきたわね。何を聞きたいわけ」

「いやあ、恋愛と結婚って、何か別じゃないかなーなんて最近思ってて」

「侍従ちゃんたら(クス)」

 当然じゃないの、というように鼻で笑う右近。

「フツーにつきあってる分にはよくても、一生つれ添うってことになったらねー、考えることも違ってくるわよ。一緒になってみて初めてわかる食い違いとか必ずあるんだから、そういうのも上手に折り合いつけてやってけるかどうか、そこが問題よね」

「ほうほう、さすが右近姐さん♪」

「うちの兄貴みたいにさ、とっかえひっかえばっかりしてると、よさげな人が現れても、いざ!ってときに『もっといいのが出てくるかも……』とか迷いが出てさ、腰が引けるのよね。えり好みもたいがいにしろって感じ。ついこの間も、あたしの目からみたらカンペキー!ていうかあの兄貴には勿体無い!ってくらいのヒトがいたのに、若い女にフラフラしちゃってヘタ打ったわけ。ほんとオトコって阿呆よねー。自分の身を振り返ってみろってんだっ

「……右近ちゃん、それほんとにお兄さんの話?」

「え? そ、そうよっ。トーゼンじゃないっ。えーと、必ずしも相手が理想にかなってなくても、やっぱご縁てもんがあるじゃん? つきあってるうちに見えてくる、二人だけーのしんーじつ♪ てのもあるし。ま、たいていはみんな割と平凡に、落ち着くとこに落ち着くのよ。だから人を羨んだってしょうがないのよね、うん」

「オットナー、右近ちゃん♪ 私達の王子様もいつか現れるのかしらん」

「王子様ね。ま、あたしたちはフツーの人がいいと思うよ、ごく平凡なね。ホントの王子様たちは大変だよ、妻選び。どうしたって人の噂の種にされるし、社会的評価にも直結するからシャレになんないって」



さてここで、宿直室に戻る。

もはや上も下もなく、女性談義に花が咲く。

「若くてイケてる子と、メル友になったとする。センスもいいし礼儀も心得てる。なんとかゲットしようと頑張ってるうちはいいんだけど、会う回数も増えて慣れてくるとお互い油断が出る。そこが第一の危機かもね」

「主婦たるもの、やっぱり旦那の世話が第一だから、あんまり自分の趣味に走られても困りますけど、逆に身なりを構わなさすぎってのもどうよって感じですよねー。髪振り乱してカリカリしながら家事や育児されてもね、ゲンナリしちゃいますよ」

(ずきっ)

「会社や仕事の、あんまり他人にいえないような話を、妻には出来るかどうかってのもポイントですね。笑い話や感動話、腹立たしい話なんか、聞いてほしいこともあるじゃないですか。コイツに言っても無駄なんて妻だったらもう自分の胸にしまっとくしかないから、こっそり思い出し笑いしたり独り言いっちゃったりして『何なの?』ってヘンな顔されるだけ。寂しいもんですわ」

「なーんも知らない素直な性格の若い子に、いろいろ教えて育てるつもりで結婚するってのはどう? 男の夢だよねえ、そういうの」

「通い婚ですからね、いつも一緒にいるってわけにもいかない。すぐ男に頼ってくる女は可愛いですが、まったく何にも任せられないっていうのは困る。それだったら普段無愛想で冷たい感じでも、いざとなったらぴしっとキメてくれる方がいいと思いますね」

などなど、
皆で論議するも、結論はなかなか出ないまま夜は更けていく 。

「左馬課長代理、どうすか?イロイロあったんでしょ、聞きたいなあ」

右近兄・藤田係長(式部丞)がそそのかす。

「いやいや、今となっては家柄も容姿も問題じゃないですね、やっぱり性格です。
よっぽど頑固でひねくれてさえいなきゃ、まじめで落ち着いた感じの女性と、結婚を前提としておつきあいしたいもんです。
趣味のよさや気立てのよさがオマケについてくりゃ儲けもん、不満な部分があっても少々なら見逃す、多くを要求しすぎない。
肩のこらないおおらかな性格であれば、センスも後からみがかれるってものですよ。

恥ずかしげに黙りこんで、嫉妬ややきもちなんて、何のこと? って感じで腹の中に溜めてくタイプの女は厄介ですね、いつかは爆発しますから。
罵詈雑言・誹謗中傷の限りをつくして、死ぬの生きるのおお騒ぎして、尼になってやるうなんて失踪されたひにはねー、まいっちゃうよね。

子どもの頃、お手伝いさんが読んでくれた本があまりに真に迫ってたものだから、登場人物に本気で感情移入して泣いちゃったりしたこともありますけど、いい大人が物語のヒロインぶるのはイタイよね。

夫の気持ちを試すがために姿をくらまして慌てさせたり、気を引こうとして一生後悔するようなことになるなんて、オロカとしかいいようがない。
『そんなに傷ついてたのねえ、かわいそうにねえ、よく決心したわ』
なんてヘンに同情されて、調子こいてホントに尼になっちゃったりして、最初は自分でもその気なんだけど、親戚とかに
『早まったわねえ、とってもいい旦那さんだったのに』
なんて言われて、やって来た夫にも泣かれてやっと自分の間違いに気づく、なんてことになったら、尼としても煩悩多すぎてダメダメだし、にっちもさっちもいかなくなりますよね」

(そういう経験が、あるのか?あるのか?)と周囲は思いながらも黙って聞いている。

「まあ、いろいろあっても切れずに続く夫婦ってのが縁も深くて愛情も厚いと言えるけど、常にお互いを気遣うことは忘れちゃならんでしょう」

きれいにまとめた。が、話はまだ続く。
「またね、冷めてきたからって夫を恨んであからさまにないがしろにして離婚! なんてのも愚かしいよね。
若い女にフラフラ、ってことはあっても、これまで長いこと夫婦でいたわけでしょ。
新婚当時の気持ちを思い出してみなよ、ってね。そういう縁をむやみに切るべきじゃないですよね。

ほどほどに嫉妬してかるく嫌味のひとつも言うのはいいんだけど、穏やかにやってほしい、可愛げがある程度に。
そしたら夫の愛情もいや増すってもんじゃないですか。
大体、男の浮気心なんて、妻の態度ひとつなのよ。 
だからといってほったらかしの野放し状態でヘーキってのも、男にとっては可愛いを通り越して、え、俺って何? 単なる都合のいい男? こっちがフラフラしようがなんだろうがなーんも考えてないってことじゃないのこの女、みたいな感じでへこみますな」

頭の中将は納得したように、ふかーく頷き、口を挟む。

「今のところ、イケメンで性格もいいから気に入っている奴がいるんだけど、もしそいつに浮気の疑いがあるとしたら・・・て考えちゃうなあ。
俺があれこれ口出しせず大目にみてやっていれば、そのうちどうにかなるような気もするが、先のことは誰にもわからないしね。
夫婦仲がうまくいかないような時って、あまり騒ぎ立てずじっと堪えて待つ以上に良い手立てというのは、なかなかないんだよな

と、暗にヒカルと自分の妹のことを当てこすったりなんかしてみるが、当の本人は居眠りしている。
なんだよー余裕ぶっこいてシカトしてんじゃねえよヒカルとややムッとする頭の中将。

左馬課長代理はますます弁が冴え、もはや誰も止められない。

頭の中将は、身を乗り出して熱心に聴き入るのであった。

「いろんなことに通じるんですよ、こういうのは。
名人と呼ばれる職人が思いのままにいろいろ作り出すのと同じでね。
定型にこだわらず、雰囲気や趣向に合わせてその場でえいっと作ったものが意外に目新しくて洒落てる、ってこともありますけど、ここ一番というとき、やんごとなき人のために一定の様式を立派に作り上げることもできる、本当の名人と素人との違いはその辺にあるんですね。

絵描きでも名人は多いですが、それぞれに優劣をつけるのは、ちょっと見ただけでは出来ないですよね。
絵の題材も、架空のものだと、本物に似てるかどうか確かめようがないこともあって、案外素人でも描きやすい。
だけどどこにでもあるありふれた風景、山や川や人家のリアルな様子を描くと、それぞれのこだわりや配置のセンスの違いが出て、一発で画力がわかるというものです。
文字を書いたものでも、ぱっと見がよければひとかどのように思えますが、やはり正当な書法をきちんと習得している方はどこか違う、心が惹きつけられるものですな。

なんてことのない芸ごとでもこうですから、まして人の気持ち、愛情につきましても推してしるべし。

例えばこんな話があります。ややエロいとこもあってお恥ずかしいかぎりですが、思い切って申し上げましょう」

左馬課長代理は俺の話を聞けオーラむんむんでにじり寄って来たので、さすがの源氏も目を覚ます。
頭の中将はもう夢中で、頬杖をついたままかぶりつきに座っている。

見ようによっては坊さんに長々と世の道理を説教してもらってるような図ではあるが、何せ内容が内容。もうこうなったら皆でぶっちゃけちゃいましょ♪という気分なのだった。

皆寝静まった内裏のなか、
徹夜ハイの男たちの体験談が次々と展開されていく。

<つづく>

参考HP「源氏物語の世界

2010年10月5日火曜日

オフィスにて(二)

右近兄の武勇伝の前に、ちょっと時を進めてみる。 さて、
平安OLから見た「上・中・下」の品とは!

