2016年9月27日火曜日

九月に読んだ本

烏に単は似合わない」
「烏は主を選ばない」
「黄金の烏」
阿部智里

本はネットで便利に買える昨今だが、本屋に行くのもやめられない。新しい紙と印刷の匂いと、平積みになった本の表紙を見て回るのはいくつになってもワクワクする。それぞれに人の目を引くよう工夫をこらし、我こそはと主張する本ばかりの中で、何故か妙に目につく本というのがたまにある。一度きりではない。何となく気になる、くらいの本ならたくさんあるが、二度三度と同じ作者の本が自然に目に入ってくるようであれば、それは自分にとって間違いなく外れなしの本である。
と、いう法則が今回発動。なんと中学生の子供が借りてきた。ああっと思わず声が出てしまった。親子の絆ってすごいもんだ(笑)単に好みが似通ってるのかもしれんけど。
 
いわゆる異世界ものだが、非常にきっちりと構築されていて、すっと入り込むことができる。魔法や術などに頼らない・全体的に人生ハードモードなところは、十二国記を思わせるが、特に一作目(デビュー作・松本清張賞)は平安時代の宮中の、女御たちの寵争いをモチーフにしていて、源氏物語好きの私としてはかなりツボ。女子のいやったらしいじわじわしたイビリの描写もさることながら、何気ないエピソードを装って伏線をはりまくり、最後にぜんぶつながってどんでん返し、という技にはしびれた。こういうの好き。どんどんやってください。文庫にもなってるようなんで、買います。はい。
ただどちらかというとこの作者、男子の方が得意?な気がする。男性キャラは子供からおじさんに至るまで、悪役だろうが良い人だろうが魅力的なのに対し、若宮の奥様はもうひとつ…個人的には薄さん好きなんだが、せっかく最強の二人をペアにしたんだからもっと活躍させてほしいなあ。

2016年9月13日火曜日

九月に観た映画 3

「残穢(ざんえ)」中村義洋 2015
「鬼談百景」2015
 
子供が生まれてある程度大きくなるまで、何が怖いって子供といることが怖かった。圧倒的に弱い生き物と常に密着せざるを得ない状態というのは、つまり一人でいる時よりも数段「弱くなる」ということだ。これがなかなか精神的にキツイ。母は強くなる、というが、それは母の愛とか感情的な色々以前に、この最弱の組み合わせをレベルアップするには大人である母の方が強くなるしか方法がないからだ。母性本能ってつまりそういうことなんだろうと思う。
こういった焦燥感というか、恐怖感を子供の人数分味わった今では、お化けや幽霊はまったく怖くなくなった。そういう話を聞いてもその時うわあと思うだけで、夜怖くてトイレに行けないとか眠れないとかいうことは一切ない。それはそれでちょっとつまらないことではある。
とはいえ今でも怖い話は好きでよく読む。映画は久しぶりだったのだが、二作とも楽しめたことは楽しめた。特に「残穢」は相当トーンを抑え気味に始まって、じわじわと「繋がっていく」感じが中々にぞくぞくできてよかった。が、ラストが…うーん…正体がよくわからないから怖いのに、実体になっちゃったら単なるびっくり箱ですがな。小説と同じにするのは映像的に難しかったのかもしれないが、そこは何とか、もうひと工夫欲しかった。「鬼談」の方も、演出がちょっと派手すぎ。もう少しあの「そこはかとない怖さ」を表現してほしかった。
二作とも丁寧な造りで、竹内結子さんの語りが秀逸だっただけに惜しい。ただ、私以外の人が観れば怖いのかもしれん。基準がもうわからなくなってしまった。
 
「オデッセイ」リドリー・スコット 2016
 
怖いといえば、状況的にはよほどこっちのほうが怖い。火星探索に来ていた宇宙飛行士たち。嵐に見舞われ、ひとりが飛ばされて行方不明、生存絶望として船は出てしまう。一人残された男がいかにして救援が来るまでの日々を生き延びるか、という話。
そもそも宇宙飛行士じたい、生半可な人が就く職業ではない。頭脳明晰・優秀なのはもちろん、鋼の体力とメンタルも要求される(と、「宇宙兄弟」で読んだ)。絶望的な状況下でも、取り乱すことなく冷静に問題点を分析し、ひとつひとつ解決していくという、まさにサバイバル能力の超絶高い主人公であるからこそ成り立ったドラマだ。やっぱり色々知っていて、色々できることが多いほうが、生き延びる確率は上がるんだなーと実感する。
彼の帰還のために、国籍や人種の違いを超えてたくさんの人々が働き、祈る。きれいごとといえばそうかもしれないが、単なる根性とか精神論ではなく、優秀な頭脳と高い能力によって物事が動くさまは見ていて気持ちがいい。
この超絶エリートたちそれぞれの結構なオタクエピソード(でも重要事項)も面白かった。小説のほうも読んでみたい。

