8月に読んだ本
「モルフェウスの領域」の続編。コールドスリープから目覚めたアツシの青春ストーリー、といった趣だが、ちゃんと前作を踏まえた謎解きも盛り込んでいる。懐かしい顔がちらほらと、だが意外に重要な役割を以て登場したりして、ファンとしてはなかなか楽しめた。ただ、架空の話とはいえコールドスリープそのものや、目覚めの問題に関して、医学的にもう少し突っ込んでほしかった気もする。それは次回以降ってことなのかしら。涼子さんとの色々もまだありそうだし、ていうかそこが一番読みたいところ。
新作ではなく、1994年10月発売の「東京下町殺人暮色」のタイトル・表紙を変えたもの。新作と紛らわしい、と批判している人も多いが、中身はさすが宮部さんという出来だし、まあ別にいいんじゃないだろうか。ただ、どうせタイトル変えるならもうちょっとひねりがほしかったかな。宮部さんだから買ったけど、このタイトルから中身の凄さは想像できない。
携帯電話もメールもラインも、中学生の世界になかった時代の話。どっちがよりマシか? と思いながら読んでいたが、道具が何であれ、ろくでもないことを考えたりやったりする人間は残念ながら今も昔も存在する。ラストシーン、止めなくていい!そのままやっておしまい!と思ったのは私だけではない・・・はず。
年齢を重ねるとともに、円熟味が増したキング。遊園地、絵本や恐怖小説、犬、子供、超能力、海辺の家、不治の病、舞い上がる凧、嵐。ベタでカオスな世界に、ミステリーの味付けをし、ひとりのアメリカ人青年の青春物語として昇華させた。これほどてんこ盛りで密度の濃い世界に、違和感なく入りこみ、やすやすと車に乗せられてしまうのは定番のお約束だがやはり凄い。ストーリーとして新味があるというわけではないが、よく練られ整理されていると感じた。なにより、今まで読んだキング作品のすべてが、この中編にみっちりと詰め込まれていて、ファンとしては読んでいて心地よいし楽しい。
次の作品では、そこから抜け出した別のなにかを見せてくれるのではないかと期待大。
コメント
コメントを投稿