「おっはよ♪侍従ちゃん」

「おはよう、右近ちゃん。やっと雨上がったねえ」

「ほーんと。長かったよねえ」

「ほんとよねえ」

 しばらく縫い物などする二人。

「ねえ右近ちゃん」

「なあに侍従ちゃん」

「この間、右近ちゃんのお兄さん、ヒカル王子と一緒に宿直(とのい)だったって言ってたよね。どうだったって?」

「あーーーー、そうねー・・・何だか無駄にテンション高くってさ、帰ったらその話ばっかし。いいかげんウザかったよもー」

「ででで、どういう話したの?聞きたい聞きたーい」

「上中下、の話だって」

「は?」

「あたしたちみたいな中くらいの階層にいる女は狙い目よ、って結論に達したらしい」

「な、何それー! 何か失礼じゃない? 大体上・中・下、ってそれ何っ?」

「侍従ちゃんたら……」

 右近ははー、とためいきをついた。

上の品の女、というのはつまり生まれのいい女のことよ
あたしたちが仕えてる女御さまのクラス。先代とか、そのきょうだいの娘とか、とにかく由緒正しきお家柄の中でも最上級の真正セレブ」

「いわゆる宮腹(みやばら)、ってやつね♪」

「わかってんじゃん。どこでどう切るかは難しいけど、そうねー、たとえ外腹の娘でも、小さい頃からそういう格式あるお家で、誰の目にも触れずにしっかりお嬢教育された人なんかは『上』っていってもいいのかな」

「ふーん。で、『下』は?」

こういう大会社(宮仕え)にとうてい採用されっこない、外のお人ってことでしょ。ま、私はよく知らないけど?」

「それでいうとさ『中』って幅広くなーい? 
社長(帝)のきょうだいの嫁入り先の従兄弟の子ども、なんてほとんど他人じゃん? ていえるような家でも、お金と権力さえあれば娘をばーんと入社(入内)させられるよねー。
おんなじ社長の女でも、こういうのも『中』なんだよね、それでいったら」

「なかなか言うね侍従ちゃん。そう、女としてのグレードを決めるのは、まず家柄や血筋であり、見かけや才能や性格は二の次。もちろん男にとっても同じこと」

「え? だって『中』の女がいい、ってことになったんでしょ。あたしたちの時代ってことじゃーん♪ イエーイ」

「ばっか、何おノンキなこといってんの。あたしたちなめられてんのよ、気軽く相手してもらえるってさ。心の底では『上』が一番、理想! だけどリアルはこんなもん人生妥協も必要だYO! なーんて思ってんのよ。侍従ちゃん、騙されちゃダメだからねっ」

「う、右近ちゃん……何かあったの?」

「何もないわよっ」

「あなたたち、またっ!」

 典の局にまた叱られて、二人は渋々仕事に戻るのであった。


<「雨夜の品定め」後半につづく>

2010年10月3日日曜日

箒木(二)

さらに二人恋多き男が加わり、いやがうえにも盛り上がる宿直室(桐壺の局) 。

女性の品格の「上中下」というのはどこで区切られるのか?というヒカルの問いに答え、頭の中将アツく語る。

「家柄がイマイチなのに何かの拍子に成り上がっちゃった、にわかセレブ?とか、その逆に家柄はいいけど、コネ無し・生活力ゼロ、その癖やたらタカビーな元セレブ?なんてのもありがちだよね。両方とも、差し引きゼロの『中』ってとこかな?」

ふんふん、と聴衆。

「地方のノンキャリア(受領)組にもなかなかどうして、イマドキは結構いい人材がいるんだけど、だいたいはそんじょそこらの中堅キャリア(上達部)より、割り切りが良くてあっさりしてる。そりゃ、地位も家柄もそこそこで、世間の評判も悪くなくて経済的にも安定してれば、出世だの何のってあくせくせずとも悠々自適に暮らせるよね」

大きくうなずくノンキャリ組の二人。

「そういうヨユーのある家で大事に育てられた娘なら、けっこういい女に成長して、就職して(宮仕えに出て)から思いもよらない玉の輿、ってのもあながち夢じゃない」

つまり親が持ってる金次第ってことですかね

といってヒカルが笑うと

「あらま!皆の王子様がそんな身もふたもないこと言っちゃっていいの?!」

大げさに目をむいてみせる頭の中将。

「家柄・社会的地位・経済力の三拍子そろった家に生まれ育ったのに、なんでこんなんなっちゃったかなあ残念、ていうのもたまにいるけどね。そういういいお家のお嬢さんはデキが良かったとしても別にトーゼンっていうか、特に珍しくも面白くもないから、俺的にはイマイチ…だから『上』のあたりはちょっと勘弁、てかとりあえずスルーね」

よく言うよ、といわんばかりにしのび笑いがもれる。

「たとえば」

中将の目がきらりと光る。

「うらぶれた感じのボンビーな家に、思いもよらない純で可愛い娘がひっそり隠れ住んでた、とかいうシチュエーション、萌えるよねえ。なんでまたこんなとこにこんな素敵な子が、って予想外であればあるほど、胸が熱くなるね。
父親がうだつの上がらないメタボ親父で、兄弟もぶっさいく、イマイチな構えの家の奥に、とんでもなく品が良くて趣味のいいコがいた!なんてサプライズもいいよなあ。
『上』でも『下』でもない、特に難点もない『中』のなかから女性を見出すっていうのは難しいけど、なかなか面白みがあって捨てたもんじゃないよ」

語り終えた頭の中将は藤田係長(式部丞)を見て、意味ありげに笑う。
「中」のイケてる女って、俺の妹たちのことかなエヘヘ♪と係長つまり右近の兄は内心鼻高々である。

「そうは言っても……うまくいくのかな?『上』の女性でも難しいのに」

と、「極上」だが打ち解けない妻を持つヒカルは考え込む。

ただ一晩中居るだけの仕事なので、袴もはかず一重の着物に上着をはおってるだけの気楽な姿、
(つまり現代でいうとTシャツ短パンな感じ?)
薄暗い灯火のもとでしどけなく物に寄りかかっている様子は女にしてもいいくらい色っぽい。
なるほど「上」の中の上の女性でもなお足りないほどの魅力だと誰もが思う男っぷりである。

その後もさまざまな女性論議「雨夜の品定め」がいつ終わるともしれず、続いていくのであった。

<つづく>
参考HP「源氏物語の世界

2010年9月30日木曜日

箒木(一)

「ねえねえ、ヒカルの君って、跡取り(東宮)さんより全然イケてなーい?」

一介の社員(公達)として会社(宮内)で働くヒカル源氏。
とはいえ、彼が社長(帝)の息子であることは周知の事実、そもそも最初から、平社員ではないそこそこの地位を与えられていた。加えて結構デキル男でもあったため出世もとんとん拍子。
なんといっても有力役員の双璧の片割れ(左大臣)の娘婿であるし、目の覚めるようなイケメンで何をやらせても人並み以上、注目度はいやがうえにも高まる。男女ともに彼の関心を得ようと集まる面々はひきもきらない。

だがそれは逆に、
ヘタなことはできない、ということでもあった。

ちょっとその辺の女子社員とメールのやりとりをした(文をかわした)だけでも大騒ぎである。
かといって返信もしないでスルーしようものなら「ふーん、私なんか相手にしてらんないってことね。モテ男だからっていい気になってんじゃなーい」ということになりかねないので、一応それなりの誠意は尽すことにしている。
もともととっかえひっかえ仔細かまわず、は性に合わないし、過剰に八方美人してるわけでもないのに、ほんの些細なことでも大げさに言われてチャラ男扱いされるのはツライ、
だからといって・・・
本命(藤壺の宮=社長の女)のことは絶対口に出せないし・・・・と悩ましい十七のヒカルなのであった。

五月雨の続く日々。
物忌をいいことに、あまり仲のよろしくない妻の家には通り一遍の訪問しかせず、社内(宮中)にこもりっきりのヒカル。
何しろ妻の家は格式が高くすべてに仰々しい、妻より舅姑があれこれと口を出し世話を焼き、いちいち反応をうかがうので正直ウザイ。対して妻は、美しく教養もあるのだが、無表情のうえ無愛想でお手伝いさん(女房)を通してしか会話しない。毎回息がつまり、何処にいても気が休まらない。寄りつきたくなくなるのも無理からぬことだった。

さてヒカルのいる部署(部屋)は桐壺、小難しい本(漢籍)など広げてつれづれを慰めている。
隣にいるのは仲良しの頭の中将である。
この男は役員(左大臣)の息子で、ヒカルの妻の兄、つまり義兄にあたる。毛並みの良さはもちろん容姿も頭脳も、あらゆることでヒカルと並ぶ高レベル、おまけに正妻は対立する役員(右大臣)の娘で婚家が気詰まりな点でも同じ。モテ男で有名だがあけっぴろげで、皆が遠慮するヒカルに対しても平気でずけずけ対等な口をきく。ヒカルのライバルとなれるのは自分だけだと密かに自負しているらしい。

「ヒカルー、これ見てもいい?」

ヒカルが女子に貰った色とりどりのメール(文)に目を通していると、横から覗き込んでこう言う。

「これとこれと、これならいいですよ。こっちはちょっと・・・NGです(笑)」

ちっちっち、と頭の中将が指を振る。

「その、NGってやつが見たいんだよヒカルちゃん。無難なやつ見てもつまんないじゃん。うわちょっとマジありえない、ヤバくて人に見せらんねぇってやつじゃないと見る価値無し」