2016年9月12日月曜日

九月に観た映画 2

「シン・ゴジラ」MX4D
 
まーた観てしまった。シンゴジラの面白さについては、山ほどレビューがあるのでもういいかと思う。なので初体験の「MX4D」について書いとく。
屋上にゴジラがいる「新宿TOHOシネマズ」のMX4Dシアターは二日前から予約可能になるのだが、その日の午前中みるみる埋まっていって慌てた。もともと座席数が少ないのに加えレディースデーであったことも大きいのだろうが、シンゴジラ人気はまだまだ高いと実感。新宿という場所も考えると、早めに予約しとくのが吉かと思う。
シアターはややこじんまりしているが、座席は結構広めでふかふかしてて座り心地は良い。手荷物は膝の上、傘は入口で預けられる。蓋つき飲み物の置き場もあるし、ポップコーンもビニール袋をもらえるので、こぼれる心配は少ない。
予告編からすでに椅子からポコポコ突き上げが。でもびっくりするほどではない。ミスト状に吹きかけられる水は、顔が結構濡れることは濡れるが、むせるほど大量ではない。ただ、メガネの人はちと面倒かも。レビューには、気が散って本編に集中できないので最初は普通のシアターがおススメ、という意見もあったが、個人的にはそこまで邪魔になる感じはしなかった。映像のインパクトに比べるとちょっと物足りない?くらい。一緒に行った友達が「お化け屋敷みたい」と評していたが言いえて妙。
MX4Dについて結論的には、何人かで連れ立って行く&レディースデーなどの割引日なら、選択肢の一つとしてはアリかと思う。早めの予約必須。映画館的には、料金がそこそこするので、いっそ完全にイベント用としてほかの企画(声出しとか)との合わせ技がいいんじゃないだろうか。

そしてこれ観終わってから、野村萬斎さんてドコに出てた?!という話になり、友人が調べたらまさかの
ゴジラ!!!
といっても中に入ってるわけではなく、萬斎さんの動きをトレースしてるらしい。ああもうまた観たくなってきたじゃまいか。


「モスラ対ゴジラ」1964年

というわけで借りてきた。
小さい頃に何回も何回も!観たこの映画。当時見飛ばしていたであろう場面が、今となればけっこう見ごたえがあって楽しい。台風により不時着した巨大卵、それに群がる新聞記者・金儲けを狙う商売人たち。これだけ大人が話してるだけの場面が多いのに、当時の小学生が皆黙って観てたというのはすごいことだ。子供って実はいろいろ理解できる頭があるんじゃないか? でも、まったくこの辺の会話は覚えてないけど!

放射能という言葉の多用はいかにもという感じだが、ゴジラの登場の仕方が中々にショッキングでカッコいい。これ中に人が入ってたんだよねえ。動き方がヨタヨタしてるし段差で転びそうになるし鉄塔にしっぽひっかけてよろめくし、三歳児か(笑)建物の壊し方も何だか子供が駄々こねてるみたいだ。そして避難民の一部が着物姿で、学生が学ラン姿ってのがまた時代。
モスラの生息する南の島や島民は今見るとちょっと笑ってしまうけど、その風景や服装、動き方やなんかも実に丁寧に作りこんであるのがよくわかる。新聞社の他にも警察消防自衛隊、危機に対して大人が真剣に働く姿を、当時の子供たちはこれで疑似体験してたんだなあと思うと感慨深い。戦車とか戦闘機とかヘリとか、まあプラモデルだったりするんだろうけどそれがまた相当クオリティ高い。
そして幼虫モスラの双子が愛らしすぎる!武器弾薬にびくともしなかったゴジラが、幼虫モスラのきわめて有機的な戦い方にあっさり負けるあたり象徴的だが、カワイイから許す。それに島への帰り方、てっきり孵化して飛んでいくのかと思ったらまさかの遠泳。そうだこの場面記憶にあるわ…二体並んでざっぷんざっぷん…可愛い。たまらん。