「・・・(おいおい)」

まあいっか、本気でまずいのは此処には置いてないし、と源氏は思い直しメールの束を全部渡す。

「そうこなくっちゃ」

頭の中将は楽しげにメールを物色しはじめる。

「おっこれ、いいじゃん。デコメもセンスが出るよね。わかった、○美だろ!これは……んー、わからんな。△子?」

ヒカルは笑って誤魔化す。

「頭の中将、この程度のメールならあなたこそ沢山貰ってるでしょうに。私にも今度見せてくださいよ」

「いやいや、俺なんかぜーんぜん。超ありふれたのしかないからつまんないよ」

にやりと笑って、ついでにとでも言うように語り続ける。

「思うんだけどさー、なかなかすべてにおいてカンペキ!って娘はいないよねえ。イマドキーな感じで、センスも悪くない、性格もそこそこ良し、なんだけど、他の誰より飛びぬけて凄い特技とか美点があるかっていうと、ない。いや、ひとつやふたつあったとしても、鼻にかけちゃって、何あの子ダサくない?ありえなーいって感じー、ていうかアタシって全然イケてるでしょ?なんて、他人を貶めて自分を高める、みたいなさ。ちょっとイタくね? そういうの」

立板に水状態の頭の中将、

「あと、親が一から十まできっちし生活を管理してるような世間知らずの箱入り娘ってさ、一見真面目でよさげだけど、ちょっと危険だよね」

「危険?」

「うん。だってゼーンブ親掛かりなわけでしょ、家事も趣味も何もかもさ。親がいるうちは財力や何かでカバーしてもらえるから、そこそこ何でもうまくいくかもしれないけど、それをとっぱずしちゃったら、どうなのよって思わない?」

「うーん」

「それに親って、自分の娘のことを悪く言ったりは絶対しない。欠点でもうまいこと言い換えたりして隠すでしょ。それをうっかり鵜呑みにして嫁にしちゃったりしたら、絶対あとで『なんか違う・・・』ってことがわんさか出てくるんだよなあ」

とわざとらしくため息をつく。源氏はなるほどと思い笑って言う。

「いっこもいいとこナシ、って娘はいます?」

「さあね。まあそんなのは問題外として、超貧乏で底辺な女と、超金持ちでお嬢な女って数としては同じくらいで、大体は見た目のまんまなんだけど、真ん中へんくらいの女は違うよ。いろいろなんだよね、個人の性格も考え方も、趣味の方向とかも」

「へーえ、さすが。師匠とお呼びしていいですか?」

本気で感心してつぶやくヒカルに、頭の中将得意満面。ヒカルさらに疑問を投げかける。

「その上・中・下の三つの階層の違いって、正直よくわからないんですよね。元もとは由緒正しい家柄なのに経済的に残念な感じになっちゃったとか、逆にごくごくフツーの家だったのに努力と才能で成り上がったとか、いろいろあるじゃないですか。何をもって分けるのかな?」

そこにどやどやとヒマな社員たちがやってきた。
(もちろん右近・兄も参加である)

雨はなおしとしとと降り続き、夜はまだまだこれからなのであった。

<つづく>
参考HP「源氏物語の世界」

2010年9月28日火曜日

オフィスにて(一)

「おはよう、右近ちゃん」
「おはよう侍従ちゃん。毎日雨でやんなっちゃうねー」
「ほんと。洗濯物も乾かないしー。これで物忌でもなきゃ、とっとと宿下がりして着替え持ってくるとこなんだけどー」

 社長(帝)の着物にアイロン(熨斗)をかけながらしばし無言の二人。

「ねえ右近ちゃん」
「なあに侍従ちゃん」
「前まえから誰かに聞こうと思ってたんだけどさ。ほら聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥っていうでしょ」
「だから、何」
「ぶっちゃけ、物忌って何?」
「はぁ?アンタここに来て二年でしょ。平安OLとしてそれ、どーよ?」
「や、あのね、大体は知ってんの。四人の神様がいるんだよね。で、その神様がどっち向いてるかによって行っちゃイケナイ場所とかがあるってことだよねえ。あと夢見がわるかったときとか」
「……わかってんじゃん」
「で、この間からずっと社長(帝)が物忌で外出禁止、と」
「まあ、あたしたちは実はカンケイないんだけどー、一応ね」
「でさー、いつも思ってたんだけど、ここ何年かやけにそういうの多いよねー。やれ方ふさがりだ物忌だってさあ。風水だか陰陽五行説だか知らないけど面倒くさくなーい?」
「んー、そーかもね」
「これって、破ったらどうなんの?なんか災いとか降りかかったりすんの?右近ちゃん、なんか聞いたことある?」
「・・・特にないかも」
「でしょー。何でこんなのみんなして必死に守ってんのかなあ。超イミフ。あたしの実家なんかさ、道のちょうど角っこにあるもんだからしょっちゅう『方違え』のお客さんが来て大変だって、母親がぼやいてる。前々からわかってるんならともかく、たいがいアポなし突撃訪問でしょー。朝早い時なんか掃除もロクにしてないのにどうすんのって涙目よー」
「あー、なるほどね。侍従ちゃん、それはさ」

 ごそごそと袂をさぐる右近。

「急な『方違え』客にお困りの方に♪」
「あーっ、何コレ」
「これを玄関に貼って『ウチ今日はあきまへんのや、えろうすんまへんなぁ』ってことで来客退散。あたしの実家はいつもコレよ♪」

 右近の手には、「物忌」と書いた紙が何枚も握られていた。

「ヤダー、あったまいーい! 一枚頂戴♪」

「あなたたち、無駄口ばっかりたたいてないで仕事しなさい!まだ沢山あるのよっ」

 ドア(簾)が急にあけられて、典の局が顔を出した。

「は、はーい」
「すみませーん」

……

「あーあ、早く雨やんで、物忌も明けないかしらん。おんなじ仕事ばっかで飽きるよねえいいかげん」
「そうそう、知ってる?今日の宿直係、ヒカルの君よ♪」
「エー!ヤバーイ!も、もういらしてるのかしら。同じ屋根の下に……きゃーん、ドキドキしてきちゃったー」
「アンタがドキドキしてどーすんの、侍従ちゃん」
「だってさあ、超イケメンじゃん!まさに王子よ王子(ほんもの)!お肌なんかつるんつるんで美しいのに、サッカー(蹴鞠)なんかもお上手で。お勉強だってできるんでしょ、外国の教授にめっさ褒められたって」
「うちのバカ兄も今日社内(宮中)の夜回り当番なのよねえ……」
「あ、そうだっけ。例のナンパ好きの」
「やめてよー、もう何処に出しても恥ずかしい兄なんだからさ」
「あははは」
「ちょっと、そんなことないとか多少はフォローしなさいよアンタ。でね、うちの兄曰く」
「うんうん♪」
「あの王子様、言うほど女慣れしてないぜっ、だって」
「ええー? いろんな話聞くよー、あんなのやこんなのや、そんなのや」
「絶対だって。今日の夜、確かめてみるぜだって」
「やだー♪あたしの大事なヒカル王子を汚さないでー、右近兄!でも、ききたーいっ」

雨はなおしとしとと降り続くのでした。

<つづくっ>

2010年9月27日月曜日

「桐壺」背景その二

さて、愛されすぎたペーペー新人OL(桐壺の更衣)は亡くなり、その息子は跡継ぎ候補からは外され、正妻とその父およびやんごとなき関係の方々はほっと胸をなでおろしたのだが、社長(帝)はいっこうに彼女を忘れられない。
そんな社長の耳に、亡き恋人に生き写しという娘の噂が耳に入る。もしかしてそれは娘の父の策略だったのかもしれないが、社長は一も二もなく彼女を入社(入内)させる。
彼女の入った部署(部屋)の名は「藤壺」 。
光る君の源氏と並び、輝く日の宮、と呼ばれた「藤壺の女御」の誕生である。
今度は「ぺーぺーOL」どころか、家柄も身分も文句のつけようがない。なんといっても先代(先帝)の血縁者である。

正妻であり跡取り息子(東宮)の母でもある弘徽殿(こきでん)の女御は戦々恐々、さらなる嫉妬と憎しみを募らせるが、相手が相手なので、さすがに具体的な行動には出られない。腹に溜まった黒い感情は後々、爆発の機会を待って静かにどろどろと煮えていくのであった。

一方、父の実家で大切に、だが母の愛を知らず育ったイケメン少年は、たちまち「母に生き写し」の若く美しい藤壺の女御に憧れを抱く。藤壺の方も、美しく賢く、だがどこか寂しげな風情の少年に心惹かれたりなんかする。
そんな思いを秘めたまま、少年は十二歳になり元服、源氏の姓をいただいて父の元を離れる。

当時は元服を済ませれば成人とみなされた。
源氏は身分こそ低いが何しろ現社長(今上帝)の息子である。しかも容姿端麗・才気煥発で社長の大のお気に入り、当時の役員のひとり(左大臣)が「将来有望」と判断してとっときの娘「葵の上」をめあわせる気になったのも当然だった。

だが娘は本当なら跡取り息子(東宮)に嫁入りするはずであった。彼女にしたら
「話が違うじゃないのお父様っ」
というところである。
役員(左大臣)の正妻の娘として華々しくデビューするはずが 、格下(臣下)で、なおかつ四つも年下の女慣れも世慣れもしていない若造(というより小僧:中学生だよ、うう)の妻にされてしまったのだから大変である。
なまじっか源氏がええおとこ過ぎたのもよくなかったのかもしれない。

何この子、私よりキレイなんちゃう?

なんて思ってしまったかもしれない。かくして后となるべく気位たかく育てられた美しい妻は心を閉ざし、源氏は源氏で気詰まりで、若いふたりはなかなか打ち解けられないのであった。

と、いうような背景を頭においた上で、いよいよこれからオトナの源氏の物語が始まる。

<不定期に続く>

2010年9月26日日曜日

「ひかるのきみ」復活♪ 「桐壺」の背景

以前、もうひとつのブログで不定期に連載?していた、大雑把な源氏物語訳、を復活させてみる。
しばらくは元記事を手直ししつつ再録、その後はぼちぼちと更新予定。

まずは源氏物語に対する勝手な持論。
源氏物語は、あらゆる少女漫画の大元である。
身分違いの悲恋によって生まれた、容姿端麗・頭脳明晰・運動能力にも長けた、非の打ち所のない主人公が繰り広げる恋の数々・・・

相手は人妻であったり、
誰とも知れぬ街の女であったり、
セレブで聡明な未亡人であったり、
亡き母にそっくりな義母であったり、
その義母にそっくりな少女であったり、
お局様であったり、
落ちぶれた深窓の令嬢であったり

・・・・えーと、レディコミか?(笑)。当初は女房たちの間で回し読みされていたから、女性週刊誌のような性格もあったかもしれない。身近な人や事件をモデルにしてるし。

つまりわりと下世話なんである。

ただ、そのドラマが繰り広げられる舞台というのが、現代とはかなり違う特殊な世界ではあるので、その前提を理解するとしないとでは入れ込み方がかなり変わる・・・かもしれない。

そこで以下、やんごとなき古典にとっかかるためのテキトー説明。

平安時代の宮中とは、ものすごく大雑把にいうと、姻戚関係でガッチガチに結ばれた同族経営会社のようなものであった。

中国から取り入れた冠位制はこのころにはすっかり定着、明確な序列と職の区分により階層化された宮中で、当時の日本人の人口一パーセントにも満たない貴族が、より有利なパイを奪い合っていた。ポイントは、トップにいただく宮家とどの程度血縁関係で食い込めるか、であった。

社長もしくは会長にあたるは、とにかくかしずかれるのが主な仕事。
実際の経営は、役員トップ(太政大臣)以下の部下(臣下)にすべて任せている。
採用基準は一に家柄、二に政治力(コネ)、三に経済力、四に能力といったところだろうか。女子の場合はほとんど「コネ」の大小により配属先も決定されていた。
さて、この会社における男性社員(貴族男子)の最大の目標は、

「自分の娘を社長夫人にしてあととりの男児を産ませること」

社長(帝)の息子の祖父、つまり次期社長候補者(皇太子:東宮)の祖父になることは事実上会社の実権を握るということであった。かくていかに自分の娘を見目良く整え教養と嗜みを兼ね備えた「美女」に育て、社長(帝)の元に送り込むか、と画策するのが上級管理職またはそこを目指す者(大貴族)たちの重要な仕事だったわけである。

のちに源氏の母となる桐壺の更衣は、家柄こそ宮中に参内できる程度に高かったが、父を早くに亡くしていたため「後ろ盾」というものを持っていなかった。父親が常務だとか支社長だとか、最低でも部長クラス以上であるという華やかな女性社員(お妃)たちの中にあっては本来、鼻もひっかけられない最底辺のいち社員でしかないはずだった。
「更衣」はつまり身支度整え係、要は下働きである。ただ仕事の性格上、帝に最も接近して働くため、見初められて・・・という話は従来もなくはなかった。運良く帝の子を妊娠ということにでもなれば、身分は低くても一応生活は保障されたし、非難されることもなかった。厳然たるヒエラルキーがそこには存在していて、帝の一時の気まぐれ程度では揺るがなかったからだ。

ところが帝の、更衣に対する愛情は、一時の気まぐれと片付けられる程度のものではなかった。昼となく夜となく毎日のように彼女の元に通いつめ、東宮を既に産んでいる北の方や他のやんごとなき后たちの面目は丸潰れとなった。

あんなぺーぺーの新人OLにしてやられるなんて!きいぃい!

非難ごうごう、嫉妬の嵐、会社(宮中)の連中はこぞって彼女をいじめたおした。何しろ皆本物のお局であるから洒落にならない。彼女は心身ともに疲れ果て、男児を産んでまもなくこの世を去る。

男の子は帝の御胤であるかられっきとした皇太子だが、前述のように「母の父親=祖父の後ろ盾」がないため、そのままだと王位継承権は最底辺、不遇な一生確定である。そこで帝は息子に源氏の名を与え臣下におとした。
后たちやその父親たちの怒りを鎮め事態を収拾するためでもあり、また母を亡くした不憫な子に、自由に自分の道を切り開くチャンスを与えようという親心でもあった。

かくて母の顔を知らない男の子は、父の蔭のバックアップを受けつつ、頭も良く何をやらせても人並み以上の超イケメン青年に成長していったのであった。

・・・などと、のっけからジェットコースターな感じで話は始まるのである。
<不定期に続く♪>

2010年9月22日水曜日

9月に読んだ本  その三

この間、美容院に久々に行ったら、重くてかさばる女性雑誌は自然とかナチュラルとか(同じやんか)、相変わらずもてはやしてる感じだった。でもね、自然て何?ホントに自然て、そんなに素晴らしいのか?

この間読んだ本は皆、読み終わるのが勿体無くてゆっくり読んでいたが、この二冊は怖すぎるのでなかなか読み進められなかった。

「羆嵐」(くまあらし)吉村 昭

ネットで見かけた北海道「三毛別羆事件」、あまりに衝撃的だったので、ドキュメンタリー小説化したこれを読んでみた。
昔、「グリズリー」という映画があったが、あんなのディズニー映画だね!と断言出来るほどこの事件は怖すぎる。「何がどう怖いのか?」・・・そこを的確に、克明に書いているところはさすが大御所の吉村氏。取材も相当している感がある、きっと何度も何度も現地に足を運んだのだろう。
かの倉本聴氏もあとがきに書いている。夏にこの「羆嵐」を読み、同じ年の秋に北海道富良野の原生林に移住、手違いで一晩だけ電気のない夜を過ごした。脳裏に浮かんでくるのはこの作品の、思い出したくない場面ばかり。恐怖でまったく眠れず夜を明かしたという。
何と言うか、本能的、根源的な怖さの琴線にふれる感じ。穴居生活をしていた頃はきっとそんなことの連続で、そういう恐怖を克服するために文明は発達したんだろうなあ。ありがたいことである。自然が一番♪、自然を楽しもう!なんて贅沢なことが出来るのも、先人の犠牲と努力あってこそ。「自然」は本来怖いんだぞ、女子供が能天気に楽しめるものではないのじゃ(おばば風)。

というわけでもう一冊はこれですよ。



「八甲田山死の彷徨」新田次郎

こちらは実話を元にした創作ではあるが、雪山の恐ろしさというものは十二分に描かれている。
ちなみに小説と実際の事件との相違点はこのサイトが詳しい。
八甲田山雪中行軍遭難悲話

私は知らなかったのだが、元々この雪中行軍訓練は二つの部隊が別の場所からほぼ同時に出発し、八甲田山系ですれ違うことになっていたらしい。つまり片方は成功していたのだ。
ハードカバー版の裏表紙を見るとわかるが、成功していたほうが長いルートを踏破しており、大惨事となった方が移動したのは地図上ではごく僅かな距離だった。最初見たときは逆なのかと思ったくらいだ。
一般人ではない、全員軍隊で日々訓練を受けている心身ともに屈強な男たちばかりなのに、わずか三日で全滅に近い損害を受けている。元々八甲田山というのも、冬は山に慣れた地元民ですら遭難するほどの難所であった上に、数年に一度という大寒波が襲うという不運も重なった。生きながら体のあらゆるところが凍っていく、緩慢に死んでいくというのはどれだけの苦痛、絶望、恐怖だろう? 詳細に想像することを体が拒否するほど怖い。

しかしこういう絵に描いたような「どうにもならない」状況、というのを日露戦争前に経験していた日本軍なのに、太平洋戦争末期には南方で同じような状況にあった沢山の兵士を、結果的にとはいえ見殺し同然にしてしまった。人間は歴史に学ばない(学べない)といったのはヘーゲルだったか誰だったか。結局、あまりに悲惨すぎる事件だったので、どうしてこのような事になったのか、どうすればよかったのか、とか客観的に細かく分析することが難しかったんだろうと思われる(実際、指揮官にあたる人間は救助後に自殺している)。新聞に大きく取り上げられて騒ぎにもなったので、遺族への補償や配慮で手一杯だったということもあったろう。一口に隠蔽体質といえばそれまでだが・・・だからどうしたらよかったか、は私にはわからない。

ともあれ、「自然」と闘い亡くなられた方々には合掌。

2010年9月14日火曜日

9月に読んだ本  その二

「小さいおうち」中島京子

読みました!
抄録を読んだ時の感動を裏切らないどころか大幅に増幅していただき、大変満足いたしました。はい、素直に面白かったです。ジェットコースターさながらに次から次へと事件が起こって目を放せない、というのとは違いますが、今よりほんのすこし昔の日本の日々を、これほど丁寧に、しかし入り過ぎることなく、ゆったりと語られるのもたまらなく心地良い。長い話ではないのだが、読み終わるのがもったいなくてゆっくり何日かに分けて読んだほどだ。(ちなみに私はかなり読むの速い。このくらいのページ数なら数時間で余裕)

「直木賞」がどのような基準で選ばれているのか、はっきりとは知らないが、あまり読者を選ばない感じのとっつきやすい作品が多いのではなかろうか。「とっつきやすい」とはいっても決して凡庸ではなく、おもねってもいない、何と言うか…ほんのすこし昔の日本人なら普通に持っていたと思われる繊細な距離感が、見事に再現されていると思う。篠田節子さんに続きファンになること決定♪
何でも平等平等っていうのも、あまり面白くないよなあ。

で、ここで唐突にこれ。

「太陽の塔」森見登美彦

2003年のファンタジーノベル大賞を受賞した作品で、気になってはいたのだが何となく読む機会がなく、気づけば結構なベテランに。伊坂さん以来、「デビュー作」というものに非常に関心が出てきたので借りてみた。
こ、これは(笑)。理系の、しかも関西系の大学生(男)の日常と頭の中をこれほどセキララに描写した作品は今まであったろうか。あるのかもしれないが私は知らない。
ストーリーはあるようなないような。しいていえば彼らにとっては「太陽の塔」にハマる女の子そのものが「ファンタジー」なのかしらん、いやむしろコヤツらの頭の中そのものがファンタジー。イケメンは誰一人、徹頭徹尾、完膚なきまでに出てこないが、会ってみたいと思わせ・・・いやそれは言い過ぎ。物陰から垣間見たい感じの男たちである。


「転生」篠田節子

対してこちらはかなりスペクタクルなお話。何しろ舞台がチベットで敵役が中国!だだ、大丈夫ですか篠田さん・・・と設定からして心配してしまうのだが、あとがきを読むと、どうも登場人物たちが移動した同じルートを自らも踏破しているらしい。なんとワイルドでカッコいいお方であろう。しかもこの話、ハリウッド映画のような派手さもあり、実にコミカルでもある。けっこう金箔いや緊迫したシーンでも何かほのぼのしているというか、癒される。篠田さんはきりりとした感じの作品ばかりかと思っていたらこういうエンタメ全開のも書いていたのね。ああますますファンに。
詳しくはあえて書かないが、日本でしか、日本人しか書けないネタであることに間違いはないと思われる。映画には・・・・ちと無理かもなあ(笑)。

2010年9月6日月曜日

9月に読んだ本 その一

「FUTON」中島京子

中島京子さんはついこの間、「小さいおうち」で直木賞をとられた方である。実は図書館で抄録を読んで、すっかりハマってしまい、某クレジットカードのポイントからゲットした密林ギフト券でうっかりクリックしてしまいました。あさってくらいに届くので、読んだらまたここに書きます。

「オール讀物」の抄録を読んだ、その同じ図書館で借りたのがこれ。何しろ語り口が柔らかく心地良く、それでいて結構シビアなので、もう読んでいるだけで幸せな気持ちになる。何かの講評にも書かれていたが、この方は書くことが好きで好きでたまらない、そういう感じがひしひしと伝わってくるのだ。
書くことそのものが好きなのであるから、登場人物に対して過剰な思い入れというものがないのも、またいい。贔屓目やわが子可愛さの曇りというものがないから、至極客観的に、かつ正確にその人物を捉えることが出来ているのである。
元ネタにされた田山花袋も、草葉の蔭で嬉しさのあまり号泣しているであろう。ああそうだ、「蒲団」も読まなきゃね。

2010年9月3日金曜日

八月に読んだ本 その二

やっと夏休みが終わった・・・でもまだ暑い。あまりの暑さに、向こうの更新が精一杯でこっち放置してた。記録しとかないとどんどん溜まっちゃうので一気に。

「ジーンワルツ」

「ジェネラル・ルージュの伝説」 海堂 尊

海堂さん作品は「バチスタ」から好きでよく読んでいるのだが、以前雑誌で連載されていた「マドンナ・ヴェルデ」の、代理母として娘の子を産むことになる母親、という設定が衝撃で続きが気になっていた。
「ジーン・ワルツ」はその関連作。衝動買いした時はそれを知らず、読んでみてびっくり(遅。ホントにファンなのか)。映画化もされるらしく、主役は私の大好きなカンノちゃん。うう、思わず観に行ってしまうかもしれないじゃないか。まんまと乗せられている。

現役の医師にして売れっ子作家である海堂さん、「伝説」の中で、いかにしてデビューしメジャーにのしあがっていったかを語っているが、とにかくこの人はタフで仕事が速いことがわかる。書くことが元々好きで、かつ一般人にはない専門的知識および経験をリアルタイムで仕入れることが出来、「なぜこの作品を書くか?」という意義や目的も明確。さらに「シリーズ物の醍醐味」というものをよく知っていて、なおかつ初見の人にも楽しんで貰えるようにと工夫を凝らす。サービス精神旺盛なのである。

見かけたら買うようにしていたのだが、海堂作はあれよあれよと増えるので、だいぶ遅れを取ってしまった。これからまた少しずつ読むこととしよう。娘もファンだし。





「夏の災厄」篠田節子

すっかりファンな篠田作品。この冷静でシンプルな語り口がたまらない。
「ヒーローなきパニック小説」まさにこの一言に尽きる。だいたいこのような感染症の話だと、大きな陰謀があってそれを主人公が解明する、という図式が多いのだが、そこは篠田さん。ちょっとアカがかった医師が疑った「陰謀説」をものの見事に粉砕しているところは爽快でさえあった。

惜しむらくは、後半、病気の恐ろしさ・切迫感などが薄れてしまっていたこと。あれだけ感染源に近づいているのに、主要人物のうちほとんど誰も感染しないのは不自然。最後は数字だけの表現になっていた死者や感染者に対しての視点も欲しかった。なんて偉そうに書いてみたものの面白かった!一気読みしました。



「平成関東大震災」福井晴敏

篠田さんに続きパニック物シリーズ。普通のサラリーマンが仕事中、大震災に見舞われる話。ストーリー性というより、シミュレーションという性格が強いので、かなりためになる。主人公の名前が、
西谷久太郎=「サイヤク」=災厄 、
彼になぜかくっついて解説して歩く男の名前が
甲斐節男=解説男
というのが笑える。
ただひとつだけ、くだらない疑問。備蓄しておくべき品のなかに、「哺乳びん」があるのは何故なんだ?赤ん坊がいるご家庭か?うち、もう捨てちゃったんだけど。




「隣之怪 木守り」木原浩勝
 
「新耳袋」という、短い実話怪談ばかり集めた本がある。実は全巻持っている。この本もそれに似た形態で、すぐに読めてしまう。
だけどあれだな、新耳袋の方が怖かった。怪談の怖さは、おそろしい顔をしたお化けがうわーっと出てくる、というのではなく、「意味のわからない」「尋常ではなさ」みたいなものに、さしたる理由もなく出会ってしまう、というところにあると思うのだが、この本はそのあたりがちと類型的だったかな。
 
とりあえず今一番怖いのはこの暑さだな(泣)。
娘の友達の家はエアコンが壊れたらしい・・・ひいい、考えたくない。

2010年8月24日火曜日

第143回芥川賞・「乙女の密告」赤染晶子について

小説の書き方にはいろいろあって、ストーリー重視か、人物・キャラクター重視か、文体にこだわるか、またはある世界を構築することにこだわるか。いずれにせよ、書きたいことの核からブレることなく、常に必然性を持った手法で読者に伝えていかねばならない。

「乙女の密告」赤染晶子

最初の数行であっというまに「乙女の世界」に引きずり込まれる。「乙女」という言葉じたい、ちょっと気恥ずかしく照れくさい響きがあるのだが、独特のリズムを刻む短めのセンテンスに、案外抵抗なくするりと乗れる。読む人が乙女かどうかは関係なく(笑)その世界に入り浸ることが出来るという、小説ならではの醍醐味を感じさせる。
その世界は特異だが、ストーリーとしては単純でわかりやすい。ただ構造としては幾重にも層があり、思ったより奥行きがある。お菓子の家のように甘く儚い平屋だと思っていたら、実はその後ろにも地下にも部屋がたくさんあったという感じ。
忘れてはいけないと言う教授、忘れることの恐怖にとらえられ、言葉をみつけられない主人公が迷うさま、忘れることを恐れず、むしろ「自分の一番大事な言葉」に出会うまで努力を重ねる麗子様、作家にとっても一番大事な「言葉」の持つ意味が、教授の、麗子様の、主人公の口を借りて語られる。それが、ユダヤ人として生きることを許されず隠れていたアンネの立場に重なる。危うく見つかりそうになったが運良く事無きを得た夜、アンネは「戦争が終わったら、私はオランダ人になる」ことを決意する。それを重大な喪失、とみるか、新たな言葉との出会い、とみるか。私は両方ありだと思ったが、それは私がユダヤ人ではなく日本人であるからかもしれない。
「アンネ・フランク」というあまりにも有名な、悲惨な運命をたどった少女の世界と、架空の「乙女の世界」を並び立てることに違和感がないわけではないが、同じ体験をしたこともない、何を共有すべくもない生活をしている現代の人間が彼女の「言葉」に触れようとするなら、この方法もありだ―――こういう形で語ることの、紛れもない必然性がある、と思った。

さらにこの「乙女の世界」が京都弁てところが重要でもある。ここで京都弁はズルい(笑)。なぜか京都弁は、いちど用いるとそれ以外の方言が考えられないほど、こういう世界にしっくり嵌るのだ。福井弁じゃこうはいかないもんなあ。

2010年8月17日火曜日

残暑お見舞い申し上げます

残暑というより酷暑!

夏休みの宿題処理活動が本格化するまえに記録しておこう、八月に読んだ本。


「オーデュポンの祈り」伊坂幸太郎


伊坂さんの本はこれが初めて。以前、知り合いに、伊坂さんを読むならやっぱりここから、と言われていたことを思い出し手にとった。デビュー作だったのね。中身はひたすら若い! という感じだが、物語の核がしっかりあって、そこに迷いなくまっすぐ向かう力は非凡。自分に足りないものがよくわかる(泣)。やっぱり才能あるんだなあ。他のもまた読んでみよう。


「黒祠の島」小野不由美

設定がかなり複雑なのでそこに振り回された?ような感がある。「極度に閉鎖的な孤島」「いわくつきの旧家」「鬼とよばれる神」「もみ消された殺人」「素性を明かさない、だが優秀な女性の失踪」「神社に吊るされた死体」・・・要素ひとつひとつは魅力的なのだが、ちょい盛り込み過ぎ。途中、会話だけで状況説明が延々と続くところがあって辛かった。
書き下ろしらしいが、枚数が少なすぎたのでは?
内容の濃さからして、やはり「屍鬼」のような大長編で書くべきと思われる。

なーんて書いてはみたが、全部自分にはねかえるようなことばっかり(泣)。
「屍鬼」で確信したが小野さんはきっと少女漫画好き。角川映画全盛期をリアルタイムで体感、横溝正史や森村誠一なんかを読みふけった私としては勝手に仲間だと思っている。そうなんだついついこうやって足し算しちゃうんだ、この世代は。


                「告白」湊かなえ

実家にて、女子中学生二名が絶賛。早読みの長女はもちろんのこと「本読むのっていつもは時間かかるんだけど、これはご飯食べるのもそこそこに一気よみした!」という姪の言葉に、これは読まねばなるまいと手にとった。
娘を喪った女性教師による衝撃の「告白」、関係者の独白がそれに続く。善玉・悪玉という単純なくくりではないし、誰も幸せになれないが、基本的には勧善懲悪。日頃さまざまに割り切れない思いを抱える中学生の溜飲を下げるのにちょうどいいポイントを突いていると思った。
大人として面白かったのはやっぱり先生の独白。表立っては言えない大人の本音みたいなのがちょこちょこ書かれていて、こっそり頷く部分も。小説として素直に面白かった。フィクションならではのこの明快さは確かに映画向きかも。



                「総員玉砕せよ!」水木しげる

徹頭徹尾、いち兵卒としての視点から描かれているこれを、夫はつらくて熟読出来ないという。「仕事として」戦地に行かされ、上司の意思ひとつで生き死にが決まるあたりが、非常に身につまされるらしい。確かに、職業軍人はともかく、徴兵された一般の国民からすれば戦争は「逃れられない厄介な仕事」という意識だったかもしれない。
極端に美化された、また極端に残酷な話などなくても、戦地での日々、人々の振る舞いや出来事を淡々と描くことでそのきつさ、つらさ、悲惨さは十分に伝わる。戦争経験の全くない私たちだからこそ、感じられるのかもしれないが。

余談。「ゲゲゲの女房」が人気だが、あのようなぶっきらぼうかつある意味横暴で頑固な男性、今の若者的にはどうなのだろう。新鮮なのか? 私なんかは父親世代を思い出してかなりツボにハマる。向井さんはイケメンだし(あれ?笑)。

2010年7月28日水曜日

七月に読んだ本 その 二

「1Q84」村上春樹

ご多分にもれずというか、やはりというか、買ってしまった三部作。先日やっと三巻目を読み終えた。
単純に面白かった。とっっくに読み終わっていた中二の娘と、よくもまあこんな話が書けるわねえと感心しつつも「でも中二病っぽい話だよね」と言ったら娘激しく同意しつつ「だけど構成スゲー!めちゃうまい!そこらへんのラノベとはぜんぜん違う!」(←当たり前。ある意味両方に失礼)とほざいた。

というわけで「1Q84」三部作は「中二病の最高峰」と認定。これ以上のこなれた中二病話は誰にも書けまい。……ん? こなれてたら中二病じゃないか。


「女たちのジハード」篠田節子

勧誘が面倒くさいので、うちでは三大新聞を六ヶ月ずつ交替で契約している。争いにもならず、必ず契約が取れる固い客として重宝がられる上に、それぞれの新聞の違いがよくわかってなかなか興味深い。
今は毎日新聞なのだが、日曜版で連載中の「銀婚式」、この作者が篠田さんなのだ。実はそれまで篠田さんの作品はひとつも読んだことがなかった。同じ新聞の土曜日朝刊に連載しているよしもとばななさんとは対照的に、硬質な文章だが、読みだすと止まらない。語り口のテンポに安定感があって、自然に引き込まれていく。

それで今さらながら、タイトルだけは知っていたこの作品を図書館で借りてきたのだった。「銀婚式」と比べると、若く熱い感じがまたいい。年代が自分とかぶっていることもあって、どれもこれもいちいち共感できる。救いようのないバカではないが特別に優秀でもない、どこにでもいる平凡な女たちが、自分の戦いを戦う姿のなんとカッコいいことよ。
一種のお伽話ではあるが、読んで元気が出る。今の若者が読んだらどうなんだろう? こんなことアリエナーイ、と醒めるだろうか。

「銀婚式」の方は、妻に離婚され、長年勤めた会社も潰れ、小さな損保会社で再起をはかる中年男性の話である。現在主人公はかなりひどい目にあっているが、そこは篠田さん、きっとよむ人に元気を与えるような展開に走っていくのだろう。日曜日が待ち遠しい。

2010年7月15日木曜日

龍馬よりステキ女子

「龍馬伝」を観ている。が、最近リアルタイムではなく、ブルーレイ様に録画していただいたものを、誰もいない日中に有難く観させていただいている。ちなみに私は特に福山ファンというわけではない。単に歴史物が好きなんである。

ドラマの出来としては悪くないのかもしれないが、時折むずがゆくて仕方なくなる。
私は坂本龍馬という人を詳しく知っているわけではないし、龍馬について書かれたものをたくさん読んでるわけでもない。だけどやっぱり違う気がするんだよなあ。特に色恋絡みが。
しつこいようだが加尾さんが本当に不自然。かといってヒロスエさんのイメージでもない。強いて言えば、脚本家自身が持つヒロスエという女優のイメージ?

あまりに腑に落ちないのでちとぐぐってみる。

日本歴史 武将・人物伝より

平井加尾

・幼なじみの龍馬より四歳年上。一番下だが一応上士なので、身分も坂本家よりは上。
・和歌も嗜む才色兼備。

土佐藩十五代藩主・山内容堂の妹、友姫が三条家(尊皇攘夷派)に嫁ぐ際、御付役(奥女中)としてともに上洛(このとき21歳)。現地では土佐の貧乏下士や脱藩浪士などを助け、土佐勤王党の関係者を世話したり、兄・収二郎に京の動静を報告したりしていた。土佐に戻ったのは三年後(24歳)。

これによると、
龍馬とは、脱藩するまでは接点があるものの、どちらかというと京という都会でバリバリ働いている加尾を頼りにし、何かと助けてもらおうとしていた感がある。
しかも、千葉道場の娘・さなと比べて「(容姿が)落ちる」なんて失礼なことを乙女姉さん宛の手紙に書いている。

・・・・・

やっぱりドラマのような関係じゃないわいな。

加尾さんは土佐に帰った後、切腹した兄の代わりに平井家の存続をはかり、同じ土佐勤王党だった西山志澄を婿に取る。志澄は戊辰戦争にも土佐藩兵として出兵、会津戦争では戦功をあげる。
そののち二人は西山家に入るが、加尾は自分の娘に平井家を再興させている。
志澄は大隈内閣で警視総監をつとめた。

つまりなんだ、加尾さんは20歳そこそこからセレブな職場でがしがし働き、兄の死という不幸にもめげずエリート&有能な男性をゲット。夫が地道に出世していくところで夫の実家を立て、のちに自分の実家も立て直す。

加尾さんステキすぎる(はぁと)。
マジで龍馬なんかめじゃないじゃないですか。

加尾さん物語を誰か書いてー。てか書こうかな私。

2010年7月6日火曜日

7月に読んだ本

本を買うとき自分はどうするだろう? 買う理由は何? どんな時に買う?


「フリー」クリス・アンダーソン  




たまにはビジネス書の類も読むのであった。といいつつ実はずっと前に買ってて放置していた。面白くなかったわけではなく、もうひとつのコレを先に一気読みしちゃったから(そしてこれも読んだのは6月。タイトルに偽りありだな)。

「電子書籍の衝撃」佐々木俊尚

これ、発売当初はなんと¥150というキャンペーン価格でダウンロード販売していた。たまたま覗いていたブログでそれを知った私、速攻でクリック。自販機でペットボトル一本買うくらいのお手軽さにちょっと感激して、うっかりツイッターまでアカウント作ってしまった(近々ここに掲載します。あんまり呟いてないけど)。今は普通の新書の値段で本屋の店頭に並んでいるので、なんだかすっごい得した気分だ。

・・・と、¥150という対価を払った人間に思わせる、のがウマイところだな。
とにかく出版業界も、いろいろ動きがあるようである。

「フリー」にしろこの「電子書籍の衝撃」にしろ、共通して言っているのは「お客さんが自発的に買う行為をする、またはせざるを得ないようなシステムを作れ」ということ。それって、一般人が個人の力だけでやっていくにはかなり難しいのではないか? 既に売れっ子・有名人になっている人間ならともかく。

なので今このブログを課金する気など毛頭ないが、例えば中編・長編なんかをブログで発表する場合、どういう見せ方がいいのかな? と常々考えている。何かのご縁でここに来ていただいた人たちに、楽しく継続的に読んで貰うためには、どういうツールを使ったらいいかしらん。ある程度オープンで、ある程度閉鎖的な部分もあり、ふらっと来てもよし・入り浸ってもよし、な場を作れるといいのだけど。
いやもちろん、内容が良くなくては元も子もないのだが。

暑くて頭がまとまらない(いつもか)。また何か思いついたら書きます。アンド、ご意見募集。

2010年6月30日水曜日

短編小説:穴が開いた(3)

 さらに、有名な占い師が穴の周辺を強烈なパワースポットだと認定したことで、騒ぎは一層加速した。見物人は増えつづけ「奇跡を呼ぶ」鉄の蓋に触れるために長い行列まで出来るようになった。

 きっかけは些細なことだった。列に割り込んだとか割り込まないとかいう類の理由で、背の低い太った若い女が男に突き飛ばされた。女の大きな尻が柵を破り、ゴムマリのように転がった。大勢が見ている前で、女は隙間からすっぽりと、穴に落ちていった。

 口を開く者は誰もいなかった。全員身じろぎもせずその場に立ち竦んだ。


 やがて一人が言った。笑い声が聞こえたと。するともう一人が、ああ確かに聞こえたと頷いた。さらに一人、なんて幸せ、なんて素敵という声も聞こえたと言い張った。何人かがそれに同意した。彼女は自分から落ちたのだ、それを望んだのだと誰かが叫んだ。おおおおおと地鳴りのような声。ここは強力なパワースポット、あの穴の中には最大最強のパワーが満ちているに違いないと誰かがぶち上げ、そうだそうだと口々に答えた。そんな声は聞こえないと否定する者も、様子を見よう、やめておけと止める者も、もはや誰一人いなかった。

 並んでいたものたちが柵を壊し、我先にと穴になだれ込んでいったのは、女が落ちてからたった数分後のことだった。


*****

 真新しいボルトをひとつひとつ締めていく男の、十字型の痣がついた手を、少年がじっと見つめている。ボルトは錆びたり朽ちたりしない最新式のものだ。以前より一回り大きく丈夫な鋼鉄の蓋は、以前より十倍も多い十倍も丈夫なボルトで留められている。少年が口を開いた。

――――おじさん、いつもこれを全部、一人で締めてるの?


――――そうだよ。

と男は答えた。

――――おじさん、毎日来てるよね。

――――そうだよ。

 男は鼻をすんと鳴らすと、お前もなと呟いた。少年は男のすぐ側にしゃがみこんで言った。

―――――穴に落ちていった人たち、誰も見つからなかったんだよね?

――――そうだよ。誰一人、見つからなかった。

――――まだこの穴の中にいるのかな。

――――わからない。いるのかもしれない、いないのかもしれない……だが、もう何十年も経っているからな。

 風が丈高い草の原を渡ってきた。西に傾いた日が少年の顔を照らした。

――――いつまでこうやって締め続けるの?

――――死ぬまでさ。俺が死んだら……そうだな、息子か娘を代わりに寄越すかな。

――――おじさんち、子どもはいないじゃないか。

 男は答えなかった。少年はしばらく黙ると、思いきったように口を開いた。

――――僕が締めに来ようか? おじさんがもし……締められなくなったら。

 男は少年の顔をちらっと見るとまた視線を下に戻し、言った。

――――そうだな。覚えていたら、の話だが。

――――覚えてるよ。

――――お前くらいの男の子は、一ヶ月、いや一週間もすりゃ、心も体も真新しく入れ替わっちまうもんだ。俺もそうだった。

――――おじさんはそうでも、僕は違うかもしれないじゃないか。

 男は一瞬目を丸くし、やがて声を立てて笑った。それから作業の手を止め、少年の目を覗き込んで真面目な顔で言った。

――――そうだな。俺とお前とは、違う人間だ。お前は忘れないかもしれない。ただ、可愛い娘っ子や、身入りのいい仕事に夢中になって、俺の代わりにボルトを締めることをすっかり忘れちまっても、それは構わない。そんなことは些細なことだ。だが――――

 男は巨大な鋼鉄の蓋をぼんやりと眺めながら、呟くように、だが力を込めて言った。

――――この蓋の下に穴があること、それだけは忘れちゃいけない。忘れたが最後、呑み込まれる、永遠にな。だから、片時も忘れちゃならないんだ。

 少年は眉を寄せ首を傾げると、再びボルトを締め始めた男の手元を見つめて言った。

――――おじさん……おじさんは小さい頃、あの蓋の下を……見たんだよね? お爺ちゃんから聞いた。

――――ふん。爺ちゃんはこうも言ってなかったか? あいつは嘘つきの人殺しだって。俺は穴をただ覗いていただけだ。叱られるのが嫌さに、穴に入っていたと嘘をついた。あんな騒ぎを引き起こすとは思ってもみずにな。

――――それは……おじさんが悪いんじゃないよ。あの人たちは自分から落ちていったんだ。

 男はまた黙った。力を込めてボルトを締めるごとに、十字型の痣が生き物のように伸び縮みする。陽が落ちて、周りは急速に色を失っていく。少年の大きな瞳だけが薄闇に輝いた。

――――それで、その……中には、何があったの? 何が見えた?
 十字の動きが止まった。男は小さくため息をつき、道具を地面に置いて何事か呟いた。少年は、今なんて言ったのと膝でにじり寄った。

――――まったく、皆いつも同じことを聞くな。あの下には……何も無い。ただの穴さ。何一つ見えなかったし、聞こえなかったし、感じられなかった。なぜ穴が開いたのか、なぜふさがらないのかは俺にはわからない。だがこれだけは確かだ。あの中には、何も無い。

 なあんにもな、と肩をすくめ、男は十字のない方の手で道具を仕舞い、荷物を背負って歩き出した。少年はしゃがみこんだまま、夕闇の中徐々にくすんでいく鉄蓋の色を眺めた。やがて遠ざかっていく男の後ろ姿が見えなくなると、少年は身震いをして立ち上がり、帰るべき我が家に向かって全速力で駆けていった。

<了>


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2010年6月29日火曜日

短編小説:穴が開いた(2)

 
 日々の暮らしの中で、穴の存在は徐々に忘れ去られていった。蓋にタイヤが乗り上げる度響くごおぉんという不気味な音にも皆慣れて、いちいち怖がらなくなった。

 月日は流れ、小さな村は隣の大きな町と合併することになった。広く便利な道路が沢山作られ、車や人の往来は格段に増えた。かつて町に向かう最短ルートであった鉄蓋付きの道は、歩く人もほとんどいなくなった。蓋の周りには丈高い草が生え放題、整備を施されなくなった路面はデコボコに波打った。

 ある日小さな男の子が行方不明になった。右手の甲に、生まれつき大きな十字型の痣がある子だった。近所中くまなく探したが見つからない。男の子の祖母によると、前の日に散歩に出かけた折、あの鉄蓋の下にある穴の話をしたという。男の子は大変興味を持ったようで、帰ってからも何度も同じ話をせがんだ。男の子の父親と母親は件の道路に走った。男の子の姿はない。草を掻き分け、蓋の近くに寄ると、ボルトが錆びて外れている。蓋はごくわずかだが、開いていた。新月の翌々日の月のように。ちょうど子どもの体の幅くらいだ、と父親が思うのと同時に母親が切り裂くような悲鳴を上げた。見ると草むらに男の子の履いていた靴が片方だけ落ちていた。

 町は大騒ぎになった。警察や消防の車が寂れた道路に殺到した。厚い鉄の蓋は重くて容易に動かせない。誰がどうやって開けたのか、いくら錆びてもボルトがあんなふうに外れることはあり得ない、特殊な道具なしでは絶対に不可能だ、と鍛冶屋を廃業し隠居した老人が震えながら呟いた。

 数時間かけて、やっと大人が二、三人ほど入れる隙間を開けた。だが誰も中に入ろうとしない。かつての村長も、蓋の上を悠々と通ってみせた大工も、とうにこの世を去っていた。母親は髪を振り乱し男どもを押しのけ、半狂乱になりながら自分の体に太縄を結びつけ、さあ下ろせと叫んだ。止める夫の手を振り切った彼女の足が穴の縁にかかったその時、おーいと声がした。薄暮の中、男の子が走ってくる。その手には大きな十字型の痣があった。再会した三人は大きな声でわんわんと泣き出した。周囲から安堵と感動の拍手が沸いた。

 皆が安心して解散しかけたとき、祖母が男の子の両手を握り静かに、何処へ行っていたのかと聞いた。男の子は俯き、もじもじしながら、穴の中だとこたえた。一度穴に落ちたのだが、気がつくと原っぱの真ん中にいた、母親らしき声がしたので近づいてきたのだという。

 その話は一夜にして国中に広まった。穴と蓋との隙間は奇跡の証拠として閉じられずそのままにされた。人々は寂れた道路に続々と集い、危険を避けるため周りに張り巡らされた柵は、願い事を書いた紙や板で埋まった。地元では、この騒ぎを苦々しく思う者も少なくなかったが、余所者の落としていく金が馬鹿にならないのも事実で、表立って文句を言うことはなかった。
(3)に続く

2010年6月28日月曜日

短編小説:穴が開いた(1)

 ある朝、道に穴が開いた。

 偶然通りかかった鍛冶屋が慌てて急ブレーキをかけると、車の右半分は何もない空間を2秒ほど走り、穴の縁にぶつかって止まった。外れかけたバンパーが引っかかったおかげでかろうじて落ちずに済んだ車はぎいぎいと不吉な音を立てて揺れた。鍛冶屋の親父は命からがら車から逃げ出し、駆けつけた村長になんとかしてくれ、商売道具がなくなったら得意先に切られちまうと泣きついた。牽引車が彼の車を助け上げる間に、村じゅうの人間が穴の周りに集まった。

 穴は、集まった村人全員がすっぽり入ってしまうほど大きかった。中は真っ暗で何も見えない。興味津々で覗き込む子どもをしっかり抱え、母親たちは身震いをした。バンパーを針金でぐるぐる巻きにしてその場を去ろうとする鍛冶屋を皆が引き止め質問責めにした。が、いつもとかわりなかった、何の前触れもなかった、いきなり真っ黒な穴がそこに出現したのだと繰り返すばかりだった。男たちは首を傾げながら丹念に周囲を見てまわったが、誰にも穴の開いた原因はわからなかった。

 村で一番新しく、幅の広いこの道路をつくったのは、隣町の土建屋だった。欠陥工事ではないかと詰め寄られた村長は首を横に振った。自分は工事を、計画段階から開通するまでの数年間、漏らさずチェックした。こんな大きな、深い穴を道路の下に掘られていたら気づかないはずはない。あり得ない、村長は断言した。

 誰かが、穴から水の音が聞こえると言い出したので、全員が黙って耳を傾けた。本当だ、微かだがそれらしき音が確かに聞こえるという者、いや全然聞こえないという者、村外れにある川の流れの音と混同しているかもしれないという者もいて、結論は出なかった。

 誰かが、穴から風が吹いてきたと言い出した。皆穴に手をかざした。本当だ風が吹いている、と確信を持って言う者と、いや全然吹いていないと否定する者とで論争になり、どちらも譲らなかったのでつかみ合いの喧嘩になった。仲裁に入った村で唯一人の教師は、穴からの風かどうか、今の時点ではしかと判断は出来かねる、様子を見ようと言って議論の熱を冷ました。

 ともあれ、道路の幅一杯に開いた穴をこのままにしておくわけにはいかない。その日のうちに、荷台一杯に土砂を山積みにした土建屋のトラックが三台やってきて、一斉に土砂を投げ込み始めた。だが一向に穴はふさがらない。五十往復を数えたところで、作業人が音を上げ、村人が代わった。百を超えたところで村長も諦めた。

 穴には、蓋がかぶせられた。鍛冶屋が二週間他の仕事を断って作った鉄製の巨大な蓋だった。全部のボルトを締め終わったあと、誰が最初にその上を通ってみるかで揉めたが、独り者の年老いた大工が名乗りを上げた。牛と羊を一頭ずつ荷台に載せたオンボロのライトバンが、悠々と蓋の上を通り抜けた際には、一斉に拍手喝采が上がった。

 それ以来しばらくは、寄ると触ると村人の間で話題になったが、ボルトが道の脇で伸びる草の葉に隠れた頃には、次の収穫の話に取ってかわられた。
2に続く

2010年6月14日月曜日

昨日に引き続き

私はこれではやぶさを知りました。超名作動画。
やはりというか何と言うか完結編ができてた。うP主、仕事早っ。
まだの方は是非ぜひご覧あれ。目から汁噴出注意。


はやぶさ最後の画像。燃えながら撮ったらしい。下方の、切れている部分は・・・(;Д;)

それにしても、どこも実況中継しなかった日本のテレビ局。朝のワイドショーでも説明中に、イトカワとはやぶさを取り違えてたりするし。本気で知らなかったのだとしたら、終わってる。
日食のときはしつこい位にやってたのに。
子ども手当なんかよりずっと、日本の子どもたちに元気と希望を与えるのに。

まあ、変な芸能人やアナウンサーが変なリアクションしてブチ壊しにされるよりは良かったかもしれない。いろいろとテレビは終わってる。

ネットから拾ってきた、英国BBCの報道済みコメント(赤字はおさ子)

★日本は世界一の探査技術を手に入れた
★今回のミッション成功は歴史に残る偉業 人類の進歩に新たな一歩
★アポロの月着陸以来の快挙
★日本の今後のミッションに世界中が関心を寄せている
★この快挙に本当におめでとう♪と言いたい
仮にサンプルがなかったとしても、偉大な功績であることに変わりはない

日本のワイドショー系では、「カプセルに砂が入っていれば成功」というのをやけに
強調しているが、騙されてはいけない。入っていようがいまいが、偉大な功績なのである。
何より数々のトラブルに見舞われても諦めず仕事をやり遂げたスタッフの心意気が
素晴らしいし、日本人として誇らしい。
はやぶさは八百万の神のひとりになった、というコメントも見た。だったらいいなあ。

         ,,     
         ゚

         ,,,
         ロ"  < オーイ

         / /
       ロ□ロ     < はやぶさだよー


    _ _,_     _
  ∠/ ヽ  ノ   .∠/
 ∠∠=・∀・=∠/    < 7年ぶり!ただいまー!
∠/     ̄¶' ̄ ∠/


  ;;;;/  /;;;;     .∠;;;;;;;; ボワッ
  ∠∠=・∀・=∠/     <帰ってこられ
((;;;))」   ̄;;;;;  (((:::::::::)) ボワッ


 _;;;;    ;;;;       ;;;;;;;;
 ;;;;;;;,,,,,,,,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;,,,,,,,,,,,,,,,,,,;;;;;;;;;; < た・・よ・・・
 ;;;;;;;;    ;;;;;;     ;;;;;;;;



      //
   ;;;;;;,,,,,;;;;;;;

      /
     ;;;;

2010年6月13日日曜日

おかえりそしてさよなら

はやぶさタンが帰ってくる。

はやぶさとはJAXA(宇宙科学研究所)が打ち上げた工学実験探査機。
惑星イトカワに向けて旅立ち、現地でサンプル採取、地球に戻ってくる。
ふーんただそれだけ?てそれはそれは大したことなのである。詳しくはこちらを。

はやぶさ、地球へ!~帰還カウントダウン~
はやぶさまとめウィキ

AAまで出来とる。

田-(^^)-田 <タタイマ


か、かわええ。
 
ツイッターまであります。さあ皆、南の空に祈るのだ。
http://twitter.com/Hayabusa_JAXA/status/16056123795
 
はやぶさカプセルの帰還ライブ中継
 
今夜はワールドカップは置いといて、空を見上げましょう。
ちなみにはやぶさに使われているイオンエンジン、NECが開発・販売に向けて頑張っているようです。
今年8/31までにJAXAに十分な予算がつけば「はやぶさ2」の実現も!
・・・・・・
はやぶさ2・・・

子ども手当なんていらんから、消費税上げてもいいから、こっちにお金回せ!

2010年6月11日金曜日

6月に読んだ本


なんだか知らないが忙しい。運動会が終わったらすこしはマシになるかと思ったがとんでもなかった。
ずうううっと前に買った此の本、多忙の折行方不明になり数日前に発見。友人とのランチに出かける電車の中でやっと読破した。あれ?ホントに忙しいのか私。

「日本辺境論」内田樹

ウチダさんの本はいつも「おお!そうなのか」と一気に腑に落ちることを拒む。文章は簡潔にして平易、わかりやすいのだが、難しいのだ。わかったような気になる瞬間は常時あるのに、ん?ほんとにわかってる?つもり、だけじゃないの?と不安になる。つまり、ちっともすっきりしないのだ。どうやっても読めない時がある。読んでも言葉が頭に入らない、ダダ漏れになる感じ。今回読めたということは調子のいい証拠だ。うん。

今回琴線に触れたのは、「真名」と「仮名」とに分かれている日本語の特性が、外から来る知識や技術の翻訳を容易にしている、ということ。日本独自のものである「仮名」が仮であり外から来た漢語が「真名」。自分たちで作ったものを「仮」といってしまうあたり、なるほど非常に日本的だ。
未知のものは「真名」で受け取り、翻訳するために必要な「ぶっちゃけどういう意味なの?」と突っ込む役割は「仮名」に負わす。このハイブリッドな構成のおかげで、日本には文字を読めない障害というのは非常にすくないらしい。あっても、漢字かひらがなのどちらかだけ読めない、というパターン。つまり脳の使用範囲がほかの言語使用者とは違うのね。すごいぞ、日本語。

あ、でもだから英会話がなかなか習得出来ないのだな。しゅん。

とにかくウチダさんの本は、ある程度時間が経ってから読み返すとまた違った理解が出来る、何度でも楽しめる本なのである。といいつつ、うっすい本一冊がなかなか読めない今日この頃なのだった。ふう。更新がんばります、なるべく。